もはや死語では? ハローワークのヤングコーナーが「ヤング」を使い続ける理由
ハローワークの若者就業支援部門「ヤングコーナー」が、「ヤング」という“死語”にこだわり続ける理由とは――。
入社3年以内の若者の離職率は約3割と言われています。離職した、あるいは離職しようと考えている若者は次の勤務先を見つけようとしますが、ハローワークでは「ヤングコーナー」という部門で、29歳以下の若者を対象とした就職支援を行っているところがあるようです。
この「ヤング」という言葉、現在の会話ではほとんど使われない、いわゆる“死語”ではないでしょうか。さまざまな業界や業種で、時代に合った名称に変えていくことが多い中、なぜこの名称を使い続けているのか。ハローワークで相談員として勤務経験のある、転職コンサルタントの瀧本博史さんに聞きました。
現在は“名残”として残るのみ
Q.ハローワークが、若者に特化した就業支援サービスを始めたのは、いつごろからでしょうか。
瀧本さん「1990年代初めのバブル崩壊後、若者の失業率が高まり、『フリーター』『ニート』が社会問題となりました。そこで、2001年度から厚労省は『ヤングワークプラザ(若年者特別支援実施公共職業安定所)』(愛称:ヤングハローワーク)を全国5カ所に設置し、2002年度から若者向けサービス『ヤングジョブスポット』を全国14カ所に設置しました。
そして、2003年には文部科学大臣や厚生労働大臣が、フリーターや若年失業者などの増加傾向を転換させる『若年自立・挑戦プラン』をまとめました。これが、ハローワークが若者に特化した就業支援サービスを提供した始まりです」
Q.どのような理由で「ヤングコーナー」という名前になったのでしょうか。
瀧本さん「まず『ヤングワークプラザ』が作られ、その愛称として『ヤングハローワーク』が使われたのが始まりです。当時は、ハローワークとは独立した『ヤングハローワーク』、その後、ハローワーク内に設けられた『ヤングコーナー』の2つがありました。ただ、名称を決める過程で他に案があったのかや、どのような理由で『ヤングコーナー』になったかは、厚労省にも記録が残っていないそうで分かりません」
Q.今も、全国各地のハローワークに「ヤングコーナー」があるのでしょうか。
瀧本さん「当初は、全国各地のハローワークに『ヤングコーナー』がありました。しかし、現在は、各都道府県の主要都市にあるハローワークで“名残”として名称を引き継ぎ、残るのみとなりました。それらのハローワークの中にも、『新卒応援ハローワーク』『わかものハローワーク』などに名称が変わったケースもあります」
Q.日常ではほとんど使わない「ヤング」という名称が、使い続けられているのはなぜだと思いますか。
瀧本さん「ハローワークを含む公共の支援機関にとって、来所者の年齢は一つの目安であり、たとえ、来所者がその年齢を超えていたとしても、きちんと支援をするという基本姿勢があります。また、若者(ヤング)には法律上規定された年齢区分がなく、現在は29歳以下となっていますが、34歳までとしていた時期もありました。
こうしたことから、誰もが想像しやすい、会話では使われていなくても広く知られている言葉であること、年齢も含めた、より広い意味で“若者”という存在を頭に思い浮かべやすいことから、『ヤング』という言葉を使い続けているのだと思います」
Q.最近は、ハローワークの「ヤングコーナー」以外に、転職エージェントを利用する若者も増えてきています。両者とも人を介した就業支援である点は共通していますが、どのような特徴があるのでしょうか。
瀧本さん「ハローワークの『ヤングコーナー』は公共性が高く、『希望や応募先がはっきりしない』『就職活動をしたことがない』などの不安も相談できます。職業適性診断や就職支援セミナーを通じて自分の強みや方向性に気付く機会もあります。
転職エージェントは担当者がつき、求人情報の紹介から書類作成のフォロー、面接のサポートまで幅広い支援をしてくれます。担当者が親身になって関わってくれ、独自の求人を紹介してくれたり、面接後に採用担当へフォローを入れたり、給料の交渉までしてくれたりするときもあります」
Q.転職サイトを利用する方法もありますね。
瀧本さん「転職サイトは自分で求人情報を探し、自発的に応募や面接を受けたい人に向いています。自身の情報を登録することで企業からスカウトメールが来たり、スケジュール管理もできたりするのが特徴です。実際、一番多く使われている手段は転職サイトであり、自分の好きなときに自分のペースでウェブ上から応募できることが魅力です」
(オトナンサー編集部)
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