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「silent」紬・川口春奈の“泣きの演技”に涙するワケ 自然体の“ウソのなさ”

 “泣ける”と話題のフジテレビ系連続ドラマ「silent」(毎週木曜 午後10時)。川口春奈さん扮(ふん)する主人公・紬の涙を見てしまうと、なぜか号泣してしまいます……。その演技の魅力に迫ります!

連続ドラマ「silent」で主演を務めている川口春奈さん
連続ドラマ「silent」で主演を務めている川口春奈さん

 俳優の川口春奈さんが主演を務め、人気グループ「Snow Man」の目黒蓮さんが共演するフジテレビ系連続ドラマ「silent」(毎週木曜 午後10時)。本作で川口さんは、高校時代に交際していた恋人・佐倉想(目黒さん)と大人になって再会し、聴覚を失っていると知る主人公の青羽紬を演じています。今、最も“泣ける”と話題の作品で、複雑な心境を繊細に表現する川口さんの演技の魅力に迫ります……。

「silent」で心を揺さぶる“泣きの演技”

「silent」は紬が、かつて本気で愛するも、別れることになってしまった想と8年の時をへて再会。耳に難病を抱える想と“音のない世界”で新たに心を通わせていく姿を描いたラブストーリーです。

 若手脚本家の登竜門といわれる「フジテレビヤングシナリオ大賞」で、昨年大賞を受賞した脚本家の生方美久さんが物語に散りばめた心に残るセリフや、後の展開につながる伏線の数々が「とにかく泣ける」と話題になっています。

 そんな丁寧な脚本を元にしっかりと役作りに挑み、大きな感動を生み出しているのが実力派の俳優陣です。特にこの物語の中心を担っている、紬役の川口さん、想役の目黒さん、紬と想の同級生で、現在は紬の恋人でもある湊斗役の鈴鹿央士さんが見せる圧倒的な心理表現が見どころになっています。

 簡単には割り切れない感情をセリフ回しや表情で、画面いっぱいに映し出す3人の名演に心が揺さぶられている視聴者も多いのではないでしょうか。

 中でも、多くの人の涙を誘ったのが、第1話のラストで紬と想が再会を果たすシーン。高校卒業後、想は紬を悲しませたくないという思いから、自分の病気を隠したまま、紬に別れを告げました。そのため、何も知らない紬は耳が聞こえない想に対し、次々と言葉を投げかけました。

 そんな紬に、想が約2分40秒にわたる手話でずっと一人で抱えていた思いを涙ながらに表現するこのシーンは圧巻の一言。SNSでも「嗚咽(おえつ)するほど泣いた」「想の気持ちが痛いほどに伝わってくる」などと、目黒さんの演技に絶賛の声が集まりました。

 対する川口さんの演技にも目が離せませんでした。手話を習ったことのない紬には、想が手話で表現しようとしていることは分からないはず。けれど、次第に想が聴力を失っているという現実を受け止めざるを得なくなっていく紬。混乱からなのか、もしくは想の“言葉”を自分なりに解釈したのか、その瞳からツーっとあふれ出る涙にもらい泣きしてしまいました。

 第2話以降も、紬が涙を流すシーンで視聴者も同じように涙してしまう場面が多々、ありました。その理由は、川口さんの涙に嘘がないからでしょう。「脚本に書かれているから泣く」という表面的な演技ではなく、川口さん自身の心が動いていることが画面から伝わってくるのが、大きな要因ではないでしょうか。

 見る者の涙を誘う川口さんの“泣きの演技”ですが、すべての涙に“意味”を持たせている印象もあります。

 例えば、想の前で見せる涙には、それが想の気持ちを理解してあげられなかったという“罪悪感”や“後悔”。一方、想と別れてからの8年間、どんなときも自分を支えてきてくれた湊斗の前で見せる涙には、その信頼に基づく“安心”の意味があるような気がします。そういう一辺倒ではない、視聴者側に想像の余地を持たせるところに、川口さんの演技の魅力があります。

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苫とり子(とま・とりこ)

エンタメ系ライター

1995年、岡山県生まれ。東京在住。学生時代に演劇や歌のレッスンを受け、小劇場の舞台に出演。IT企業でOLを務めた後、フリーライターに転身。現在は「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポートなどを寄稿している。

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