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イクメンほど要注意! 発症リスクは10人に1人、パパの「産後うつ」の原因・症状・予防法

女性特有の病気と思われがちな「産後うつ」。しかし実際には、父親になったばかりの男性の約10人に1人が、うつ病を発症するリスクがあることが分かっています。「パパの産後うつ」の原因と症状、予防法について、医師に聞きました。

パパの産後うつ、原因や対処法は?
パパの産後うつ、原因や対処法は?

 何となくイライラしたり、訳もなく涙が出たり……。「マタニティーブルー」という言葉に象徴されるように、産前産後に心身のバランスを崩すのは、実際に妊娠・出産する女性というイメージがあります。しかし、父親になる男性も、子どもが産まれたことによるプレッシャーや不安感、ストレスにさいなまれるなど精神的に追い込まれ、さまざまな症状を発症するケースがあるようです。

 2015年に兵庫医療大学の西村明子教授らが行った調査によると、産後4カ月の807人の父親のうち、13.6%にうつ病のリスクがあることが分かりました。イクメンブームの昨今、こうした「パパの産後うつ」は増加傾向にあるといい、SNS上などでは「うちの夫これだったかも」「母親のイライラが父親に伝染するのもわかる」「ママの産後うつとどう違うの」など、さまざまな声が寄せられています。

 父親になったばかりの男性を襲う“パパの産後うつ”とはどのようなものでしょうか。オトナンサー編集部では、医師の尾西芳子さんに聞きました。

父親としてのプレッシャーや環境の変化が要因

Q.男性の産後うつとはどのような症状でしょうか。

尾西さん「最もよく見られるのは、うまくいかないと自分を責めてしまう自責感です。産後1カ月が発症しやすい時期で、父親としてのプレッシャーや、パートナーであるママの出産という環境の変化により、我が子との離脱感や『父親としての役目を果たせていないのではないか』という気持ちにさいなまれ、子どもとのコミュニケーションが上手に取れなくなるケースがあります。また、精神的に不安定な状態になることにより、子どもをつねったり、たたいたりするなど、虐待とも取られかねない行為に及ぶ危険性も高くなります」

Q.男性が産後うつを引き起こす原因は何でしょうか。

尾西さん「パパの産後うつは、優しくてまじめないわゆる『イクメン』男性に多い傾向があります。子どもが産まれたことによる環境の変化で、心身のバランスを崩してしまうケースが多いです。主な原因は次の通りです」

【育児と仕事の両立に対する不安】

 ママのサポートで家事・育児の時間が増えると、睡眠時間が減少して仕事への集中力が低下します。男性の育児参加や、育児休暇の取得に理解のある社会的基盤が整っている職場はまだまだ少なく、仕事を優先せざるをえないプレッシャーを強く感じる男性も多い中、「育児と家事の両立」についてジレンマを抱えがちになり、精神的に不安定な状態に陥りやすくなるのです。また、育児による経済的な負担も大きくなり、長時間勤務に悩む男性も少なくありません。

【子ども中心の生活への変化】

 産後は生活のあらゆる事柄が子どもを中心に進むため、それまでの生活習慣が大きく変化するタイミングです。不慣れな家事や育児の手伝いをする必要が生じ、思い通りにいかないことも増えるでしょう。そうした状況下でストレスを抱え込んだり、パニックになってしまったりするのも産後うつの一因です。ストレスをうまく発散する時間を取ることができれば問題ありませんが、夫婦ともにそうした余裕も少ない産後は、特に注意すべき時期と言えます。

【夫婦二人で過ごす時間が減る】

 子ども中心の生活になると、夫婦二人きりで過ごす時間はどうしても減ってしまうものです。夫婦間のコミュニケーションが減少し、仕事によるプレッシャーやストレスを家庭内でうまく解消できなくなると、うつを引き起こしやすいと考えられます。

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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