オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「酒は百薬の長」はもう古い…飲酒が「失明」招くケースも 酒を飲むときに守るべき3つの鉄則

飲酒と目の健康の関係について、眼科医が解説します。

酒を飲むと失明リスク増?(画像はイメージ)
酒を飲むと失明リスク増?(画像はイメージ)

 仕事終わりに同僚と一緒に酒を飲むのが楽しみな人は多いと思います。古くから「酒は百薬の長」といわれており、適度な飲酒は健康を維持するのに役立つとされています。

 一方、いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんによると、近年の医学研究では、人間の健康とお酒の関係について、従来の常識を覆す事実が次々と明らかになっているといいます。特に「目」と「アルコール」には、実は命に関わるほど深い関係があるとのことです。岩見さんが解説します。

「目のトラブル」は「脳卒中」のサイン

 お酒が人間の健康に及ぼす影響について、順番に紹介していきます。

(1)アルコールガイドラインの衝撃
かつては「適量のお酒は体に良い」といわれてきました。しかし、最新の医学データはその説を明確に否定しつつあります。

厚生労働省が発表している「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、たとえ少量であってもアルコール摂取は口腔(こうくう)がんや食道がん、大腸がん、乳がん、高血圧の発症リスクを高めることが示されています。以前は「お酒を少し飲む方が死亡率を下げる」という説がありましたが、現在は多くの疾患において「飲まないのが最もリスクが低い」という考え方が主流です。アルコールは肝臓だけでなく、膵臓や心臓、そして脳など全身にダメージを与えます。

お酒は「体に良いから飲む」ものではなく、「リスクを承知で楽しむ嗜好(しこう)品」へと、医学的な位置づけが変わったのです。

(2)飲酒が招く「網膜静脈閉塞症(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)」の恐怖
お酒を飲み過ぎると、目の血管が詰まって失明のリスクを招くことがあります。この病気のことを網膜静脈閉塞症といいます。

なぜお酒で目の血管が詰まるのでしょうか。お酒を常飲すると、体の中で次の3つの「負の連鎖」が起こります。

・高血圧の誘発
アルコールは血圧を上昇させ、網膜の動脈を硬く(動脈硬化)します。

・脱水作用
アルコールには強い利尿作用があるため、体内の水分が奪われ、血液がドロドロになります。

・血管の閉塞
硬くなった動脈が隣り合う静脈を圧迫し、そこにドロドロの血液が流れることで、血管の中に血栓(血の塊)が詰まってしまうのです。

実は、網膜の血管は脳の血管と直結しています。「メタアナリシス」という複数の論文をまとめた総合的な報告がありますが、2025年に発表されたあるメタアナリシスによると、網膜静脈閉塞症を発症した患者のうち、37.5%が脳卒中を患っているということです。血圧が上がれば脳出血になりますし、脳の血管が細くなること(動脈硬化)と、血液がドロドロになることが合わさると、脳梗塞になります。

つまり、目の血管に異変が起きているということは、脳の血管でも同じことが起きている可能性が高いという非常に危険なサインなのです。「目のトラブル」は「脳卒中」のサインと言えます。

健康を守るための「酒との上手な付き合い方」

 これまでの紹介で「お酒が体に良くないのは分かった。でも、急にやめるのは難しい…」と感じた人は多いのではないでしょうか。そう感じるのは、あなたの意志が決して弱いからではありません。アルコールには依存性があるため、誰にとってもコントロールは難しいものです。だからこそ、仕組みで自分を助けてあげましょう。飲酒時は次の3つの鉄則を守りましょう。

■飲酒時の鉄則
(1)1日の「上限量」を数値で知る
厚生労働省のガイドラインが推奨する「純アルコール量 1日20グラム程度」の目安は次の通りです。これ以上は「リスクが跳ね上がる」という境界線として意識してください。

【純アルコール20グラムの目安】
・ビール(5%) 中瓶1本、ロング缶1本(500ミリリットル)
・日本酒 1合(180ミリリットル)
・ワイン グラス約2杯(200ミリリットル)
・焼酎(25度) グラス約2分の1杯(100ミリリットル)
・ウイスキーダブル 1杯(60ミリリットル)

(2)酒と同量の「水」を一緒に飲む
アルコールを飲む際は、必ずお酒と同量、あるいはそれ以上の水を一緒に飲んでください。アルコールの脱水作用を和らげ、血液がドロドロになるのを防ぐためです。物理的におなかが膨れるため、飲み過ぎの防止にも直結します。

(3)最初の30分は「ものすごくスローペース」で飲む
アルコールが吸収され、血中濃度が上昇して「酔い」を感じるまでに約30分かかります。最初の30分でガブガブ飲んでしまうと、脳が「酔った」と感じる前に、体はすでに過剰摂取の状態になってしまいます。「最初の30分はおつまみを楽しみながら、水も摂取しつつゆっくり1杯を空ける」。これだけで、その後の飲み過ぎを劇的に抑えられます。

 お酒が大好きな人にとって、節酒は高いハードルに見えるかもしれません。しかし、あなたの目は、美しい景色や大切な人の笑顔を見るための、一生ものの宝物です。

「今日は水を1杯多く飲めた」「最初の30分、ゆっくり飲めた」

 そんな小さな一歩で構いません。完璧を目指さず、まずは自分の体をいたわる選択を一つだけ増やしてみませんか。私たちは、あなたの健やかな視界と健康を、心から応援しています。

(オトナンサー編集部)

【豆知識】「えっ…」 これが飲酒時に守るべき3つの“鉄則”です!

画像ギャラリー

岩見久司(いわみ・ひさし)

医師(眼科専門医、レーザー専門医、医療法人社団久視会 いわみ眼科理事長、兵庫医科大学非常勤講師)

大阪市立大学医学部卒。医学博士。1日100人を超す外来診療をこなしながら、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などを得意とする網膜内科医。近年、網膜の病気につながる可能性のある子どもの近視が急増しており、近視治療にも積極的に取り組んでいる。多くの人が「100歳まで見える目」を維持できるよう、2023年度から啓発活動を展開している。いわみ眼科ホームページ(https://iwami-eyeclinic.com)。ドクターズ・ファイル(https://doctorsfile.jp/h/189711/df/1/)。いわみ眼科チャンネル(youtube)(https://www.youtube.com/@dr.iwami911eye)。

コメント