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マンション受水槽で“泳ぐ”男の動画拡散、男や撮影者はどんな罪に問われうる?

マンションの受水槽の中で泳ぐ男の姿を撮影した動画が拡散し、物議を醸しています。どのような罪に問われうるのでしょうか。

受水槽の中で泳ぐ行為、どんな罪に問われる?(写真はイメージ)
受水槽の中で泳ぐ行為、どんな罪に問われる?(写真はイメージ)

 マンションの受水槽の中で泳ぐ男の姿を撮影した動画がSNSで拡散し、物議を醸しています。受水槽は福岡県内にあるマンションのものと見られ、飲料水用のようです。SNSで拡散された動画には、上半身裸になってピースサインをする姿も見られます。この行為はどのような罪に問われうるのでしょうか。グラディアトル法律事務所の北川雄士弁護士に聞きました。

浄水汚染罪や住居侵入罪などの可能性

Q.この行為は、どのような罪に問われうるのでしょうか。

北川さん「まず、浄水汚染罪(刑法142条、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金)に当たると考えられます。これは『人の飲料に供する浄水を汚染し、よって使用することができないようにした者』を処罰するもので、心理的に飲むことができないようにした場合も成立します。本件では、一般に人が泳いだ後の受水槽の水を飲むことは心理的に無理であるといえるので、成立すると考えられます。

次に、刑法130条の住居侵入罪や邸宅侵入罪に当たると考えられます。これは『正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅…に侵入』した者を処罰するものですが、本件では、受水槽で泳ぐという目的でマンションに立ち入っていたことが『正当な理由のない立ち入りだった』として、成立する可能性があります。

さらに、今回の動画投稿によって、マンションの管理人らに動画への対処を強いたことから、管理人らの業務を妨害したとして威力業務妨害罪(刑法234条)に当たる可能性もあります。加えて今後、受水槽を使えない状態にした場合は器物損壊罪(刑法261条)に該当する可能性もあります」

Q.動画を撮影した人物は、どのような罪に問われるのでしょうか。

北川さん「結論からいうと、次に示す通り、撮影者が本件の実行にどのように関わっていたかによって罪の問われ方が異なります。

受水槽内で泳いでいた男性と『共同して犯罪を実行した』と認められれば、共同正犯(刑法60条)として罪に問われます。撮影者が泳いでいた男性をそそのかしていた場合、教唆犯(刑法61条1項)として罪に問われます。撮影者が泳いでいた男性の行為をほう助、つまり手助けしたにとどまる場合は、ほう助犯(刑法62条1項)として罪に問われ、法定刑が軽減されます(刑法63条)」

Q.マンション所有者や居住者、管理人は、民事上の賠償請求をできるのでしょうか。

北川さん「マンション所有者や管理人としては、例えば、受水槽の消毒や交換などの対応をせざるを得なかった費用など、本件の対処のためにかかった費用を損害として請求することが考えられます。

居住者については、実際に健康被害が発生した場合の治療費や慰謝料のほか、受水槽の交換などに際して、水が使えなくなることに備えて出さざるを得なかった費用などがあれば、理論上は損害賠償を請求し得ます。ただし、健康被害の原因が受水槽で男性が泳いだことであると立証せねばならないなどの理由で、実際には、まとまった金額を請求することは難しいと思われます」

(オトナンサー編集部)

北川雄士(きたがわ・ゆうじ)

弁護士

弁護士法人グラディアトル法律事務所所属。京都大学法学部卒業後、神戸大学法科大学院修了。「労働問題」「男女トラブル」「脅迫・恐喝被害」「ネットトラブル」などを得意分野として扱う。ライトノベル作家「U字」としての一面もあり、「剣と弓とちょこっと魔法の転生戦記1~凡人貴族、成り上がりへの道~」(MFブックス)で作家デビュー。その後も「剣と弓とちょこっと魔法の転生戦記」シリーズとして続刊を刊行中。

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