防寒対策に「首を温める」が有効なのは本当? 汗で体が冷えない? 医師に聞く
防寒対策として首を温めるのは、本当に有効なのでしょうか。医師に聞きました。
朝晩を中心にまだまだ寒い日が続いており、通勤・通学時にマフラーやネックウォーマー、タートルネックを着用する人も多いと思います。マフラーなどで首を覆うと体が温まりますが、SNS上では「タートルネックを着たら首の汗がやばかった」「ネックウォーマーで汗びっしょり」といった声も上がっています。
防寒対策として首を温めるのは、本当に有効なのでしょうか。マフラーなどの着用時に首に汗がたまった場合、かえって体が冷える恐れはないのでしょうか。TCB東京中央美容外科(代表院:東京都新宿区)に所属し、「日本脈管学会 専門医」や「日本外科学会 専門医」などの資格を持つ安本匠(やすもと・たくみ)医師に聞きました。
あせもやかゆみに注意
Q.そもそも、人間が体温を維持する際の仕組みについて、教えてください。
安本さん「人間は恒温動物なので、気温にかかわらず、体温を一定に保とうとする機構が働いています。体が冷えてくると、末梢(まっしょう)血管が収縮して末梢への血流を低下させ、深部体温(体の内部の温度)を保ちます。逆に、体が温まると、末梢血管が拡張して熱を放散し、深部体温が上昇しないようにします。
つまり、体を外部から温めたとしても体温そのものが上昇することは基本的にありません。しかし、体が冷えると末梢血管が収縮し、手足が冷たくなりますので、体感温度は下がります」
Q.首を温めると、体感温度が上がるといわれていますが、本当なのでしょうか。
安本さん「首には、頸(けい)動脈、頸静脈という太い血管があります。手で首の前面に触れてみると、動脈の拍動を感じる場所があるはずです。これが頸動脈であり、頸静脈はそのすぐそばを伴走しています。頸動脈、頸静脈は血流が豊富であり、温めることで、全身の血液を効率的に温めることが可能です。
こうして深部体温が温まってくると、末梢の血管が拡張して手足も温まってくるので、体感温度が上がってくると考えられます」
Q.では、首を温めるために有効な方法について、教えてください。マフラーやネックウォーマー、タートルネックを着用するのが望ましいのでしょうか。
安本さん「マフラーやネックウォーマー、タートルネックの着用は、首を温めるというより、冷やさないために有効だと考えます。
先述のように、首には頸動脈、頸静脈という太い血管が走行しており、比較的体の表面にあるため、気温の影響を受けやすいです。頸動脈、頸静脈は血流がとても多く、これらの血管を冷やさないことは、体を冷やさないために有効な手段といえます。積極的に温めたいのであれば、蒸しタオルなどを首元に当てるのが有効です」
Q.マフラーやタートルネックなどを長時間着用すると、汗がたまることがあります。この場合、体が冷えたり、首がかゆくなったりする恐れはないのでしょうか。
安本さん「汗をかくということは、体が熱くなってきているサインです。汗は蒸発することによって、気化熱で体温を下げる働きをします。汗をかきやすい人は、着脱によって体温調節のしやすいネックウォーマーやマフラーの使用をお勧めします。
汗でぬれた衣類を着用し続けることは、外に出た際に体を冷やしてしまうだけでなく、汗疹(あせも)やかゆみなどの原因になります。可能であれば『ぬれた衣類を着替える』『シャワーを浴びる』などの対応が望ましいですが、難しいようであれば、乾いたタオルやハンカチで汗を定期的に拭き取るようにしましょう」
マフラーやネックウォーマーなどの着用時に汗がたまったときは、体を冷やさないように注意してください。
(オトナンサー編集部)
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