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「社名変更」のメリット&デメリットは? 成功例&リスクを経営コンサルタントが解説

企業が社名を変更するメリット、デメリットについて、経営コンサルタントに聞きました。

企業が社名を変更するメリット、デメリットは?
企業が社名を変更するメリット、デメリットは?

 企業が社名を変更することがありますが、その際、「社名がシンプルになり、分かりやすい」「以前の社名の方がよかった」「今後の業績に期待できるかも」など、人によってさまざまな感想を持つと思います。

 そもそも、企業はどのようなときに社名を変更するのでしょうか。社名を変更した場合、どのようなメリット、デメリットが生じる可能性があるのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

企業イメージ改善などのメリット

Q.企業は、どのようなときに社名を変更することが多いのでしょうか。

大庭さん「企業が社名変更を行う主な理由として、『企業としての認知度やブランド力を向上させるため』『今後の事業内容に則した社名にするため』『M&A(企業の合併、買収)の実施によるもの』があります。

同一企業について、複数のブランドが世間に浸透しているケースがあります。その場合、国内外の市場に最も浸透しているブランドを社名にすることで、企業としての認知度やブランド力のさらなる向上が期待できます。『松下』『ナショナル』『パナソニック』という三大ブランドを抱えていた松下電器産業が2008年10月1日、パナソニックに社名変更したのが代表的な例です。

企業は、時代とともに事業内容も変化していきます。その際、今後の事業内容に則した社名に変更することで、自社の事業領域の変化を社内外に認識させることができます。代表的な例として、写真フイルムの製造で成長した富士写真フイルムが2006年10月1日、画像に関する幅広い分野に事業進出するにあたり、富士フイルムホールディングスに社名変更したことが挙げられます。

M&Aを行うことで、買収元の企業が傘下に加わった企業の経営監督に専念する目的で持ち株会社となる場合に、社名を『○○ホールディングス』などと変更するケースも多く見られます」

Q.では、企業が社名変更を変更すると、どのようなメリット、デメリットが生じる可能性があるのでしょうか。

大庭さん「社名変更のメリットとして考えられることとして、『企業としての認知度やブランド力の向上』『企業イメージの改善』などがあります。先述のパナソニックのように市場への浸透度が高いブランドを社名にすることで、企業としての認知度やブランド力の向上が期待できます。

また、分かりにくい社名を分かりやすい社名にすることで、消費者からの認知度が高まったり、社名をアルファベット表記にすることで海外市場からの認知度が高まったりすることなども期待できます。さらに、社名を変更し、企業体質が刷新されたことを市場にアピールすることで、企業イメージの改善が図られるケースもあります。

社名変更のデメリットとして考えられることとして、『既存顧客の認知度の低下』『変更後の対応が煩雑』などがあります。社名を変更することで、既存顧客から別会社だと思われてしまい、取引の減少を招いてしまうことがあります。さらに、社名変更を行った場合、社封筒や名刺などの社名変更のほか、ロゴの変更や役所の手続き、取引先への社名変更の周知など、煩雑な対応が発生してしまいます」

Q.企業が社名変更をする際に認知度を上げるには、どうしたらよいのでしょうか。

大庭さん「社名は、企業の認知度に直結します。そのため、『短い言葉』『なじみのある言葉』『発音しやすい言葉』を使用するなど、覚えやすいネーミングにすることが望ましいです。例えば、難読な漢字や読みにくい英語は、カタカナなどで表記することが望ましいでしょう。

どのような事業を行っているのかを分かりやすくすることも、社名を認知しやすくする上で効果的です。社名の語尾に『〇〇工業』を付けることで、〇〇に関する製造、販売を行っている企業だというのが伝わりやすくなります。

また、近年はホームページが重要な営業ツールとなっているため、インターネット上の住所である『ドメイン』を取得できることを考慮した社名の検討も重要です。シンプルすぎる社名だと、すでに社名と関連するドメインが使用されているケースに遭遇する可能性が高くなります」

Q.企業が社名を変更して成功したケースはありますか。

大庭さん「美容・健康食品の販売やジムの運営など、健康に関する幅広い事業を展開していた健康コーポレーション(現在のRIZAPグループ)は、子会社でパーソナルトレーニングジムを運営する『RIZAP(ライザップ)』の知名度が圧倒的に高いことを受け、2016年7月1日に社名を『RIZAPグループ』に変更し、グループ全体でRIZAPブランドを前面に押し出した事業展開を行っていきました。

それにより、RIZAPグループの2016年3月期の売上高は539億円でしたが、2019年3月期の売上高は2225億円となり、売上高は3年で4倍以上に伸長しました」

(オトナンサー編集部)

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大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

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