子どもが褒められたとき、親が「謙遜」することは是か非か 子育ての専門家が解説
わが子を褒められた時、つい謙遜してしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、何気ない言葉が、子どもの心に影響することもあるようです。
「とてもいいお子さんですね」。育児中の親にとって、わが子を褒められるのはうれしいものです。そんな時、「いえいえ、そんなことないですよ」と、つい謙遜してしまう人も多いのではないでしょうか。大人同士で何気なく交わしている「謙遜」のコミュニケーションですが、実は思わぬうちに子どもを傷つけていることがあるようです。
親の「へりくだり」が子どもに与える影響とは、どのようなものでしょうか。20年間にわたって学習塾を経営し、著書に「1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ」(日本実業出版社)などがある、子育て本著者・講演家の立石美津子さんが解説します。
謙遜の美徳は子どもに悪影響も
日本には、相手への敬意を示すために自分を低く見せる「謙遜の美徳」の文化があります。例えば、手土産を渡す時、相手を思って選んだよい品物であっても「つまらないものですが…」「あなたのような方のお口に合いますでしょうか」などへりくだった言い方をすることがあります。このような表現は、相手を高め、人間関係を円滑にするためのコミュニケーションであるともいえます。
こうした謙遜は、日本では「美徳」とされています。しかし、このような言葉を使い過ぎると、褒めてくれた相手に対して良くない印象を与えかねません。特に子どもを褒めてもらった場合には、大人同士のコミュニケーションと同じような「へりくだり」をすべきではないと考えます。子どもに悪影響を及ぼす恐れがあるためです。
私が幼児教室で授業をしていた時、子どもを迎えに来た保護者に「○○ちゃんは最近、机の上の整頓ができるようになりましたね」と褒めたことがあります。すると、その親は、子どもの目の前で「いえいえ、そんなことありません。家では散らかし放題なんですよ」と答えました。
また、別の保護者には「○○君はいつもお友達に優しくできる、とても良い子ですね」と褒めたところ、保護者からは「いえいえ。家では自己中心で、弟に意地悪ばかりするんですよ」という返答が。中には「外面がいいだけなんですよ!」と言う保護者もいました。どれだけ褒めても、子どもの目の前で“全力で”否定する親は一定数存在するのです。
そんな保護者たちを見て、私は「せっかく褒めているのに、そんな言い方をしなくても…」「私は正直にそう思って褒めたのに…」と思っていました。このような大人の会話を聞いている子どもの悲しそうな表情が気になったからです。
親にとって、自分の子どもは誰よりもかわいい存在です。本心では「自分の子どもは本当にどうしようもない」などとは思っていません。しかし、「親バカだと思われたくない」「うぬぼれていて厚かましい親だと思われたらどうしよう」といった気持ちが、「謙遜の美徳」を表面化させ、おのずと言動や態度に表れてしまうのです。
一方、外国のママたちは、わが子を褒められた時、「うれしいです。ありがとうございます」「私もうちの子はとてもいい子だと思います」と返答します。わが子に対する褒め言葉を受け入れ、自らも自信を持ってわが子を認める。このような振る舞いは日本とは明らかに異なります。
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