かゆくて眠れない…アトピー性皮膚炎のかゆみ、「夜」にひどくなるのはなぜ? “4つの原因”を皮膚科医に聞いた
「夜になるとかゆみがひどくなる」と悩むアトピー性皮膚炎の患者は少なくないようです。なぜ夜にかゆみが悪化しやすいのか、皮膚科医に聞きました。
アトピー性皮膚炎の患者からよく聞かれる、「夜になるとかゆみがひどくなる」という悩み。かゆみが気になって眠れず、睡眠不足に陥ってしまうケースも少なくないようです。なぜ、アトピー性皮膚炎のかゆみは夜、寝る前にひどくなりやすいのでしょうか。肌クリニック大宮(さいたま市)院長で皮膚科医の相馬孝光さんに聞きました。
布団に入って体温が上昇→かゆみが増す
Q.まず、アトピー性皮膚炎について教えてください。
相馬さん「アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が、慢性的によくなったり悪くなったりを繰り返す病気です。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、先天的に皮膚のバリア機能が脆弱(ぜいじゃく)です。これは、極度の乾燥肌による知覚過敏、刺激物質やアレルゲンといった外からの異物の皮膚内への侵入によるアレルギー反応などが生じる要因となります。こうした要因は、皮膚に存在する免疫細胞を刺激することにつながり、その結果として皮膚に炎症を招き、かゆみが引き起こされます。
また、最近の研究では、かゆみを感じる神経が皮膚の表面まで伸び、通常の人に比べて、かゆみを感じやすい状態となっていることも明らかとなっています。そして、かゆみで皮膚を引っかくと、皮膚が傷ついてさらなる炎症を招いたり、バリア機能がさらに弱まってしまったりしてかゆみが強まったりするなど、悪循環に陥ります」
Q.アトピー性皮膚炎の「かゆみ」が夜、寝る前などにひどくなりやすいのは事実ですか。
相馬さん「事実といえます。その原因として、次の4つが挙げられます」
【乾燥肌】
一般的に、お風呂に入ったりシャワーを浴びたりするのは夜間であることが多いのではないでしょうか。シャンプーやせっけんによる洗浄によって肌の乾燥が進むことで、かゆみが増すと考えられます。さらに、その後の着替えや寝具に入る刺激によって余計かゆくなることもあります。
【体温上昇】
一般的にかゆみは、体温が上昇すると増悪します。食事・入浴・飲酒は、体内の熱産生量を増やし、かゆみを伝える神経の働きが活性化されるため、かゆみが増すのです。特に就寝時は、布団に入ることや副交感神経が優位な状態になることで、体温がさらに上昇しやすく、かゆみが起こりやすくなると考えられます。
【かゆみに関心が集中】
仕事や勉強、職場や学校での対人関係などに関心が集中していることが多い昼間は、かゆみに関心が向かいにくいです。しかし夜になると、こうした事象への関心が減り、かゆみへの関心が増加しやすくなります。つまり、夜になると「昼間に忘れていたかゆみを思い出す」ことが多くなるといえるのです。
【昼間のストレスの影響】
日中、仕事などで過度なストレスを受けると、アトピー性皮膚炎の原因である免疫細胞の活性化が起こりやすくなり、かゆみや皮膚炎の増悪を招きます。夜間は、先述した3つのような理由で、ただでさえかゆみを感じやすい環境なので、それを昼間にためたストレスが悪化させてしまうことがあります。
Q.アトピー性皮膚炎で、もし夜にかゆみが強くなってしまった場合、どうすればいいですか。
相馬さん「まずは氷などで体をクーリングするのがお勧めです。先述の通り、夜間は体温が上昇する機会が多いため、クーリングすることでもかゆみがだいぶ軽減されることが多いです。
また、夜間のかゆみを減らすには、保湿剤によるスキンケアを行うとともに、リラックスできる環境を整えてストレスを軽減するのが有効でしょう。もちろん、湿疹部位への規則的なステロイド外用剤の塗布や、かゆみを軽減する抗アレルギー薬の服用など、きちんとした治療を継続することも大切な選択肢といえます」
(オトナンサー編集部)
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