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医療ドラマに転換期? ドラマ多様化の裏で影をひそめるワケ

2022年4月期、ミステリー、サスペンス、ラブストーリー、コメディー、青春群像劇とさまざまなジャンルのドラマがラインナップされましたが、「医療ドラマ」が見当たらないという現象が発生しました。これまで各局がこぞって制作し、“視聴率、確実”といわれてきた「医療ドラマ」が減少したワケを考察してみます。

医療ドラマに転換期?
医療ドラマに転換期?

 木村拓哉さん、二宮和也さん、綾瀬はるかさん、上野樹里さんら豪華俳優陣が主演を務める2022年春ドラマも続々と最終章に差しかかっています。果たしてどの作品が熾烈(しれつ)な視聴率争いを制するのか、気になっている方も多いでしょう。

 今期はミステリー、サスペンス、ラブストーリー、コメディー、青春群像劇とさまざまなジャンルのドラマがラインナップされました。一方、これまで各局がこぞって制作してきた「医療ドラマ」がどこにも見当たらないのです。今回は、その理由を考察してみます。

「世帯視聴率」から「個人視聴率」の時代へ

 理由の一つとして挙げられるのが、視聴率測定方法の変化です。これまで「視聴率」といえば、一般的に「世帯視聴率(全世帯のうち、どのくらいの世帯が番組を視聴していたか)」を示していました。しかし、ライフスタイルの変化に伴い、リアルタイムで、さらに家族で同じテレビを見るという機会はめっきり少なくなってきています。

 そのため、テレビ視聴率データを提供する調査機関・ビデオリサーチ社は2020年3月30日に新視聴率調査を開始。何人が番組を視聴していたかを示す「個人視聴率」の公表と、番組がオンエアから7日間以内にどのくらい録画再生されたかを示す「タイムシフト視聴率」調査の全国展開が始まり、それらが各番組の人気度を測る新たな指標となりました。

 かつて、医療ものは「確実に数字が取れる」とされ、民放ドラマが2つのジャンルで埋まっていた時期もありました。たしかに全面的にドラマの視聴率が低迷し始めた2010年以降も、「ドクターX ~外科医・大門未知子~」(第2シーズン/テレビ朝日系)、「JIN-仁-」(TBS系)などが、いずれも平均視聴率20%越えを記録しています。近年でいえば、医者やナースではなく“放射線技師”に焦点を当てた「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ系)も第1シリーズが好調な視聴率を獲得し、現在劇場版も公開中です。

 日本の少子高齢化と、YouTubeや動画配信サービスの台頭で若者のテレビ離れが加速し始めた2010年代。主にテレビを見ているのは中年層から高齢層で、その人たちに受けがよく、数字の取れるドラマが医療ものだったといえます。

 しかし、それはあくまでも「世帯視聴率」が重視されていた時代。「個人視聴率」「タイムシフト視聴率」の導入で視聴者の性別や年齢層も明らかになりました。

 民放各局は、「個人視聴率」の公表開始に伴って、より幅広い世代の視聴者獲得に乗り出し、医療ドラマの一辺倒で食傷気味だった視聴者に向けて、幅広い世代に受ける多様な作品を提供するようになったように見受けられます。

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コメント

1件のコメント

  1. 医療ドラマ作製に協力してくれる病院や関係者がコロナ禍で難しいのが大きいんじゃないの?