SNSでよく聞く“鋼メンタル”、どんな人が該当? 特徴&注意点をカウンセリングのプロが解説
精神力が強い人は、SNS上で“鋼メンタル”と呼ばれることがありますが、どのような人が該当するのでしょうか。専門家に聞きました。

精神力が強い人は、SNS上で“鋼メンタル”と呼ばれることがあります。ただ、一般的な人と具体的に何が違うのか、イメージしにくい部分があります。どのような人が、鋼メンタルに該当するのでしょうか。カウンセリング事業などを手掛ける、コレット(広島市西区)の代表、田中よしこさんに聞きました。
気持ちの切り替えが早い
Q.そもそも、精神力が強い人は、一般的な人と何が違うのでしょうか。
田中さん「精神力が強い人と一般的な人とを比べた場合、“物事の捉え方”が違うと言えます。例えば、トラブルが起こった時に普通の人は『ツイてない』『面倒くさい』と感じてしまい、できることなら関わりたくないと捉えて対処しがちです。
一方、精神力が強い人は、思考と感情を常に目標や目的に向かって進めます。そのため、『自分だったらどう乗り切るか』『何から取り掛かるのか』『トラブルもチャンス!』など、『自分はできる』を前提とした考え方で1つずつ最適な行動を選択できるのです。いつも思考がすっきりしていて、行動的だという共通点があります。
目的がはっきりしていると、『人は人、自分は自分』といった形で、いい意味で線引きが自然にできるため、周囲の人の意見や反応に一喜一憂するということはありません。だからこそ、気持ちに余裕があり、他人への配慮などもでき、プラスの循環を自分で生み出すことが可能です」
Q.精神力が強い人は、SNS上で“鋼メンタル”などと呼ばれることがありますが、実際に鋼のような強靱(きょうじん)な精神力を持つ人は本当に存在するのでしょうか。
田中さん「鋼メンタルは文字通り、精神力が強く、プレッシャーに負けずに前に進むメンタルの強さを持っている人を指す言葉ですが、そういった人は、もちろんたくさんいらっしゃいます。表面上はポジティブな人やただのワガママな人とは違います。先述の『精神力が強い人と一般的な人の違い』と重なる部分もありますが、鋼メンタルの人の主な特徴は、以下の通りです」
・気持ちの切り替えが早い
・人や物事に柔軟に対応できる
・自分の意見を持っている
・健康に気を使っている
つまり、自分にとって大切なものがはっきりしていてやりたいことがあり、目標や目的に向かって楽しみながら過ごしている人たちです。
ただ、意外にも本人は「自分は鋼メンタルだ」と自覚をしていないケースが多いです。本人にとっては当たり前の状態なので、何かあっても淡々と前に進みながら行動を重ねているのですが、周囲の人からすると、その様子が、ダメージを受けておらず、プレッシャーに負けずに前に進んでいるように見えてしまうのです。
Q.では、実際に鋼のような精神力を持つ人がいる場合、そういった人でもうつ病などになる可能性はあるのでしょうか。
田中さん「たとえ鋼のような精神力を持っている人でも、『絶対にうつにならない』とは言い切れません。私たちには感情がありますから、環境や周囲の人の状態に左右されることもあります。例えば、近しい人の病気や、思いがけない災害などは誰にでも起こってしまうことなので、感情の反応がある限り、ダメージがゼロというわけにはいきません。
うつは、ストレスで気持ちが限界を迎えた時に出る症状で、『無理をしている』というサインでもあります。鋼メンタルの人は、その精神力ゆえに頑張り過ぎたり、無意識のうちに自分にプレッシャーをかけていることに気付きにくかったりします。そのため、限界を超えるとうつになる危険性は十分あります」
Q.一般的な人よりも精神力が強いとされる人がメンタルを壊した場合、どのようなリスクが想定されるのでしょうか。
田中さん「個々のケースによるため一概には言えませんが、自分の弱さを認められない場合は、立ち直るまでに時間がかかる可能性があります。
また、鋼メンタルを維持しながら、仕事などで日常的に成果を出してきた人だからこそ、高い目標をクリアしてきた自分と同じ状態で頑張れない自分や、今までのように力を発揮できない自分に落ち込み、過去の自分と比べながら現状を受け入れられずに改善ができないという負のループにはまる可能性があります」
Q.将来的にうつ病になる危険性を知るには、日常生活でどういったことに注目したらよいのでしょうか。チェックポイントについて、教えてください。
田中さん「近い将来にうつ病になる危険性については、ライフスタイルと体調の両面からチェックできます。主なチェックポイントは、以下の通りです」
■ライフスタイル
・仕事が忙しく、思うように休みが取れていない
・睡眠時間が5時間以下の状態が3カ月以上続いている
■体調面
・頭がすっきりしない
・朝起きるのが嫌だ
こうしたサインが出ていたら、気持ちよく過ごすためにどこから改善できるのかを丁寧に分析すると、メンタルの維持に役立ちます。
(オトナンサー編集部)
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