「大量のフンで迷惑!」…ハトへの「餌やり」行為に法的問題はない? 弁護士に聞く
住宅地に集まるハトのフンに悩まされる人たちから「ハトの餌やりはやめてほしい」という声が上がっているようです。ハトの餌やりを巡る法的問題について、弁護士に聞きました。
公園で、お年寄りがパンくずをまき、「バタバタ」と羽音をさせて集まったハトたちが餌をついばむ…。以前はよくみられた一見、牧歌的な光景ですが、公園付近の住民にとっては集まったハトのフンに悩まされるケースもあり、各地で「ハトの餌やりはやめてほしい」という声が上がっているようです。ハトの餌やりを巡る法的問題について、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
悪質なら罰金の可能性も
Q.公園など公共の場におけるハトの餌やりはそもそも、法律や条例に違反することがあるのでしょうか。
佐藤さん「動物の適切な取り扱いなどについて定めた法律として『動物の愛護および管理に関する法律』(動物愛護法)があります。2020年6月より、餌やりなどによって周辺の生活環境が損なわれるときは(騒音・悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生など)、そうした事態を生じさせた者に対して、都道府県が中止するよう指導、勧告、命令することができ(同法25条)、命令に違反した場合には、50万円以下の罰金を科せるようになりました(同法46条の2)。
各地方自治体が定める条例の中にも、餌やりについて規制しているものがあります。例えば、ハトではありませんが、富山市には『カラス被害防止条例』があり、迷惑となるカラスへの餌やりを禁じ、命令に違反した者に対する罰則(5万円以下の罰金)も定めています。東京都世田谷区では、罰則はないものの、『環境美化等に関する条例』で野鳥への餌やりによる迷惑行為を禁じています。
従って、餌やりの態様などによっては、こうした法律や条例に違反することがあり得ます」
Q.マンションや団地敷地内におけるハトの餌やりはどうでしょうか。
佐藤さん「先述した餌やりに関する法律や条例は、餌やりを禁止する場所を限定していません。そのため、公共の場だけでなく、マンションや団地などの敷地内で餌やりをした場合であっても、周辺の生活環境に悪影響を及ぼしていると認められれば、適用される可能性があります」
Q.しかし、実際には、餌やりをしている人がいても摘発されることなく、住民とトラブルが起きるケースがあるようです。
佐藤さん「法律や条例は『すべての餌やり』を禁じているのではなく、『周囲の生活環境を悪化させる餌やり』をしないよう求めています。そのため、違法になるか否かの線引きは難しく、取り締まりに至らないケースもあるのでしょう。
例えば、野良猫への餌やりに関してですが、不妊・去勢手術をした上で、元々すみ着いていた場所で住民が適切に餌をやり、育てる取り組み(いわゆる『地域猫対策』)が存在します。こうした取り組みは動物との共生を目指すものとして、条例で推奨している自治体もあるため、取り締まられる行為ではありません。
一方で、大量の餌をばらまき、後始末も一切しなかったり、他人の敷地内に勝手に餌を置いたりと、悪質なケースも存在します。動物愛護法の運用によって悪質なケースへの取り締まりが強化されるでしょう」
Q.ハトのフンによって被害(洗濯物の汚れ、ベランダの清掃費用など)があった場合、餌やりをしている人を告発したり、損害賠償を求めたりすることは可能なのでしょうか。
佐藤さん「ハトへの餌やりが原因で損害を被った場合、損害賠償請求や餌やりの禁止請求が認められる可能性があります。
実際、近隣住民が毎日、自宅前でハトの餌やりを続けたため、向かいの家にもハトがとまるようになり、大量のフンでベランダの屋根や雨どいが劣化し、洗濯物も干せないような状態になったケースで、ベランダの修理費用や精神的苦痛に対する慰謝料など合計216万円ほどの支払いを、大阪地裁が命じた判決があります。このケースでは、被害者宅の周囲30メートル以内で餌やりをしないことも命じられました。
無責任な餌やりについては、自治体が動物愛護法に基づき、命令に従わない者に対し刑事告発する可能性もあります」
Q.ハトのフンで困っている場合、どこに相談すればよいのでしょうか。
佐藤さん「ハトの餌やりによる被害で困っている場合、お住まいの自治体に相談してみましょう。自治体によって担当部署の名称が異なりますが、環境に関する部署が相談窓口となっていることが多いです。
餌やりをしている人に対して、直接注意したいと思う人もいるかもしれませんが、それについては慎重になる必要があります。餌やりを注意されたことに腹を立て、暴行事件に発展したケースもありますし、逆に『適切な餌やりを妨害した』としてトラブルになったケースもあります。困ったときはまず、自治体に相談し、職員と一緒に対応することをおすすめします。
重大な実害が発生しているような場合には、損害賠償請求訴訟などの可能性について、弁護士にも相談してみましょう」
(オトナンサー編集部)
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