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9×6、わずか“54文字”の文学賞が話題に! 「短いけど、確かに文学」と好評、担当者に聞く

間もなく「芥川賞」「直木賞」の選考会がありますが、PHP研究所が主催する“もう一つの”文学賞がSNS上で話題となっています。

「小中学生の部」の大賞作品(PHP研究所提供)
「小中学生の部」の大賞作品(PHP研究所提供)

「芥川賞」「直木賞」の選考会が7月18日に行われますが、PHP研究所(京都市南区)が主催する“もう一つの”文学賞がSNS上で話題となっています。

 今年創設された「54字の文学賞」は、わずか54文字で物語や自分の考えを表現する斬新な取り組みで、SNS上では「この文字数で表現できるのがすごい」「短いけど、確かに文学」「星新一のショートショートを読むような楽しさがある」「最初『ん?』ってなったけど理解したとたんテンション上がる」などの声が上がっています。

 賞を創設した経緯などをPHP研究所の担当者に聞きました。

書籍の重版きっかけに

「保育園での一コマ。保育士は、二十人の子供に向かい歌った。『幸せなら手をたたこう♪』園には沈黙と静寂が流れた」(小中学生の部大賞)

「佐藤がタイムマシンに乗って、昔の自分の両親に会いに行ったらしい。未来が変わる危険もあるのに大丈夫かな、鈴木…」(大人の部大賞)

「54字の文学賞」で大賞に選ばれた作品です。この賞では、縦9マス、横6マスの、原稿用紙をイメージしたフォーマットにストーリーを自由に表現します。第1回「54字の文学賞」の応募期間は3月16日~5月6日で、ツイッターのほか、はがきで応募を受け付け、6月27日に入賞作を発表しました。

「大人の部」「小中学生の部」の2部門があり、応募総数は2992作品。部門ごとに大賞1作品、優秀賞2作品を選出し、特別賞として「ヒューマンドラマ賞」「ラブストーリー賞」「コメディ賞」「SF賞」「ホラー賞」「企業賞」「高校生賞」を選び、計13作品が入賞しました。

 PHP研究所の児童書出版部、小野くるみさんに話を聞きました。

Q.応募状況はいかがでしたか。

小野さん「募集直後は1日5~10件の投稿でしたが、募集開始から約1カ月後、『シャープ株式会社』の公式アカウントから応募してくださったのをきっかけにネット上で文学賞の情報が拡散し、最終的に、7歳から70代まで老若男女問わず多くの人たちから投稿を頂きました」

Q.「54字の文学賞」を創設した理由は。

小野さん「2018年2月に発売した『54字の物語』(氏田雄介 著/佐藤おどり イラスト)の売り上げが好調だったことがきっかけです。

この本は、54字詰めの原稿用紙に物語をつづっています。発売後わずか1カ月で重版となったため、重版記念として賞を創設しました。物語を考えてつづる、創作する楽しさを多くの人に体験してもらい、『54字の物語』という新しい文学を知ってもらうのが狙いでした」

Q.では「54字の物語」を出版した経緯は。

小野さん「近年、話題となっていた『あたりまえポエム』の著者である氏田雄介さんのインスタグラム(アカウントは、氏くん/ujiqn)で、『54字の物語』が不定期にアップされているのをお見かけし、一読者として『このオチはこういう意味なんじゃないか』『こういう展開も考えられるぞ』と楽しみながら拝読していました。その後、タイミングよく氏田さんとお会いする機会があり、児童書出版部から書籍の発刊を提案しました。

インスタグラムに投稿されていた作品は10作ほどでしたので、書籍化にあたり氏田さんに80作ほど追加で執筆いただきました。氏田さんのインスタグラムのファンは大人も多かったので、収録作品はもちろん、イラストや装丁デザインまで『大人も楽しめる、スタイリッシュな児童書』にこだわりました」

Q.本の累計部数は。

小野さん「発売から5カ月で5刷を突破し、累計1万6000部を発行しています。氏田さん、イラストレーターの佐藤おどりさん、デザイナーさんの協力のおかげもあり、児童書コーナーのほか、主に大人が足を運ぶ『話題書コーナー』などでも展開いただける書店が増えています。この1週間ほど、ネット上での文学賞の反響を受けて注文が増えています。近々6刷も決定する見込みです」

Q.文学賞の応募作品のレベルはいかがでしたか。

小野さん「当初、入賞は『大人の部』3作、『小中学生の部』3作の合計6作品の予定でした。ところが、ほほ笑ましい作品から、意味が分かるとゾっとする作品までレベルが高い作品がたくさん寄せられたため、氏田さんの提案で急きょ、7作品を『特別賞』として入賞させることが決まりました。

54字という限られた文字数で『オチ』を付けるためか、全体的にサスペンスホラーやSFが多い印象です。入賞を逃した作品の中にも、行頭や行末を横読みすると意外な真実が浮かび上がる作品や実体験に基づくストーリーなど、『なるほど~!』とうならせる作品が多く、選定作業は困難を極めました」

Q.文学賞の反響はいかがですか。

小野さん「予想をはるかに上回る、たくさんの人に投稿していただき、うれしく思います。個人だけでなく、中学校や高校の文学部単位で作品を送ってくださった学校もありました。ありがたいことに、受賞作発表後、『次回あれば参加したいなあ』というツイートもたくさん見かけました」

 今回の反響を受け、氏田さんは急きょ、第2回の「54字の文学賞」の募集を7月3日から始めました。氏田さんの公式ツイッター(氏くん@ujiqn)から応募でき、締め切りは8日の午後11時59分です。

(報道チーム)

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