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「クビだ!」「結婚します」…エープリルフールの“うそ”に罪はない? 弁護士に聞く

4月1日、「エープリルフール」に、人に迷惑をかけたり、気分を害したりするようなうそをつくと、内容によっては、法的責任を問われる場合もあるのでしょうか。

4月1日のうそ、法的問題は?
4月1日のうそ、法的問題は?

 きょう4月1日は「エープリルフール」です。「うそをついても許される日」と言われますが、笑って済まされるようなうそではなく、人に迷惑をかけたり、気分を害したりするようなうそをつくと、内容によっては、法的責任を問われる場合もあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

損害賠償請求の恐れも

Q.「結婚することになった」といううそを友人や知人に周知した場合、法的責任を問われる可能性はあるでしょうか。お祝いを買ってくれた人がいたケースを想定しています。

牧野さん「うそを信じた人がプレゼントをあげた場合、もらった友人(うそをついた人)に対して、民事上の不当利得の返還請求が可能となる場合があります。だたし、プレゼントを購入しただけの段階では、損害賠償請求は難しいでしょう。法は、人の好意まで保護しないからです」

Q.4月1日、意中の女性に告白したら「私も好き」と言われ、喜んでいたら、女性が後で「エープリルフールでしょ」。男性の側の精神的ショックに対して、女性の法的責任は問えるでしょうか。

牧野さん「不法行為(民法709条)に基づく損害(慰謝料)賠償責任を負う可能性が考えられます。特に相手の男性がメンタル面が弱く、精神的な損害を受けるだろうとその女性が認識していた場合には、損害(慰謝料)賠償責任を負う可能性が高まるでしょう。」

Q.会社員が上司に「会社を辞めます」と言った場合や、逆に上司が部下に「クビだ」と言った場合はどうでしょうか。どちらも後で「うそだった」と撤回したものの、一時的に相手がショックを受けたという想定です。

牧野さん「告白のケースと同様に、不法行為(民法709条)に基づく損害(慰謝料)賠償責任を負う可能性が(特に相手の部下がメンタル面が弱く、精神的な損害を受けるだろうとその上司が認識していた場合には)考えられるでしょう」

Q.「風邪の特効薬を開発した」といったうそはどうでしょうか。

牧野さん「うそをついたのが株式の上場企業で株価に影響を与えうる場合、株価に影響を与えようとしてデマ情報を流したとしたら、金融商品取引法158条の『風説の流布』にあたる可能性があります。これに違反すると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処せられます」

Q.「○○駅に爆弾を仕掛けた」といったうそで法的責任を問われる可能性はありますか。

牧野さん「偽計業務妨害(刑法233条、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当する可能性があります。錯誤に陥らせることにより、他人の業務を妨害することをいいます。実際に業務を妨害されたかどうかは問われません。『○○駅に爆弾を仕掛けた』といったうそをつくことにより、警察が出動したり、店舗が閉店になったりして、他人の業務を妨害する可能性があるからです。『エープリルフールの冗談』では済まされないでしょう」

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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