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SNS上の“誹謗中傷”は裁判沙汰になる? 「どんどんやるべき」などの声、弁護士に聞く

SNS上の誹謗中傷が訴訟に発展する可能性についてネット上で話題に。実際、誹謗中傷が訴訟になることはあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

SNS上の誹謗中傷は訴訟に発展する?
SNS上の誹謗中傷は訴訟に発展する?

 SNS上の誹謗中傷トラブルが訴訟に発展するケースが近年増えているようです。ネット上では、「匿名相手で法的措置を取れるの?」「ネットでもリアルでも誹謗中傷はダメ」「どんどん訴訟されるべき」など、さまざまな声が上がっていますが、SNS上の誹謗中傷が訴訟になることはあるのでしょうか。オトナンサー編集部では、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

名誉毀損罪と侮辱罪の違いは

Q.誹謗中傷には、どのような法的問題がありますか。

牧野さん「誹謗中傷による犯罪として名誉棄損罪(3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金、刑法第230条)と侮辱罪(拘留または科料、刑法231条)にあたる可能性があります。いずれも公然と(不特定もしくは多数の前で)その人の社会的な評価をおとしめる発言が対象になります」

Q.名誉棄損罪と侮辱罪の違いは何でしょうか。

牧野さん「名誉棄損罪と侮辱罪の違いは、名誉棄損罪は具体的な事実を示す(不倫をしている、会社のお金を使い込んでいる、など)場合で、侮辱罪は抽象的な発言をしている(使えないダメ人間だ、非常識な人だ、など)場合です。侮辱罪は、具体的な事実の指摘がなく被害の程度も軽いので、罰則も軽くなっています。

ただし、名誉棄損罪では、発言が公共の利害に関する事実で、その目的がもっぱら公益を図ることにあった場合、名誉棄損に問えません。例えば、政治家がパワハラをしていると週刊誌が報道した場合は、それが事実であれば名誉棄損罪に当たらないことになります。名誉棄損や侮辱の要件を満たせば、民事上の不法行為による損害賠償請求(慰謝料請求)も可能です」

Q.それは、ネット上の誹謗中傷においても適用されますか。

牧野さん「『公然と(不特定もしくは多数の前で)その人の社会的な評価をおとしめる発言』が対象になります。ネット上の誹謗中傷はまさに『公然と』と言えますので同じ基準が適用されます。

中には、ネット上の誹謗中傷について、それを読む人もその書き込みが真実かどうかを疑って読んでいるので、現実社会の名誉棄損よりもハードルが高くあるべきだという意見もあるようです。しかし、裁判所は現実社会とネット上で認定基準を区別していません」

Q.ネット上での誹謗中傷は、投稿者が「顔の見えない人間」であることが大半です。被害者側はどのような法的措置を取れるのでしょうか。

牧野さん「発言者が特定されていなくても、発言が行われているサイトの管理者や管理プロバイダーに削除してもらう方法もありますが、違法な誹謗中傷かどうかの判断が難しい場合が多いので、プロバイダーが要求に応じて削除することは少ないでしょう。

通常は、発言者(加害者)を特定する必要があります。発言者(加害者)を特定するためには(1)サイトの管理者や管理プロバイダーに対して、発信者情報(IPアドレス)の開示を請求(2)IPアドレスをもとに、発言者(加害者)がインターネット利用契約を締結している通信会社やプロバイダーに、発言者の氏名を開示してもらい特定(3)発言者に対して損害賠償請求を行う法的手続きに進むことになります。しかし、この手続きは非常に複雑ですので、通常は専門の弁護士へ依頼すべきです。ただし、ネットカフェなどのPCから発信されている場合、発信者を特定できない場合もあります」

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。