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更年期障害はいつから? 40代で始まることもあるって本当?

火照りやのぼせなど、特徴的な症状がみられる「更年期障害」。40代前半で発症したケースについて「早い」との声も上がっていますが、実際の発症目安はいつごろなのでしょうか。

更年期障害の発症はいつ?
更年期障害の発症はいつ?

 女優のともさかりえさんが先日、自身のインスタグラムで「更年期障害」について投稿し、話題になりました。ともさかさんは昨年の夏から「謎の火照り」に悩まされていたといい、「更年期にしては早くない?という人もいるが、婦人科の先生に相談したら『うん、更年期だね』と言われるのでした」と、更年期障害との診断だったことを明かしています。

 現在42歳のともさかさんは、「こればかりは個人差があるし、人によって症状が出るタイミングも、その内容も違うと思うけど、私は更年期だと言われて別に悲しくもないし、それ自体が特別なことだとは思ってない」とつづり、共感の声が寄せられています。更年期障害については、「症状もタイミングも人によって全然違うよね」「私の友人は30代後半から症状が始まったと言っていたな…」「どんな症状が出たら受診すべきなの?」「予防できる?」といった声もあるようです。

 更年期障害はいつごろから始まるものなのでしょうか。さまざまな疑問について、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

早い人では40代前半で

Q.そもそも「更年期障害」とは何でしょうか。

尾西さん「まず『更年期』とは、月経(生理)がなくなる『閉経(1年間、月経がなくなった状態)』の前後5年、つまり10年に及ぶ女性ホルモンが大きく変動する期間を指し、女性なら誰もが経験する時期のことです。この期間に現れるさまざまな症状により、日常生活に支障を来してしまう場合、『更年期障害』と呼ばれます。

更年期障害は、更年期に女性ホルモンが急激に減少することが原因ですが、その他、加齢による身体変化、もともとの考え方の癖や性格といった心理的要因、親の介護や子どもの受験、職場で責任のある位置に就くようになったなどの社会的要因により、発症のしやすさが異なります。症状もさまざまですが、大きく分けると次の3つに分類されます」

(1)火照りやのぼせ、また急にカーッと暑くなる「ホットフラッシュ」といった血管の自律神経失調症状
(2)目まい、動悸(どうき)、頭痛、肩こり、倦怠(けんたい)感、関節痛、しびれ、腰痛、かゆみといった身体的症状
(3)イライラ、落ち込み、不安、情緒不安定、不眠といった精神症状

Q.女性の場合、更年期障害を発症する割合はおおよそどのくらいですか。

尾西さん「更年期障害の発症率は明らかではありませんが、厚生労働省の統計(2017年度)によると、『閉経期およびその他の閉経周辺期障害(更年期障害を含む)』の患者数は14.5万人です。女性ホルモンが減少するのはどの女性も同様ですが、症状として現れない人や、少しは感じるけれど日常生活には支障はない人もいて、個人差が大きいことが特徴です。また、更年期障害が原因で離職する人も多く、近年、女性の就労率が上がる中、社会的な問題になりつつあります」

Q.更年期障害というと、40代後半以降に発症するイメージを持つ人も少なくないと思いますが、実際の発症目安はどのくらいですか。

尾西さん「日本人の平均閉経年齢は50歳ですが、やはり個人差がとても大きく、早い人では40代前半で閉経、また遅い人では50代後半まで月経がある場合もあります。40歳未満で閉経する場合は『早発閉経』といい、卵巣機能の衰えにより女性ホルモン(エストロゲン)が出なくなることが原因です。通常でも、閉経するとLDLコレステロール(いわゆる“悪玉コレステロール”)が増加したり、骨粗しょう症になりやすくなったりするのですが、早発閉経の場合はそのリスクが高くなるので要注意です」

Q.更年期障害を発症しやすい人の特徴はありますか。

尾西さん「真面目で完璧主義、神経質といった性格や、くよくよ悩みがちな性格の人、マイナス思考をしがちな人は更年期障害を発症しやすいといわれています。また、職場や子育てで大きな変化や負担を感じている人も症状を来しやすく、注意が必要です」

Q.更年期障害を発症する「予兆」となる症状はありますか。

尾西さん「エストロゲンが減少してまず現れるのが、『月経がまばらになる』『不正出血がある』といった月経異常です。その後、火照りやのぼせ、目まいなどが出現し、さらにその後は倦怠感や不眠、不安、抑うつなどの精神症状が起き、外陰部のかゆみ、膣(ちつ)の乾燥感やひりつきといった泌尿生殖器症状が起こるといわれています。

こういった流れの中で、『日常生活に支障を来している』『つらい』と感じたときは、我慢せずに『まずは相談』という気持ちで婦人科を受診してみてください」

Q.病院では、どのような治療・投薬を行うのですか。

尾西さん「更年期の治療としては、それぞれの症状を改善する『漢方薬』や、大豆イソフラボンから作られる、摂取すると体内で女性ホルモンのような働きをする『エクオール』というサプリメント、そして減少してしまった女性ホルモンを一時的に補うような『ホルモン補充療法』といった治療法があります。場合によって、胎盤から生成される成分である『プラセンタ』を注射することもあります。

更年期障害の症状は、女性ホルモンが急激に減少する時期に体がついていけずに発症するものなので、ある程度ホルモン量が少ない状態に体が慣れると症状が和らいできます。これらは、その時期を乗り切るための治療です」

Q.更年期障害は予防することができるのでしょうか。

尾西さん「更年期障害を発症するかしないかは、ある程度は体質なので仕方のない面もありますが、先述した心理的要因や社会的要因を整えることで、症状を重くしないように対処することはできます。ストレスをためず、ストレスに強い『体』と『心』づくりが大切です。同時に、規則正しい食事や睡眠、有酸素運動などにより自律神経を整えておきましょう。

更年期障害はメンタルが大きく影響するので、更年期が来ることに恐怖を感じることなく、その時期をうまく“やり過ごす”ことに集中するようにしてみてください。つらい場合は無理せず婦人科に相談し、貴重な40代、50代を楽しく過ごせるようにしていきましょう」

(オトナンサー編集部)

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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