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プロ野球選手も…「自律神経失調症」の症状・原因は? 治療法や受診目安も解説

「自律神経失調症」とは、どのような病気なのでしょうか。症状や診断基準、治療法などについて、専門医に聞きました。

自律神経失調症とは?
自律神経失調症とは?

 テレビや新聞などで「自律神経失調症」という病名を聞いたことがある人もいると思います。働き盛りのビジネスマンが発症するケースが増えているほか、近年では、プロ野球選手が発症するケースも相次いでおり、誰でもかかる可能性がある病気といえます。そもそも、自律神経失調症とは、どのような病気なのでしょうか。精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

動悸・息切れ、頭痛、睡眠障害も…

Q.自律神経失調症の主な症状、発症する原因は。

田中さん「自律神経失調症は分かりやすく言うと、ストレスによって体が参った状態です。医学的に、自律神経には、活動しているときに働く交感神経と、リラックスしているときに働く副交感神経があります。体は平常時、交感神経と副交感神経がバランスをとって機能していますが、心身に過剰なストレスがかかると交感神経が異常興奮した状態、つまり、自律神経失調の状態に陥って、さまざまな身体症状がみられるようになります。

具体的には、動悸(どうき)、息切れ、過呼吸、食欲の減退、吐き気、目まい、頭痛、腹痛、便秘と下痢の繰り返し、頻尿、ひどい暑がりや寒がり、睡眠障害などです。これらの症状のために日常生活に支障が出て、病院で問診や精密検査を行っても体の病気が発見されなかった場合、自律神経失調症と診断されることが多いです。今年はワクチンが普及する前のコロナ禍のストレスによって、微熱が続いたり、寝汗がひどくなったりする患者さんも少なからずいらっしゃいました」

Q.自律神経失調症になると、憂鬱(ゆううつ)になることもあると聞いたことがありますが、他の病気と間違えられることはあるのでしょうか。

田中さん「不安、抑うつなどの精神症状がみられることもありますが、問診や精密検査を行った結果、身体のさまざまな病気やうつ病、適応障害などの精神障害が発見されなかった場合に自律神経失調症と診断されます。つまり、自律神経失調の症状はさまざまな心身の病気に広くみられますが、自律神経失調『症』というのは、そのようなさまざまな身体の病気や精神障害が存在しない状態につけられる病名です。

うつ病でも、食欲の減退、睡眠障害を中心に先述のような自律神経症状がみられますが、この場合はあくまで『うつ病』であって、自律神経失調症とは呼ばないということです。ちなみに『パニック障害』でも動悸、息切れなどの自律神経症状がみられますが、この場合はパニック障害であって、自律神経失調症とは呼びません」

Q.自律神経失調症を疑って、受診すべきと判断する基準はありますか。また、受診する際はどの診療科がよいのでしょうか。

田中さん「さまざまな身体症状のため日常生活に支障が出て、学校に行けない、仕事や家事ができない状態が頻繁にみられるようなら、ぜひ、心療内科か総合診療科を受診することをおすすめします。例えば、採血、レントゲン、心電図などの精密検査を受けることができ、いろいろな診療科があるような大きな病院(総合病院、大学病院など)を選ぶのがよいと思います。

精神科医の立場から言うと、いきなり、精神科のクリニックを受診することには反対です。採血などの検査を受けることができないクリニックがほとんどだからです」

Q.自律神経失調症の治療はどのように行うのでしょうか。

田中さん「自律神経失調症にかかった人は交感神経と副交感神経のバランスが崩れている状態のため、それらのバランスを回復させる必要があります。交感神経が異常興奮している状態をなだめるため、何とか、副交感神経が機能するようにしていかなければなりません。日本ではこれまで、不安、緊張をほぐすために抗不安薬が漫然と長期に処方されることが多かったのですが、近年は依存性の問題が指摘されるようになり、以前ほど積極的に処方されなくなりました。

薬物療法よりもリラクセーションの方法を知り、日々、実践してもらうことが何よりも大切です。リラクセーションに関してはいろいろな方法が知られています。ご自身の心身の感覚に合ったものを選択し、あまりこだわりすぎずに気楽に取り組んでみるとよいでしょう。

意外に見落とされがちですが、交感神経を興奮させる作用のあるカフェイン、たばこなどの摂取を減らしたり、やめたりすることも重要です。日々の生活習慣を見直し、リラックスできるようなものを増やして、興奮作用のあるものを除去する工夫を継続するとよいでしょう」

Q.仕事をしている人の場合、休職をした方がいいのでしょうか。

田中さん「自律神経失調症にかかったからといって、直ちに休職する必要はありません。ただし、心身に過剰なストレスがかかっている状況を脱しないことには改善は見込めません。勇気をもって、上司や同僚に相談し、『業務内容を変えてもらう』『残業を減らす』『有給休暇を取得する』などして、ストレスを少しでも軽減させましょう」

Q.自律神経失調症になりやすい人の特徴はあるのでしょうか。

田中さん「自律神経失調症になりやすい人の特徴を証明したデータはありませんが、自律神経失調の状態から実際に体の病気を発症してしまった『心身症』の臨床研究が参考になるかもしれません。つまり、心身症になりやすい人の特徴として、『気性が激しい、いつでも競争心が強い、時間に追われ、意欲旺盛で、いつもイライラしている』という行動パターンが知られています。

自律神経失調症にかかる人はそこまではいかないと思いますが、一部の人には当てはまるでしょう。また、日本人は世界の国々と比べて、労働時間が長く、睡眠時間が少ない傾向にあるため、多くの人が発症している可能性があります」

Q.近年、野球選手が自律神経系の病気にかかるケースが増えていますが、どのようなことが考えられますか。

田中さん「このケースについては、よく分かりません。ただ、プロ野球選手を含め、プロスポーツ選手が常に心身の両面において過剰なストレスにさらされていることは想像できます。医学的にみれば、スポーツ選手で自律神経失調症にかからない人の方が多いというのが不思議なことかもしれません」

(オトナンサー編集部)

田中伸一郎(たなか・しんいちろう)

医師(精神科専門医)・公認心理師

1974年生まれ。東京大学医学部卒業。同付属病院研修医、赤光会斎藤病院、杏林大学医学部精神神経科学教室、獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科などを経て、現在は、東京芸術大学保健管理センター准教授。「誰もがこころの問題を理解し、互いに助け合うことのできる社会づくり」を目指し、芸術家をめざす学生たちのメンタルサポートを行いながら、メディアを通じて正しい知識を普及すべく活動の場を広げている。エクステンション公式YouTubeチャンネル内「100の質問」(https://youtu.be/5vN5D9k9NQk)。

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