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「きょうだいまだ?」に悩みも…第2子がなかなか授からない「2人目不妊」の実情とは

「1人目は自然に妊娠・出産できたのに、2人目がなかなか授からない」という「2人目不妊」に悩む女性が増えているようです。

「2人目不妊」の実情とは?
「2人目不妊」の実情とは?

「1人目は自然に妊娠・出産できたのに、2人目がなかなか授からない」。このような「2人目不妊」に悩む女性は少なくありません。1人目を問題なく出産したために「(2人目が)できない」と言いづらかったり、周囲に「きょうだいはまだ?」と言われたりするなど、1人目とは異なる苦悩を抱える人もいます。

 ネット上では「『2人目はまだ?』と言われるのがつらい」「年齢は関係あるのかな」「もっと知られてほしい」など、さまざまな声が上がっています。2人目不妊を巡る実情について、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

医学的には「続発性不妊」

Q.そもそも「2人目不妊」とは何でしょうか。

尾西さん「『2人目不妊』は医学的には『続発性不妊』といい、1度妊娠経験のある人が次になかなか妊娠できないことを指します。『不妊』の定義として、日本産科婦人科学会では『一定の期間、妊娠を希望して性交渉をしているにもかかわらず妊娠に至らないこと』とし、最近はこの『一定の期間』を1年としています。ただし、明らかな不妊の原因がある場合は、期間にかかわらず不妊症といえます」

Q.「2人目不妊は増加傾向にある」との声があるようですが、事実でしょうか。

尾西さん「『続発性不妊の人がどのくらいいるか』という正確なデータはありませんが、増加していることは確かです。というのも、1人目の妊娠年齢が上がっているため、必然的に2人目の妊娠年齢も上がってしまい、不妊になる傾向にあるからです。

また、最近は子育てをしながら働く女性も多いです。1人目を出産後、仕事に復帰したばかりで2人目ができない場合、次の妊娠までにしばらく間が空いてしまい、年齢の上昇や病気のリスクが上がることで不妊になることも考えられます」

Q.2人目不妊になる原因として、どのようなことが考えられますか。

尾西さん「そもそも、1児目に比べて2児目の妊娠時は、どうしても女性の年齢が上がってしまいます。年齢による不妊率は、20代前半で5%以下、20代後半で9%、30代前半で15%、30代後半で30%、40歳以上で60%というデータがあり、5年違うだけで不妊率はぐんと上がります。年齢が上昇すると、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症といった病気が進行することも多いため、それが不妊の原因となる場合もあります。

また、間接的な原因として『1児目の子育て』があります。授乳している間は、排卵を促すホルモンが抑制されるため、非常に妊娠しにくい状態です。いわゆる『卒乳』後も、子育ては心身ともに疲れるため、自分の体のケアが後回しになってしまうことや、夫婦の時間が減ることなども不妊につながると考えられます」

Q.2人目不妊の診察を受ける(治療を始める)適切なタイミングは、どのようにして見極めるとよいのでしょうか。

尾西さん「夫婦の年齢にもよりますが、近年の晩婚化や出産年齢の高齢化を考えると、夫婦で半年間頑張っても妊娠に至らない場合は産婦人科を受診してみましょう」

Q.2人目不妊の治療を行う際、その内容や方法について、1人目と2人目で異なる点はありますか。

尾西さん「基本的に、不妊の検査や不妊治療の内容、ステップとしては1児目と2児目で異なるということはありません。

検査としては、女性側の検査と男性側の検査、また双方の相性の検査に分かれます。女性側は排卵をきちんとしているか、卵子の通り道である『卵管』が通っているかの検査、ホルモン異常がないかの検査などが行われます。男性側は精液の検査を行い、精子の数や運動率、奇形率によって精子の元気度を見ます。双方の相性の検査としては、おりものの中で精子が元気に動いているか、女性が男性の精液に対して抗体(異物と認識し、排除しようとする物質)を持っていないかなどを調べます。

基本的に治療内容は一緒ですが、年齢が上がっている分、早めに治療のステップアップが行われる場合があります。治療のステップアップとは、排卵のタイミングを見る『タイミング法』、精液を子宮に入れる『人工授精』、卵子を体外に取り出し、精子と受精させてから子宮に戻す『体外受精』、それを顕微鏡下で確実に受精させる『顕微授精』と、少しずつ人の手を加えるレベルを上げて高度な治療を行うことをいいます」

Q.「2人目不妊」という言葉自体、まだあまり広く知られていない印象を受けます。そうした背景もあり、2人目不妊特有の悩みを抱える女性も多いようです。

尾西さん「最近、2人目不妊が話題になることも増えてきましたが、2人目だけになかなか人に相談できなかったり、『1人目ができたのだから自然にできるはず』と頑張ってしまったりするケースなどが多くみられます。私自身も1人目を出産して、思いの外、子育てに気力と体力を使うことを実感し、2人目妊娠まで時間がかかりました。

産婦人科医としてお伝えしたいのは、妊娠にとって何よりも重要なのは『年齢』であるということです。『2人目が欲しいな』と考えているならば、30代であれば『まだもう少し先』と考えずに早めに動き出しましょう。産婦人科では、特に『不妊』でなくても、妊娠しやすいタイミングをみたり、相談したりすることもできるので、気軽に訪れてみてくださいね」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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