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コロナ持ってきただろ 米国でアジア系への暴言暴力増? 人種差別なくすには…「よく分かります」

アジア系米国人として考えたことを描いた漫画が話題に。米国に長く住んでいると、小さくてもさまざまな差別が存在すると感じる日系米国人の女性ですが…。

漫画「アジア系アメリカ人への人種差別の話」のカット=ありっさ(alissa.comics)さん提供
漫画「アジア系アメリカ人への人種差別の話」のカット=ありっさ(alissa.comics)さん提供

 アジア系米国人として考えたことを描いた漫画「アジア系アメリカ人への人種差別の話」がSNS上で話題となっています。コロナ禍で、アジア系米国人への暴言や暴力が増えていると感じる日系米国人の女性。コロナに限らず、米国に長く住んでいると、小さくてもさまざまな差別が存在し…という内容で「よく分かります」「私も苦労しました」「勉強になってよかったです」などの声が上がっています。作者の女性に聞きました。

米国では人種差別が日常の一部

 この漫画を描いたのは、米国在住のクリエイター、ありっさ(ペンネーム)さんです。インスタグラムでは、同じくアジア系米国人の夫とのエピソードなどを漫画にして発表しています。

Q.漫画を描き始めたのは、いつごろからでしょうか。

ありっささん「私はアメリカで育ちましたが、小さい頃から日米両方の漫画に影響され、自分や親友をキャラクターにして落書きをするのが好きでした。大学生の頃には、4コマ漫画を学生新聞に投稿していました。2020年はコロナで家にいることが多くなったので、再び漫画を描き始め、また、日本語で話す機会が少ないので日本語でも発信したいと思い、インスタグラムへの投稿を始めました」

Q.今回の漫画を描いたきっかけは。

ありっささん「コロナ禍でのアジア系への差別など、アメリカでは人種差別が日常の一部のようになってしまっています。アジア系である私はそれを無視すべきではないと実感し、向き合って描くことにしました。

日本にいると人種差別は無縁、または存在しないという印象を持つ人もいるかもしれません。日本で生まれ育った人と話すたび、人種差別の背景が分からない、話が通じていないと感じることがあったので、あえて日本語で描いてみました」

Q.アジア系への差別を強く実感するようになったのは、コロナ禍になってからですか。

ありっささん「アメリカに住む以上、差別は日常的に感じていました。でも今までは、モヤッとしたり、イラッとしたりする言動やマイクロアグレッション(言動に現れる偏見や差別に基づく見下しや侮辱、否定的な態度)程度でした。コロナ禍以降、アジア系アメリカ人への暴言や暴力事件が今まで以上に報道されたり、SNS上に出るようになりました。幸い、私はまだ直接遭遇していないものの、前より危険を感じるようになりました」

Q.今まで受けた差別的な扱いや無理解な言動について、エピソードがあれば教えてください。

ありっささん「白人である知人に『なぜ、日本人なのに日本の名前じゃないの? もったいない』と言われたことがあります。私はアメリカでは『Alissa』、日本では『ありさ』です。日本人の両親が、日米両方で通じるようにという思いを込めて付けてくれた名前で、大事な意味を持ちます。それを説明しても彼は理解しようとせず、『僕が日本の文化を一番よく知っている、僕は日本の理解者だ』という考えだけを押し付けてきました。

多くの日系2、3世、また、他のアジア系アメリカ人は名前が発音しにくくないよう、または外国人的すぎて疎外されないよう、あえて欧米の名前にしています。名前による差別が頻繁すぎて、名前を変えざるを得ないこともあります。決して、自分のルーツを卑下しているわけではありません。名前による人種差別を受けたことのない彼は、そんなことを言える立場ではないと思いました」

Q.差別意識を持つ人たちが一歩前に進むために、必要なことは何でしょうか。

ありっささん「相手の立場で考えようとする、ちゃんと向き合う、話を聞く姿勢を取ることです。差別意識は誰でも、多かれ少なかれあります。私自身も持っています。治安の悪い場所に足を踏み入れるときに警戒することは、生きるために必要な差別や区別意識の一種です。一方で、黒人がジョギングをしているだけで警察が呼ばれるなど、無意味に人を傷つけたり、非生産的な影響を与えたり、人間関係を悪くするような差別は危険です。

特に日本のように同質的な社会で暮らす場合、その場で瞬発的に『これは差別だ』と指摘するのも難しいものです。まず、相手との文化の違いについて考えることが大事だと思います。自分自身と向き合い、異文化に対して自分が拒んでいる部分を見つけて、今まで知らず知らずのうちに身に付いてしまった差別的意識に気付けたら、言動をただすことができます」

Q.相互理解を進めるために今後、発信していきたいことは。

ありっささん「人種差別の背景、心理や関連するメディアの紹介、人種差別と向き合う友人とのトークに基づいた漫画などに力を注ぎたいです。少し、ユーモアも交えながら描いていきたいと思います。リアルにおいても、アメリカ人に質問し続け、考えるきっかけをつくっていきたい。人種差別と向き合っている、海外在住の日本人読者さまに対しても、『1人で我慢せずに周りに自分の気持ちを伝えていいのですよ』と応援したいです」

Q.漫画について、どのような意見が寄せられていますか。

ありっささん「国際恋愛・結婚関連の投稿をしている方から共感していただけて、すごくうれしかったです。『分かりやすくまとまっている』『アメリカの社交マナーが勉強になる』というコメントもありました。ちゃんと伝わるか、時間をかけて悩みながら描き、投稿するのが少し不安でしたので、そう思っていただけて本望です。海外で生まれ育った日本人の方からの共感もあり、『自分だけではない』と心強さを感じました」

Q.創作活動で今後、取り組んでいきたいことは。

ありっささん「人種差別のトピック以外にも描きたい話はたくさんあります。自分自身のコロナ禍婚の話を2回目まで投稿して中断しているので、続きを投稿していく予定です。その他には、アメリカ生活の4コマ漫画や、日本との文化の違い、保護犬を飼い始めた話などを描きたいです」

(オトナンサー編集部)

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