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【疑問】水なしで「薬」服用、かえって体に悪影響? 薬剤師が説く“3つのリスク”

水なしで薬を服用すると、体にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。薬剤師に聞きました。

水なしで薬を飲むリスクは?(画像はイメージ)
水なしで薬を飲むリスクは?(画像はイメージ)

 処方薬や市販薬を服用する際は、水と一緒に服用するケースがほとんどです。ただ、外出先で薬を飲まなければならないときに手元に水がなく、水なしで薬を飲んでいいか迷ったことがある人は多いと思います。SNS上では「面倒なので水なしで薬を飲む」「薬だけ持ってきて水忘れたんだけど、水なしで薬って飲める?」などの声が上がっています。

 もしも水なしで薬を飲んだ場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。水の代わりにお湯で薬を飲んでもよいのかや、水なしで飲める薬と飲めない薬の違いなどについて、薬剤師の真部眞澄さんに聞きました。

薬の吸収率が低下

Q.薬の服用時に水と一緒に飲まずに薬だけ飲み込んだ場合、体にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。例えば、薬の効果が減少する可能性はあるのでしょうか。

真部さん「大半の薬は180~200ミリリットルの水(コップ1杯分)、またはぬるま湯で飲むように設計されていますが、もし水なしで薬を飲んでしまうと、主に3つのリスクが考えられます。

1つ目は、薬が食道をスムーズに通過せず、粘膜に張り付くリスクです。粘膜で溶け出して炎症や潰瘍を起こすリスクがあるため、大きい錠剤やカプセル剤の場合は注意が必要です。骨粗しょう症の薬や一部の抗生物質、鉄剤などが代表的で、特に骨粗しょう症の薬は服用後、30分は横になってはいけないという決まりがあるくらいです。

2つ目のリスクは、薬の吸収率低下です。同時に水分を取らないと薬の溶け方が不十分となり、期待通りの効果が得られない可能性があります。

3つ目は、窒息や誤嚥(ごえん)のリスクです。喉に詰まらせたり、誤って気管に入ったりする可能性があり、特に高齢者や嚥下(えんげ)機能が低下している人だけでなく、子どもでも注意が必要です。

想定通りの薬効を得るために、水が必要な薬を水なしで飲むことは避け、必ず服用方法を守ってください」

Q.水ではなく、お湯と一緒に薬を飲んでも問題はないのでしょうか。それとも、避けた方がよいのでしょうか。理由も含めて、教えてください。

真部さん「30度から40度程度のぬるま湯なら問題ありませんが、50度以上の熱過ぎるお湯は避けた方がいいでしょう。消化酵素製剤、タンパク質系の薬などは熱で分解されて効果が落ちてしまう可能性があるためです。また、カプセル剤にゼラチンが使われている場合、50度以上のお湯では溶けてしまい、喉に張り付いてしまうリスクもあります。

さらに、熱過ぎるお湯では必要量の水分を一気に飲み込めず、水分量不足による吸収率低下を招く場合もあります。

ただし、吸収の遅れを発生させてしまう可能性もあることから、冷た過ぎる水も避けたいところなので、20度から40度程度の適温での服用が望ましいでしょう」

Q.一部ですが水なしで飲める薬もあるようです。水なしで薬が飲めるのはなぜなのでしょうか。

真部さん「水なしまたは少量の水で飲める薬は、唾液で溶かす設計になっているものが多いです。水なしまたは少量の水で飲める薬として、次の4つの薬があります」

(1)口腔(こうくう)内崩壊錠(OD錠)
口腔内崩壊錠は口の中で唾液によって崩れることで、10秒以内に飲み込めるように設計されています。口の中で溶けるという点でラムネ菓子に似ていますが、かまずに溶かしてください。かんでしまうと歯に挟まってしまったり、口内を刺激したりする可能性があるからです。薬の効果には特に違いはありません。

薬がうまく飲み込めず、効果が不十分になりそうな高齢者にはできるだけこのOD錠を出すという方針の医師もいるようです。

また、薬に慣れていない子どもにもOD錠が出される場合があります。学校など家庭外で薬を飲まなくてはならないときに、口に入れるだけで服用できる手軽さのためですね。必要ならOD錠は水で飲んでも構わない薬です。

(2)舌下錠
舌下錠とは名前の通り、舌の下で溶かすことで粘膜から吸収される薬です。即効性が求められるケースで処方される頓服薬に特に多い形式ですね。例えば狭心症の発作に使われるニトログリセリンなどは、ゆっくり水で飲んでいると間に合わないので、舌下錠がよく利用されます。一部かみ砕いてから水で流し込む薬もあります。

(3)チュアブル錠
チュアブル錠はOD錠とは異なり、かみ砕いて服用する薬ですが、メリットはOD錠と同様です。水なしで飲め、子どもも比較的抵抗なく服用できるかもしれません。

(4)口腔粘膜貼付剤
口腔粘膜貼付剤は、口内炎の薬などに使われる薬です。口内の患部に直接作用することを狙った薬なので、飲み込んではいけないタイプです。

これらの薬種は原則として水なしで服用すべきですが、それとは別に、腎不全などで水分量に制限のある人の場合は、服用に関して医師の指示に従ってほしいと思います。

(オトナンサー編集部)

【要注意】「えっ…!」 これが水なしで「薬」を飲んだときに生じる“リスク”です

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真部眞澄(まなべ・ますみ)

薬剤師

東京薬科大学を卒業後、日商岩井(現・双日)に勤務。結婚、出産後、調剤薬局に23年間勤務をしながら「お薬だけに依存させない薬剤師」として活動中。現在お薬を飲み始めた40代・50代の女性に、薬だけに頼らない改善策をアドバイスしている。薬を勧めるはずの薬剤師が薬だけに依存させないことを目指すのは、多くの患者の10年後、20年後の薬の量が2倍、3倍になるのを見てきたから。初期に「より踏み込んで改善策を伝えていたら減薬や維持ができたのでは」と後悔し、これを目指すきっかけとなった。公式ホームページ(https://m-inflore.com/)。

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