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「雑種犬」はミックス犬とどう違う? 特徴や飼い方のコツは? 獣医師が解説

コロナ禍で新たに犬を飼い始める人が増えていますが、純血種の犬だけでなく「ミックス犬」も人気があるようです。「ミックス犬」と「雑種犬」はどう違うのでしょうか。

ミックス犬と雑種犬の違いは?
ミックス犬と雑種犬の違いは?

 コロナ禍で新たに犬を飼い始める人が増えていますが、純血種の犬だけでなく、「ミックス犬」も人気があるようです。犬には「雑種犬」もいますが「ミックス犬」とはどう違うのでしょうか。雑種犬の特徴や飼い方のポイントについて、獣医師の増田国充さんに聞きました。

厳密には大きな差なし

Q.そもそも、犬の「雑種」とは、どのような犬のことでしょうか。

増田さん「雑種とは、複数の異なる犬種から交配された犬のことを指します。定義上、同一の純血の犬種によって交配された子犬でないものは雑種とされます。一般社団法人ペットフード協会による『2020年全国犬猫飼育実態調査』によると、犬の場合は純血種の占める割合が8割以上を占めており、雑種の犬は少数派です」

Q.ミックス犬と雑種には、何らかの違いがあるのでしょうか。

増田さん「先述の通り、異なるルーツの犬種から生まれた子犬は雑種に該当するので、厳密にいえば、大きな差があるわけではありません。雑種のうち、異なる純血種から生まれた子犬をミックス犬と呼び分けていますが、彼らは双方の親の特徴を色濃く反映しているところがある、という点が特徴といえるかもしれません。

人間の場合も、父母の特徴をちょうど半分引き継ぐばかりでなく、父方、あるいは母方寄りの特徴がはっきり出ることもあります。例えば、チワワとダックスフントから交配された通称『チワックス』の場合であっても、チワワ寄り/ダックスフント寄りになることはよくあり、同腹の子犬であっても、父母の特徴の出方が大いに異なる場合もあります。親の遺伝情報がどのように反映されるかは、個体によって差があるのです」

Q.一般的に、雑種の性格・気性や体質とは、どのようなものでしょうか。

増田さん「純血種はある基準に沿って、身体的特徴が維持されています。また、その犬種の用途によって、好ましい性格が選択されてきた経緯があります。従って、純血種によってある程度、気質が似通ってきます。もちろん、個々による差があることは否定できません。例えば、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは『非常に友好的であることが多い犬種』と紹介されることが多いように『この犬種は人懐っこいから飼いやすい』という目安とすることができます。

雑種の場合、ルーツが判明しづらいケースだと、どの程度の体格で、どんな体質なのかという基準が定まらない点があります。雑種であっても、異なる純血種から生まれたミックス犬の場合は、その親の特徴が反映されていることが多いので、おおよその推測を立てることができます」

Q.雑種の犬の詳細な犬種(血統など)を知る方法はありますか。

増田さん「異なる純血種同士のミックス犬の場合、その由来が表示されていることが多いので、その場で確認ができます。由来が全く不明な場合、DNAの解析によって、犬種のルーツをたどる方法があります。血統が不明な雑種の犬の場合、遺伝情報から、血縁の濃い犬種を類推することが可能といわれ、そこからかかりやすい疾患を探ることができるかもしれません」

Q.「雑種の犬は飼いにくい」というイメージを持っている人もいるようですが、実際にはどうなのでしょうか。

増田さん「雑種は飼いにくいと断定することはできません。純血犬の場合は遺伝的な気質が影響しますが、そうはいっても、飼い主さんのしつけやトレーニングによって、性格の形成に影響が出ますし、雑種の場合も同様と考えます。従って、純血か否かが飼いやすさを左右する指標になるのではなく、愛情を持って、きちんとしたしつけができるかどうかの方が重要性を持っていると考えます」

Q.雑種の犬を飼うときに注意すべきポイントとは。

増田さん「病気については、雑種だから特段の注意を払わなければいけないということはありません。純血種の場合、おおよその体のサイズやかかりやすい疾患の見当が付けられます。異なる純血同士のミックス犬の場合も、ある程度、予測が立てられます。ルーツがはっきりしない犬の場合、それらの予測がしづらい部分がありますが、それが即、飼いやすさに影響するような事態に発展するものでもないと思います。

雑種の場合でも、大型犬に近い子は子犬の時からそれなりの大きさであり、四肢の大きさなどからおおよそ成犬のサイズを推測することが可能です」

Q.「雑種の犬はかわいくない」などの心ない言葉をかけられ、嫌な思いをしている飼い主もいるようです。

増田さん「『純血種が一番』と考えている人がいるのは事実です。その要因の一つとして、かつて、ステータスとして、純血の犬を飼育することがあったのが影響しているのかもしれません。獣医学的に見れば、どちらも同一のイヌ科イヌ属で、分け隔てるものではありません。世界的にも多様性が注目されており、『個』として尊重される時代となっています。

犬種はいわば、身体的特徴を共通させた犬種標準といえる条件を満たしたものといえます。それらに属さない独自の個性を持っているのが『雑種』と表現できます。このような時代だからこそ、雑種の個性がより光るといえるのかもしれません」

(オトナンサー編集部)

【写真】個性が光る? さまざまな雑種犬

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増田国充(ますだ・くにみつ)

獣医師

北里大学卒業。愛知、静岡県内で勤務後、2007年にますだ動物クリニックを開院。一般診療のほか、専門診療科として鍼灸や漢方をはじめとした東洋医療を行っている。国際中獣医学院日本校事務局長兼中国本校認定講師、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員、日本ペット中医学研究会学術委員、AHIOアニマルハーブボール国際協会顧問、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師。ますだ動物クリニック(http://www.masuda-ac.jp)。

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