SNS「令和の米騒動」話題 中日ドラゴンズの“白米禁止” どんな影響? “糖質制限”のメリット&注意点を医師が解説
スポーツ選手が糖質の摂取を制限すると、どのようなメリット、デメリットが生じる可能性があるのでしょうか。医師に聞きました。

プロ野球・中日ドラゴンズの立浪和義監督が8月上旬以降、試合前の食事会場で炊飯器による白米の提供を禁止していることが夕刊紙や週刊誌で報じられ、話題となりました。SNS上では、「令和の米騒動」「白米禁止令」などの声が上がっています。
スポーツ選手が糖質の摂取を制限すると、どのようなメリット、デメリットが生じる可能性があるのでしょうか。栄養療法を専門とする「みぞぐちクリニック」(東京都中央区)の溝口徹院長に聞きました。
カロリー不足による「低血糖」に注意
Q.「スポーツ選手が白米を食べ過ぎると、動きが鈍くなる」といわれることがありますが、本当なのでしょうか。
溝口さん「白米に限ったことではありませんが、精製した糖質の摂取量と試合時のパフォーマンスは、深く関係していると言えます。正常な血糖値ですが、空腹時は80程度で、食事により上昇しても140以内に収まります。
もし糖質の過剰摂取により血糖値が140を超えた場合、上がり過ぎた血糖値を下げるために体内でインスリンが出され、血糖値を下げます。このとき、急激に上がる血糖値に対応するため、分泌されるインスリンの量が増え、血糖値が80を下回るケースが多くあります。
血糖値が80を下回ったり、急激なスピードで血糖値が下がったりした場合、低血糖の症状が生じます。主な症状としては、『脱力感』『気が遠くなる』『眠気』『思考低下』『目まい』などです。
さらに低血糖から正常な状態に戻そうと、アドレナリンやノルアドレナリンといった血糖値を上げるホルモンが出され、血糖値を上げていきます。
これらは自律神経に関わるホルモンで、興奮作用があるため、糖質量が多い食事により、過剰に分泌されると『動悸(どうき)』『不安感』『イライラ』『神経過敏』『筋肉のこわばり』といった症状が出ることが多いです。その結果、体の動きの鈍さにつながっていきます」
Q.では、スポーツ選手が糖質の摂取を制限すると、どのようなメリット、デメリットが生じる可能性があるのでしょうか。
溝口さん「スポーツの種類によって変わりますが、糖質の過剰な摂取を抑えることで血糖値が安定します。それにより、インスリンやアドレナリンの過剰な分泌が抑えられるため、安定したパフォーマンスを得ることができるようになります。このほか、体形の管理やメンタルの安定、疲労の軽減など、心身のコントロールがしやすくなります。
デメリットは特にありませんが、糖質を控えることでカロリー不足になりやすくなるため、食事の際は脂質をうまく取り入れる必要があります」
Q.スポーツ選手、一般の人に限らず、糖質制限をする際の注意点について、教えてください。間違った方法で糖質を制限すると、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。
溝口さん「先述の通り、糖質制限をすると、カロリー不足に陥りやすくなります。摂取カロリーが不足した場合も低血糖の症状が出やすくなるため、注意が必要です。
そこで、食事の際は、汁物にMCTオイル(中鎖脂肪酸油)やアマニオイル、ココナッツオイルなどを加えたり、肉や魚を食べるときは、脂身など、脂質が含まれる部分を意識的に摂取したりするなどして、摂取カロリーを上げる必要があります。
特に筋肉量の少ない女性が急に糖質制限をした場合、脂質をエネルギー源としてうまく利用することができず、体調不良になるケースがあります。女性が糖質制限に取り組む際ですが、最初は白米やパンの摂取量を従来の半分程度にとどめるとともに、肉や魚を一口程度増やすようにして徐々に切り替えることが必要です。
すでに何らかの基礎疾患がある場合は、糖質制限に理解のある医師に相談しながら取り組むのをお勧めします」
(オトナンサー編集部)
コメント