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突然の激痛でパニック…「尿管結石」の原因とメカニズム、治療法と予防法

背中から脇腹、下腹部に突然、激痛が走ったら、「尿管結石」かもしれません。どんな病気で、どのような人がなりやすいのでしょうか。

突然の激痛は「尿管結石」かも
突然の激痛は「尿管結石」かも

「うずくまるしかないほど痛かった」「人生で一番の激痛」など、痛みについての声が上がることの多い「尿管結石」。ネット上では「夜中に突然猛烈な痛みが出て、パニックになった」「もう二度と経験したくない」など、苦しんだ体験談が多く上がっています。一方で「どうしてあんなに激痛なの?」「痛みが出ない人もいるのかな」「痛みを緩和する方法があるなら知りたい」など、痛み自体について疑問を持つ人も多くいるようです。

 尿管結石の「激痛」に関するさまざまな疑問について、鶴泌尿器科クリニック(浜松市)の鶴信雄院長に聞きました。

肥満の人、不摂生気味の人は要注意

Q.まず、尿管結石について教えてください。

鶴さん「『尿管』とは腎臓からぼうこうまでをつなぐ、左右に1本ずつある管です。『結石』は尿の中の物質『シュウ酸』などがカルシウムと結合して、石のような塊になったもので、この結石が尿管に詰まった状態を『尿管結石』といいます。

主な症状は背中から脇腹、下腹部に突然起こる痛みで、場合によっては血尿が出ることもあります。痛みの原因は結石が尿管に詰まることで尿が流れなくなり、腎臓が腫れる(中の圧力が上がる)ためで、結石がゴリゴリとこすれて痛むわけではありません。通常は結石が詰まっている右側、もしくは左側が痛くなるため、両側や腰の真ん中あたりの痛みは別の病気の可能性があります。また、腎臓に結石があるだけでは痛みは出ません。

結石の原因の一つとして考えられているのは、肥満やメタボリック症候群です。男性に多く、不摂生や不規則な食生活(寝る前にドカ食いをするなど)の人がなりやすいといわれています。また、尿酸値が高いと痛風の原因になりますが、尿管結石の原因にもなります。

尿管結石の痛みは、いわゆる“七転八倒”の痛みです。多くの人はじっとしていられず、身の置き場所がなく、脂汗をかきながらうずくまってしまいます。中には、胃の痛みや吐き気を訴える人もいます。出産を経験しない男性にとっては人生で一番の痛みかもしれません」

Q.痛みを緩和する方法はあるのでしょうか。

鶴さん「正直に言って、痛み止めの薬を使うしかありませんが、指圧で痛みが軽くなることがあります。うつぶせになり、背中を指で押して一番痛いところをこれでもかというくらいに強く押すと、痛みが軽くなったり、うそのように痛みがなくなったりすることがあります。ご家族にやってもらうとよいでしょう」

Q.激しい痛みは結石がある限り、ずっと続くのでしょうか。

鶴さん「痛みの原因は先述の通り、結石が尿管にストンとはまり込んで腎臓の圧力が急激に上がることです。そのため、結石の向きや場所が変わって、尿管の尿が流れるようになると、うそのように痛みがなくなります。これを繰り返しながら、結石が少しずつ下に落ちます。

結石がぼうこうに近づいてくると、ぼうこうの壁を刺激するため、『トイレが近いのに行っても少ししか出ない』『排尿した後もすっきりしない』といった症状が出ることがあります。尿管結石がある人が頻尿になったり、残尿感があったりするようになると、もうすぐ、結石が出てくる前兆かもしれません。ぼうこうから出口までをつなぐ『尿道』は尿管よりも通り道が広いので、いったん、ぼうこうの中に結石が移動するとあまり痛みを感じることなく排尿時に出てきます。

一方で、痛みは結石を出そうとする体の反応なので、尿管結石の痛みがあった人から痛みがなくなると、結石が動かなくなった可能性があります。痛みがなくなると『結石が出た』と思いがちですが、結石が残っていると腎臓の腫れが少しずつ進んでいき、数年後に片方の腎臓が機能しなくなることがあるため、必ず、結石がなくなっていることを確認しなければなりません。動かなくなった結石は手術で取り除く必要があります」

Q.尿管結石になっても「痛みを全く感じない」「痛みがほとんど出ない」ケースもあるのでしょうか。

鶴さん「あります。砂粒のような結石でも、尿が流れなくなると激しい痛みがある一方、手術するしかないような大きい結石でも、尿が流れていれば痛みはほとんどありません。また、結石が詰まっていても、徐々に尿管の尿が流れなくなると尿管内の圧が上がらず、痛みはありません。ただし、数年後に片方の腎臓が機能しなくなっていることがあり、将来的に人工透析や腎移植が必要になる場合があります。

痛みがない場合にどうやって結石を見つけるかというと、比較的若い人で、頻尿や残尿感があるものの背中や腰の痛みはないという人を調べると、尿管結石が見つかることがあります。また、血尿がサインになることもあります。

腎臓に結石があると血尿になることがありますが、腎臓結石が尿管に落ちてくると尿管結石になります。尿検査は基本的な検診にも入っていますから、尿潜血が陽性の場合は、目で見ても分からない血尿が出ていることがあり、その原因が結石のケースもあります。より詳しい検診や人間ドックで行うおなかの超音波検査(エコー)で腎臓結石や腎臓の腫れを見つけることができます」

Q.尿管結石の治療法を教えてください。

鶴さん「大きさが6ミリ以下であれば、結石を出しやすくする薬を使いながら、痛いときには痛み止めを使って、自然に出るのを待つのが基本的な治療法です。

結石の大きさが7ミリ以上の場合や、小さい結石でも2カ月以上動かない場合は自然に出る可能性が低いため、手術で結石を割って取り出す必要があります。細い内視鏡を尿管内に入れて、レーザーで結石を割る治療(TUL)が主流です。割った結石を全て回収するので体内に残ることもなく、多くは1回で治療が終わりますが麻酔が必要なため、通常は数日間の入院が必要です。

ほかに、体の外から衝撃波を結石に集中させて割る装置を使う方法もあり、こちらは麻酔の必要もなく、病院によっては日帰り手術が可能ですが、うまく割れなかったり、割った結石が詰まったりすることもあります」

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鶴 信雄(つる・のぶお)

医師(泌尿器科)

鶴泌尿器科クリニック院長。浜松医科大学医学部を卒業後、浜松医科大学泌尿器科学教室に所属。静岡県内の総合病院で排尿障害、泌尿器科がん治療、腎移植などに取り組み、母校で学位を取得。故・鈴木和雄院長とともに新都市病院で600例を超える腹腔鏡手術、約400例の前立腺レーザー手術を行い、前立腺がんと前立腺肥大症の治療に携わる。2017年、浜松市南区に鶴泌尿器科クリニックを立ち上げ、日帰りで行う前立腺肥大症のレーザー手術を実施している。鶴泌尿器科クリニック(http://www.tsuru-clinic.com/)。

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