“住み替えない”日本の高齢者…不安・不便を「我慢して暮らす」意識に変化の兆し?
「我慢して暮らす」から「問題がある」へ
拙著「なが生きしたけりゃ居場所が9割」(みらいパブリッシング)にも詳しく書きましたが、住宅や暮らす環境は、高齢期の心身の健康に大きな影響を与えることが分かっています。
高齢期には通勤や通学がなくなり、電車を使う頻度も減るので、「駅近」や「学区」といった価値は低下します。一方で、スーパーや医療機関、銀行、役所といった施設が近くにあることや、交流拠点が近いことはとても重要なポイントになります。家の中の段差や温度管理にも気を付けなければなりません。
身体的な状況もライフスタイルも、現役時代とは大きく変わるのに、同じ家や環境で暮らしていると、不安や不便が顕在化し、さまざまな危険やストレスが生じるのは当然といえば当然です。
その意味では、「家への不満を我慢して暮らす」状態から、「今の家に問題がある」という意識に変わってきたことは前向きに捉えてもいいでしょう。そして、これが今後、「住み替え」という具体的な行動になっていくのかどうか。「リバース60」という高齢期の住み替えを支援する国の制度の利用者も右肩上がりになっているようですが、日本でも「高齢期の住み替え」が広がっていくのかどうかに注目したいと思います。
(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)



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