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日本茶は入れないのに…なぜ「紅茶」は砂糖を入れて飲む?

緑茶や麦茶、玄米茶などの日本茶は砂糖を入れずに飲みますが、「紅茶」には砂糖を入れて飲む人が多いと思います。同じお茶でも、なぜ、紅茶は砂糖を入れるのでしょうか。

「紅茶」に砂糖の理由は?
「紅茶」に砂糖の理由は?

 世の中には数多くの「お茶」が存在しますが、緑茶や麦茶、玄米茶などの日本茶は砂糖を入れずに飲む一方、「紅茶」には、人により量の多少はありますが、砂糖を入れて飲むことが多いと思います。お茶には大きく、砂糖を入れるものと入れないものの2つがあるようですが、なぜ、紅茶に砂糖を入れて飲むようになったのでしょうか。料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。

英富裕層の財力や権力を象徴

Q.なぜ、紅茶に砂糖を入れて飲むようになったのでしょうか。

関口さん「砂糖を紅茶に入れて飲むことが、財力や権力があることを示す象徴と考えられたからです。紅茶に砂糖を入れるのはイギリスが発祥で、17世紀中頃のロンドンを中心に、富裕層の社交場として発展した『コーヒーハウス』で生まれた習慣といわれています。コーヒーハウスはその名の通り、当初はコーヒーを飲む場としてにぎわいましたが、やがて、お茶が主な飲み物になっていったとみられます。

そして、当時は砂糖が希少で高価な物であったため、上流階級や王侯貴族などの富裕層しか手に入れることができませんでした。そのため、貴重品であった砂糖をお茶に入れて飲むことが財力や権力を誇示する象徴となり、甘いお茶は最高のぜいたくで、ステータスを示す物とされるようになったのです。

イギリスでは、お茶の中でも特に発酵茶である紅茶に人気が集まり、やがて、国民的飲料へと発展しました。紅茶に砂糖を入れる現在の習慣は当時の富裕層がつくり出した、ぜいたくな飲み方の名残です」

Q.お茶に砂糖を入れて飲むのは紅茶だけでしょうか。紅茶以外で、お茶に砂糖を入れる国や地域はあるのでしょうか。

関口さん「世界的には、お茶に砂糖を入れない方が珍しいです。インドには、茶葉をスパイスやミルクと一緒に煮出し、砂糖を加えた『チャイ』がありますし、タイやベトナムでも、お茶に砂糖を入れて飲みます。モロッコでは、ミントティーに大量の砂糖を入れます。甘いお茶が存在しないと思われがちな中国でも、地域によっては甘いお茶が存在し、日本でも一部の地域では、お茶に砂糖を入れて飲む習慣があります。

お茶に砂糖を入れるのは、お茶の苦味や渋味を緩和させる目的のほか、疲労回復、甘いものでぜいたくな気分を味わいたい、高級品とされた砂糖をお茶に入れることにより、もてなしの気持ちを表すなどさまざまな理由があるようです」

Q.緑茶や麦茶、玄米茶などの日本茶は砂糖を入れずに飲むことが一般的です。なぜ、日本茶は砂糖を入れずに飲むようになったのですか。

関口さん「さまざまな理由があり、一概には言えません。そもそも、日本のお茶は遣唐使により、中国から伝来したことが起源といわれています。そのときに伝わったお茶の流儀が『お茶は茶葉そのものの香りを楽しむもの』というもので、その習慣が日本にも広まったことから、砂糖を入れずに飲むようになったと考えられます。

また、日本ではお茶を“薬”として扱い珍重したこと、独自の茶の湯文化や茶道により、緑茶の味わいを楽しむ飲み方が定着したことも理由と考えられます。日本でも、昔は砂糖が高級品で一部の人しか手に入れることができませんでした。そのため、お茶に砂糖を入れる習慣が生まれなかったこと、緑茶自体も高級品で、それ自体に甘味があるため必要なかったという説もあります。

庶民は高級な緑茶ではなく、比較的手に入れやすい玄米茶や麦茶を飲むことがほとんどであったことから、砂糖を入れずに飲む習慣が一般化されたのではという説もあります」

Q.日本では、釈迦(しゃか)の誕生日である4月8日の「花祭り」に、釈迦の像に甘茶をかける行事があります。この甘茶は砂糖が大量に入っているのですか。あるいは、お茶そのものが甘いのですか。

関口さん「甘茶は砂糖が大量に入っているから甘いのではありません。お茶そのものが甘いのです。甘茶はユキノシタ科のヤマアジサイの変種である『アマチャ』の若い葉を蒸してもみ、乾燥させたものです。アマチャには砂糖の1000倍もの甘味がある『フィロズルチン』『イソフィロズルチン』といった成分が含まれているため、茶葉そのものから強い甘味を出します。砂糖を入れなくてもこの甘味成分によってお茶が甘くなります」

Q.紅茶を飲むとき、どれくらいの砂糖、あるいはシロップの量が適切なのでしょうか。個人差もあるとは思いますが、目安があれば教えてください。

関口さん「1回に使用する砂糖の量は個人の嗜好(しこう)により差があり、明確な目安はありません。ちなみに、紅茶を提供される際に添えられる角砂糖1個は3グラム、スティックシュガー1本は5グラムとなっています。

ガムシロップ1個(13グラム)の糖分はおよそ、角砂糖3個分です。アイスかホットかでも使用量は変わり、その時の体調や気分にも左右されるのでひとくくりにはできませんが、角砂糖1~3個、スティックシュガー1本が1回の使用目安と考えてよいかと思われます」

(オトナンサー編集部)

関口絢子(せきぐち・あやこ)

料理研究家・管理栄養士・インナービューティースペシャリスト

米国栄養カウンセラー、ヘルスケアプランナー。企業やウェブサイトなどの各種メディアで、レシピやコラム、企画提案などを行う。斬新なアイデアやニーズを捉えた企画が人気を博し、CM用のフードコーディネートやフードスタイリング、商業施設のフードプロデュースなど多岐にわたり活動。「毎日続けられること」をモットーに簡単・おいしい・おしゃれ、かつ美容と健康に直結したレシピを発信。自らの体調不良を食で克服した経験から執筆した著書「キレイになる!フェロモンレシピ」で「食から始めるアンチエイジング」をテーマに、女性が一生輝き続けるための食事法を紹介。セミナーや女性誌の特集で人気を集めている。

■オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/ayako-sekiguchi/
■YouTubeチャンネル「管理栄養士:関口絢子のウェルネスキッチン」(https://www.youtube.com/channel/UC6cZRYwUPyvoeOOb0dqrAug

コメント

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1件のコメント

  1. とても興味深い記事ありがとうございました。1ヶ月後に続編期待しています。