個人利用増える「ドライブレコーダー」、映像は交通事故の裁判にどのように影響する?
走行状態や事故状況を録画するドライブレーダーの普及が進んでいます。記録された映像の証拠能力や裁判への影響力について、弁護士に聞きました。
近年、自動車走行時の映像や音声を記録する「ドライブレコーダー(車載カメラ)」の普及が進んでいます。ソニー損保が行った「2017年 全国カーライフ実態調査」によると、昨年のドライブレコーダー搭載率は15.3%。3年前の8.13%から7.2ポイント増加するなど、上昇傾向にあります。
ドライブレコーダーはこれまで、主に、タクシーなどの運輸業界で事故や防犯対策に搭載されていましたが、最近では、トラブルが起きた際の証拠を残すことを目的とした個人利用が増えているようです。
実際のところ、ドライブレコーダーの映像は交通事故裁判にどのように影響するのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
過失割合や賠償額に影響
Q.ドライブレコーダー(以下、ドラレコ)に記録された映像・音声に証拠能力はありますか。
牧野さん「証拠能力とは、裁判で証拠として採用されるための『資格』のことです。実際に証拠としての価値があるかどうかを示す『証明力』とは意味が異なります。
その意味では、ドラレコに記録された映像・音声には証拠能力があると言えます。ただし、証拠として採用するかどうかを決定するのは裁判所なので、ドラレコの映像に証明力があるかどうかはケース・バイ・ケースです」
Q.証明力のあるドラレコとは。
牧野さん「ドラレコの証明力を高めるためには、以下が重要と言えるでしょう」
1.ドライブレコーダーの正確な時刻を記録すること
2.ドライブレコーダーを「音声も録音できる設定」にしておくこと
3.ドライブレコーダーの記録を、いつでも再生可能な状態にしておくこと(警察などの捜査機関が再生してすぐに確認できることが必要)
Q.ドラレコの映像は過失割合や賠償額の判断にどのように影響するのでしょうか。
牧野さん「ドラレコには(偽造でなければ)客観的な事実が記録されているので、有利・不利にかかわらず事実認定(過失割合や賠償額)に影響することになります。例えば、自動車と歩行者で事故が起きた場合、通常は、自動車ドライバーが加害者として過失割合が圧倒的に高くなりますが、ドラレコによって、歩行者側の赤信号無視や黄色信号の無理な道路横断などが証明されれば、過失相殺(裁判所が被害者の過失を考慮して賠償額を減額すること)となる場合もあります。
なお、交通事故の過失割合や賠償額の算定は通常、労災賠償基準を参考にして日弁連交通事故相談センター東京支部が作成発行している『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(通称『赤い本』)と『交通事故損害額算定基準』(通称『青い本』)が参照されます」
Q.ドラレコに記録が残っている場合、裁判における提出義務はありますか。
牧野さん「裁判所から提出命令があれば提出義務がありますが、そうでなければ、提出するかどうかはこちら側の判断になります。ただし、自分に有利な部分だけを提出することはできません。提出する場合、ドラレコの映像の全てを提出することになるので慎重に判断すべきです」
Q.ドラレコの記録が証拠として提出され、判決に影響を与えた過去の事例・判例について教えてください。
牧野さん「2017年6月に発生した『東名高速あおり運転一家殺傷事件』では、あおられた被害者夫妻が命をなくし、後部座席にいた子どもに精神的損害を負わせたとされます。あおり運転であったことを証明するために、事故発生後、警察が付近を走っていた車のドラレコの映像を多数集めたとされています」
(ライフスタイルチーム)
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