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子どもがなかなか眠れず…「睡眠改善薬」を飲ませてもOK? 薬の対象年齢満たしていても、服用を慎重に判断すべき理由

子どもが眠れずに悩んでいるとき、市販の睡眠改善薬を飲ませてもいいのでしょうか。薬剤師に聞きました。

子どもがなかなか眠れないときに市販の睡眠改善薬を飲ませてもOK?(画像はイメージ)
子どもがなかなか眠れないときに市販の睡眠改善薬を飲ませてもOK?(画像はイメージ)

 大人だけでなく、子どもも不眠の症状に悩まされることがあります。子どもが眠れずに悩んでいるとき、市販の睡眠改善薬を飲ませてもいいのか悩んだ経験がある人もいるのではないでしょうか。ネット上では「中高生は不眠に悩まされやすい」という内容の情報があります。

 そもそも、市販の睡眠改善薬は、何歳以上の人を対象とした医薬品なのでしょうか。子どもが薬の対象年齢を満たしている場合、服用しても問題ないのでしょうか。服用時の注意点や多用した場合のリスクなどについて、薬剤師の真部眞澄さんに聞きました。

子どもの不眠は受診を推奨

Q.そもそも、医療機関で子どもに対して睡眠薬や睡眠導入剤などを処方または投与することはあるのでしょうか。

真部さん「ベンゾジアゼピン系などの一般的な睡眠薬は、小児には原則使用されることはありません。子どもの不眠は生活習慣や心理的な要因が多いので、まずは生活指導やカウンセリングを行うのが基本です。それでも症状が重くて日常生活に支障が出る場合には、抗ヒスタミン薬やメラトベル錠小児用などのメラトニン受容体作動薬、漢方薬などが医師の判断で処方されることがあります」

Q.睡眠改善薬の対象年齢について、教えてください。対象年齢を満たしていれば、子どもが眠れないときに睡眠改善薬を飲ませても問題はないのでしょうか。

真部さん「市販の睡眠改善薬は、一時的な不眠に対して15歳以上の人が使用することを前提に製造されています。子どもは薬の代謝が未熟で、大人と違って発達段階なので、薬の成分によって日中の眠気や注意力の低下、興奮などの予期せぬ副作用が出ることがあるかもしれません。成長期の脳への影響については研究データが不足しており、慎重な対応が必要です。そのため、15歳未満の小児には使用できません。

先述の話と重なりますが、子どもが眠れない根本的な原因は病気や発達の問題だったり、ストレスだったりする場合が多いです。薬のみでの対症療法は逆に危険なので、小児の場合は医師に相談し、薬とは異なるアプローチをしていただければと思います。

一方で、15歳以上であれば問題ないのかということに関して結論から言うと、15歳以上は一般的な睡眠改善薬の使用対象であり、年齢的には使用可能です。しかし、問題がないと断言できるわけではありません。添付文書に15歳以上と書かれているのは、薬の代謝能力や体格などを考慮して、15歳以上であれば安全域を確保できるとされているためです。

しかし、使用対象であっても注意すべきことはあります。例えば、長期の常用はしてはいけないという点です。睡眠改善薬はあくまでも一時的な不眠に対して使うものであり、毎日飲むことは推奨されていません。特に心配なのは思春期の子どもで、服用が習慣化したり依存したりしやすいので、とても危険です。薬自体に依存性があるわけではありませんが、つらいことがあると『これがあれば眠れる』と精神的に依存してしまいがちになります。

そのような意味でも長期間の使用は危険となるので、避けていただきたいです。また、『眠気が翌朝まで残る』『集中力が低下する』『口の渇き』『めまい』などの副作用が生じることもあるので注意しましょう。

なお、眠れない場合は根本的な原因の把握が大切です。原因がストレスや生活習慣、発達特性などによるものの場合、薬だけでは改善されません。そのような場合は医療機関を受診し、カウンセリングや専門家による評価といった対応が求められます」

Q.もし15歳以上の子どもが睡眠改善薬を多用した場合、どのような症状が出る可能性があるのでしょうか。

真部さん「子どもは代謝が未熟で副作用が強く出やすいです。考えられるリスクとしては、過剰に眠くなってぼーっとし、反応が鈍くなる過鎮静やふらつき、転倒リスクなどがあります。さらに、先述のように成長期の脳への影響は研究データが十分ではないので、認知や学習能力の一時的な低下といった影響が出ることもあるかもしれません。

また、精神的な依存と習慣化や、興奮、イライラ、不安が強くなってしまうこともあります。加えて、代表的な睡眠改善薬の成分であるジフェンヒドラミン塩酸塩を服用する場合、抗コリン作用によるめまいや便秘、口の渇きなどの副作用も生じやすいです」

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 睡眠改善薬の服用は15歳以上であれば問題ないものの、長期の常用は望ましくないと分かりました。子どもが不眠の症状に悩まされている場合、まずは医療機関を受診してみてはいかがでしょうか。

(オトナンサー編集部)

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真部眞澄(まなべ・ますみ)

薬剤師

東京薬科大学を卒業後、日商岩井(現・双日)に勤務。結婚、出産後、調剤薬局に23年間勤務をしながら「お薬だけに依存させない薬剤師」として活動中。現在お薬を飲み始めた40代・50代の女性に、薬だけに頼らない改善策をアドバイスしている。薬を勧めるはずの薬剤師が薬だけに依存させないことを目指すのは、多くの患者の10年後、20年後の薬の量が2倍、3倍になるのを見てきたから。初期に「より踏み込んで改善策を伝えていたら減薬や維持ができたのでは」と後悔し、これを目指すきっかけとなった。公式ホームページ(https://m-inflore.com/)。

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