「ライブは悪者」 コロナが浴びせた冷や水に音楽業界はどう立ち向かうのか
新型コロナの影響によるイベントの入場制限が9月に一部撤廃・緩和されましたが、ライブハウスなどの音楽イベントは制限が続いています。音楽業界の今後を専門家が語ります。
新型コロナウイルスの影響によるイベントの入場制限が9月19日、一部撤廃・緩和されました。クラシックコンサートは入場制限が撤廃されますが、ライブハウスなどの音楽イベントは制限が続きます。今春、世間に刻まれてしまった「ライブは悪者」のイメージと戦う音楽業界について、音楽イベントが地域経済に与える影響を研究してきた筆者が解説します。
3700億円が失われる?
音楽産業はコロナ禍前から、大きな変革を迫られていました。街中では音楽を聴いている人があふれているにもかかわらず、減収続き。かつてはレコードやCDといった録音媒体の販売が収益の柱でしたが、ネット配信が中心となり、媒体販売による大きな収益は望めなくなりました。2008年に2億4700万枚あったCDの販売枚数は2017年に1億5400万枚まで落ち込み、金額にして1200億円、40%の減少になりました。
ネットによる楽曲販売ではアーティストへの利益分配は全体として減少、さらに、2015年からは定額音楽配信サービスが始まり、アーティスト側の収益確保はさらに厳しくなっています。
そのような音楽ビジネスにおいて、明るい話題はライブの盛況でした。例えば、音楽フェス市場規模は2019年に330億円(前年比12.1%)、観客数295万人まで伸びました。ライブでのチケット売り上げや物販収入はアーティストやスタッフの支えとなりました。
そうして、ライブに活路を見いだした音楽業界に冷や水を浴びせたのが、新型コロナでした。2020年2月、大阪市のライブハウスで集団感染が発生。密閉された空間で観客が密集するライブハウスはコロナ下で「危険な場所」という認識が世間に広まってしまいました。
次々に、大型ライブや音楽フェスが「延期」、または「中止」に。音楽エンターテインメント業界は生き残ることすら難しいとささやかれ始めました。日本を代表する音楽フェスは2020年全滅の可能性が出ており、その損失額は売り上げベースで300億円程度と「ぴあ総研」は発表しています。
音楽ライブは地域経済にも貢献していました。例えば、大規模な音楽フェスの場合、1万円のチケットのフェスでお客さんが会場まで来て経済活動をすると、開催地の都道府県に4万7000円、日本全国では10万8000円も波及します。これは伝統的なお祭りよりも効率がよく、地方活性化につながっていたと考えられます。それがコロナで全滅の危機にあり、筆者の試算では、2020年に失われる経済波及効果は3700億円近いとみられます。
この苦境にどう立ち向かうのか。音楽プロデューサーの鹿野淳(しかの・あつし)さんに話を聞きました。
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