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【医学部不正入試】会見で不正認めた昭和大、公表先送りした順天堂大の違いは? 専門家の見方

医学部の不正入試問題では、昭和大と順天堂大の対応が分かれました。その背景には何があるのでしょうか。

不正の有無の公表を先送りした順天堂大学
不正の有無の公表を先送りした順天堂大学

 東京医科大学(東京都新宿区)に端を発した医学部の不正入試問題で、昭和大学(同品川区)が10月15日に記者会見を開いて不正を認めた一方、順天堂大学(同文京区)は同18日、問題について調査する第三者委員会の設置を発表したものの、記者会見は開かず、不正の有無の公表も先送りしました。他大学でも不正があったとの報道がありますが、それらの大学も沈黙を守ったままです。各大学の対応について、危機管理の専門家に聞きました。

「順大は説明責任を回避した」

 一連の問題では、東京医科大学が、女子と3浪以上の男子の合格者数を抑制していたことなどを公表。昭和大学は現役と1浪の受験生に一律点数を加算し、2浪以上を不利に扱うなどしていたことを認めました。文部科学省の調査では、この2大学だけでなく、順天堂大学など約30の大学で不正の疑いがあるとされています。

 これらの問題を受け、全国の大学医学部長や大学病院の院長らでつくる「一般社団法人全国医学部長病院長会議」は10月13日、医学部入試制度に関する小委員会を設置。同16日に記者会見を開き、医学部入試を公平に行うための「規範」を示すと発表しました。順天堂大学は、第三者委の設置とともに、この「規範」に基づき検証を行い、結果を公表する予定、とコメントを出しました。

 2000件以上の危機管理コンサルティングを手掛けてきた「田中危機管理広報事務所」(東京都新宿区)の田中正博社長に聞きました。

Q.昭和大学の対応をどう見ますか。

田中さん「『文科省が昭和大学に不適切な点の有無の説明を求めている』ことが、マスメディアで既成事実として報道され、やむなく公表せざるを得なかったのではないでしょうか。得点操作が、理事長(当時)らの独断で極秘に行われていた東京医科大学と違い、昭和大学の場合、いわば『機関決定』で行われていたことが明々白々であったことも、会見に至った理由と思われます」

Q.昭和大学は、文科省が8月に行った調査には「不正はない」と答えていましたが、文科省から具体的に問題点を指摘され、「不正だとは思っていなかったが、文科省から指摘され、改めることにした」としています。

田中さん「裏を返せば、『本学側に意図的な悪意はなかった』と言いたかったのでしょう。しかし、社会常識から見て、とりわけ厳格であるべき医学部入試での得点操作を、関係教授たちの誰もが疑問に思わなかったこと自体が、むしろ非常識で重大問題です」

Q.順天堂大学の対応については。

田中さん「『巧妙』の一言に尽きます。文科省から疑惑の指摘を受けながら、昭和大学と違って『記者会見』をしなかったのは、会見で『順天堂大学としての判断』や『説明責任』を追及されることを回避したかったからでしょう。

代わりに、権威性のある全国医学部長病院長会議が示した規範を判断基準にすることで、説明責任を少しでも逃れ、過去のこととして清算し、今後の方針に重点を置いた説明に切り替える作戦ではないでしょうか」

Q.昭和大学と順天堂大学の対応に違いが出たのはなぜでしょうか。

田中さん「昭和大学の場合、文科省から指摘された情報がマスメディアへ先に伝わってしまったために取材が殺到。このため、有無を言わさずに記者会見に追い込まれてしまった感があります。

一方、順天堂大学の場合は、全国医学部長病院長会議の動向を素早く活用し、『この結果を踏まえて11月に公表する』という方針をマスメディアにリリースし、先手を取りました。一言で言えば、全国医学部長病院長会議の動向に対する認識の差にあったのではないでしょうか」

Q.ほかにも不正の疑いのある大学がありますが、今のところ沈黙しています。

田中さん「たとえば企業不祥事の場合、隠蔽(いんぺい)期間が長かった不祥事を報道された時、最初に報道された企業が徹底的にキャンペーン報道されるパターンになりがちです。2番手、3番手になると新鮮味が薄くなるからです。同様の理由から、他に疑惑のある大学は、いずれ文科省が一斉に公表し、取材が殺到した時点で記者会見するのを見計らっていると思われます」

Q.文科省は不正を行った大学があることを発表しながら、今のところ大学名は公表せず、大学が自主的に公表するよう求めています。

田中さん「文科省としては、最高学府の大学は、いわゆる“悪徳企業”などとは違うので、大学側の見識と判断で自主的に公表する機会を与えたのでしょう。強権発動の前に、良識に訴えたということですね」

Q.不正の疑いのある大学は、危機管理の観点から、どう対応すべきなのでしょうか。

田中さん「『人は起きたことで非難されるのではなく、起きたことにどう対応したかで非難されるのである』。この言葉は『クライシス・コミュニケーション』(危機が発生した時、どう対応するか)を端的に表現した『至言』です。大学関係者はまず、この意味を知ることです。

次に、不正疑惑のある大学が記者会見する際に心掛けることは、『言い訳』『弁解』『組織論理からの主張』の3つを説明しても、メディアや社会からの反感を招くだけと心得ることです。代わりに『謝罪』『反省』『今後の対応』の3つを忘れないことです」

「良識に訴えた」文科省の思いは、大学側に通じているのでしょうか。

(報道チーム)

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