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【インフル】感染後の「ワクチン」接種は有効? 無駄? 医師に聞いてみた

インフルエンザに感染した後にワクチンを接種した場合、メリットはあるのでしょうか。医師に聞きました。

インフルエンザ感染後のワクチン接種は有効?
インフルエンザ感染後のワクチン接種は有効?

 インフルエンザの流行により、全国で学級閉鎖をする学校が相次いでいるようです。今後、寒さが厳しくなるとさらに感染が拡大する可能性があるため、手洗いやうがいなどを徹底して行う必要があります。

 ところで、「インフルエンザに感染すると、しばらくかかりにくくなる」という内容の話をよく聞きますが、本当なのでしょうか。また、インフルエンザに感染後、ワクチンを接種した場合、効果は見込めるのでしょうか。あんどう内科クリニック(岐阜市)の安藤大樹院長に聞きました。

ワクチンは4種類のウイルスに対応

Q.そもそも、インフルエンザワクチンの主な効果について、教えてください。どのように製造されているのでしょうか。

安藤さん「一般的に、ワクチンに期待される効果は、『感染・発病予防』『重症化予防』『流行抑制』ですが、インフルエンザワクチンの場合、主に重症化の予防に効果があるといわれています。

毎年、WHO(世界保健機関)がその期間に流行するインフルエンザ株を推測し、それを基に国内の専門家がワクチンの基となる4つのウイルス株(A型2種類、B型2種類)を決めます。その後、製薬会社がその株に基づいてワクチンの製造を開始するのが一般的です。つまり、ワクチンは4種類のインフルエンザの株に対応できるように製造されているのです」

Q.「インフルエンザに感染すると、しばらくはかかりにくくなる」という内容の話をよく聞きますが、本当なのでしょうか。それとも、短期間のうちに再感染するリスクはあるのでしょうか。

安藤さん「毎年、冬の診療時に『今年はもうインフルエンザにかかったから、もうかからないだろうし、ワクチンも必要ないでしょ?』という会話をよく耳にします。確かに、多少感染しにくくなる可能性はありますし、特に同じ型のウイルスが流行している期間であれば、再感染のリスクは低くなります。

しかし、残念ながら短期間の間に再感染する可能性はあります。なぜなら、インフルエンザはウイルスの型の種類が多く、同じ期間中に数種類の型のウイルスが出現することがあるからです。

例えば、インフルエンザは主にA型とB型に分けられますが、A型に関しては、毎年のように変異を起こしているため、さらに144種類の亜型に分類されます。一方、B型の亜型は2種類です。

A型とB型とでは当然ながらウイルスの種類が異なるため、A型に感染して獲得した抗体は、B型に対しては有効に働きません。それどころか、同じA型でもそれぞれの亜型でウイルスの種類が違うため、先に感染したウイルスの型に対してできた抗体は、有効ではありません。そのため、同じ期間中にA型のウイルスに2回かかってしまうことがあるのです。

病院で行う迅速検査では、インフルエンザがA型なのかB型なのかを判別できますが、A型のどの亜型に感染しているかについては分かりません。そのため、病院では『インフルエンザA型』とだけ診断され、同じインフルエンザに2回かかったように見えるのです。

さらに、今年は5月ごろからインフルエンザが流行しています。流行の期間が長くなると、その分ウイルスの型が変化する可能性が高くなるため、再感染のリスクも高くなっていくと考えられます。

この流れを踏まえると、現在の流行が例年と同じ4月ごろに終息するとは考えにくいため、流行が去ったと油断して感染対策をおろそかにしていると、来年の夏に再びインフルエンザにかかってしまう可能性があります。新型コロナウイルスも季節を問わず流行しているため、手洗いやうがい、マスクなどの感染対策は、毎日の習慣にしておきましょう」

Q.インフルエンザに感染した人がワクチンを接種しても問題ないのでしょうか。それとも、感染後に接種しても効果は見込めないのでしょうか。

安藤さん「厚生労働省が公表する資料には、『一般に、インフルエンザに自然感染した場合は免疫抗体を獲得し、病気の進行(発症)を軽減することは可能と考えられる。そのため、明らかにインフルエンザに罹患した者は、同シーズンにおいては、同株のワクチンを接種する必要性は乏しい』などと記載されています。

そのため、インフルエンザに感染した後にワクチンを接種しても効果がないように見受けられますが、私は接種した方が良いと思います。なぜなら、インフルエンザワクチンは先述の通り、4種類のインフルエンザの株に対応できるように製造されているからです。1つの型に感染しても、残りの3つの型にかかる可能性があるため、ワクチンを接種することである程度の予防効果が期待できます。

ちなみに、すでにインフルエンザに感染した人がワクチンを接種した場合、注射針を刺した部分が腫れるなどの反応が出る可能性があるものの、副反応の頻度や程度が増えたという報告はありません。重症化の予防効果がより強くなることが期待されるほか、安全性も高いため、少なくとも、もともと接種しようとしていた人が、感染を理由に接種をやめる必要はないと思います」

Q.インフルエンザの感染後にワクチンを接種する場合の適切なタイミングについて、教えてください。

安藤さん「インフルエンザは、はしかと違い、かかった後に一時的に免疫機能が落ちることはありません。

また、インフルエンザワクチンには、病原体となるウイルスの感染力を失わせた『不活化ワクチン』が原材料として使われています。病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて病原性をなくしたものを使った『生ワクチン』のように、感染ウイルスと干渉して効果が薄れることはありません。

そのため、体調さえ問題なければいつ接種しても問題ありません。目安としては、感染してから1~2週間以降に接種するのがお勧めです」

 インフルエンザに感染後、短期間のうちに再度、感染する可能性があるということです。ワクチンを接種する前にインフルエンザに感染した場合、重症化を防ぐためにワクチンを接種しておくとよいかもしれません。

(オトナンサー編集部)

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安藤大樹(あんどう・だいき)

医師

2004年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業。同年藤田保健衛生大学病院(現・藤田医科大学病院)初期研修、2006年に一般内科入局。2007年より医局長、2011年、総合診療内科/救急総合内科医局長を務める。2015年、岐阜市民病院総合診療・リウマチ膠原(こうげん)病センターに医員として着任。同年、同大学救急総合内科客員講師。2017年より、あんどう内科クリニック院長として治療に当たる。2018年、岐阜市民病院研修管理委員会外部委員、2020年、岐阜大学医学部総合病態内科学客員講師。あんどう内科クリニック(http://andoc-clinic.com/)。

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