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スポーツ中の行為はどうして“事件”になりにくいのか 法的位置付けや過去の事例は?

アメリカンフットボールの試合で起きた反則行為が問題になっていますが、スポーツ中の行為が“事件”になった例はあまり聞きません。一体なぜなのでしょうか。

日本大学本部(東京都千代田区)
日本大学本部(東京都千代田区)

 日本大学と関西学院大学のアメリカンフットボールの試合であった反則行為を巡り、けがをした選手側が警察に被害届を提出しました。今回の問題は刑事事件に発展する可能性がありますが、スポーツ中の行為が事件になった例はあまり聞きません。一体なぜなのでしょうか。スポーツと法律の関係や過去の事例を調べてみました。

「専門家の判断」尊重が一因か

 まず、スポーツと法律の関係についてグラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に聞きました。

Q.スポーツの試合中、反則行為で相手にけがをさせた場合、刑事事件になりうるのでしょうか。

刈谷さん「なりえます。故意が認められれば、傷害罪に問われる可能性があります。故意が認められなくても、過失が認められれば、業務上過失傷害罪や重過失傷害罪、過失傷害罪に問われる可能性があります。

しかし、スポーツにおいては、いわゆる正当行為(刑法35条)として、傷害罪などの犯罪を構成する要件に該当しても違法ではないと判断される余地があります。格闘技のケースですが、(1)スポーツを行う目的で(2)ルールを守って行われ(3)相手方の同意の範囲内で行われた場合には、正当行為として違法性が阻却されるとの判断基準が示された判例(大阪地裁平成4年7月20日判決)があります。例えば、ボクシングは相手を殴ることで競技が成立しているので、どんなに激しく殴っても正当行為となりえますし、激しいタックルや接触プレーも同様です。

以上のことから、反則行為はルールを破るものなので、極めて悪質な反則の場合には正当行為とならず、罪に問われる可能性があると言えます」

Q.仮に過失ではなく故意であると立証された場合、罪の軽重はどう変わりますか。

刈谷さん「業務上過失傷害罪、重過失傷害罪は、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(刑法211条)、過失傷害罪は30万円以下の罰金または科料(同209条)ですが、傷害罪は15年以下の懲役または50万円以下の罰金(同204条)となります」

Q.ルールに従った行為の中でけがをさせてしまった場合でも、罪に問われることはあるのでしょうか。

刈谷さん「前述の判決からすれば、ルールを守って行われていたとしても、そもそもスポーツを行う目的でなかった場合、罪に問われる可能性があると言えます。なかなか考えにくいことですが、制裁や復讐目的、あるいは相手にけがをさせる目的で行った行為などは罪に問われる可能性があるでしょう」

 次に、試合中の反則行為が事件化した実例を探してみました。日本野球機構(NPB)広報室に聞いたところ、1982年8月の横浜-阪神戦での事例が挙がりました。阪神のコーチ2人が判定を巡って審判に暴行し、罰金5万円の略式命令を受けたというものですが、30年以上も前の事件です。NPBは断定していませんが、最近は事例がないようです。

 サッカー界も事例は少ないようですが、実は、日本サッカー協会の基本規則には「FIFAの諸規定に別段の定めがある場合を除き、サッカーに関連した紛争を通常の裁判所に提訴してはならない」との決まりがあり、別の規則で、違反行為があった場合は協会が「司法機関」を設けて罰金や出場停止処分を科せると定めています。競技団体が独自に罰則を科す仕組みはNPBにもあります。

 刈谷さんは「スポーツ中の行為で刑事責任を問われる可能性はありますが、ルールを守っていれば『正当行為』という考え方、そして、ルール違反があっても、それがそのスポーツの範囲内でありうることかどうかを、まずそのスポーツの団体が判断し、それを尊重するという風潮が事件化を少なくしていると考えられます。とはいえ、それは『スポーツの中での行為』と言える場合であって、今回のアメフト問題はルールからの逸脱が著しいと思われるので、事件化する極めて珍しい事例になるかもしれません」としています。

(報道チーム)

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刈谷龍太(かりや・りょうた)

弁護士

1983年千葉県生まれ。中央大学法科大学院修了。弁護士登録後、都内で研さんを積み、2014年に新宿で弁護士法人グラディアトル法律事務所(https://www.gladiator.jp/)を創立。代表弁護士として日々の業務に勤しむほか、メディア出演やコラム執筆などをこなす。男女トラブル、労働事件、ネットトラブルなどの依頼のほか、企業法務において活躍。アクティブな性格で事務所を引っ張り、依頼者や事件に合わせた解決策や提案力に定評がある。

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