頭痛に悩まされ、市販「頭痛薬」多用すると症状悪化!? 薬剤師が教える“3つのリスク”
日頃から頭痛に悩まされる場合、市販の頭痛薬を多用しても問題はないのでしょうか。薬剤師に聞きました。

日頃から頭痛に悩まされている人の中には、市販の頭痛薬を常備している人も多いと思います。SNS上では「頭痛薬を常用してしまう時期がある」「気圧頭痛を起こすようになった。頭痛薬を手放せない」という内容の声が上がっています。
こうした市販の頭痛薬を多用したり、長期にわたって使用したりするなどした場合、健康上どのような影響があるのでしょうか。もし頭痛が慢性化している場合、どのように対処したらよいのでしょうか。頭痛薬を多用するリスクや医療機関の受診目安などについて、薬剤師の真部眞澄さんに聞きました。
市販薬が効かない頭痛も
Q.そもそも、頭痛薬にはどのような効果があるのでしょうか。
真部さん「頭痛には、くも膜下出血などが原因で引き起こされる『緊急を要する』頭痛と、『そこまで緊急を要さない』頭痛があります。緊急を要さない頭痛は、主に次の3種類に分けられます」
(1)片頭痛
1つ目はズキズキとした痛みが特徴の「片頭痛」です。脳の血管の拡張と三叉(さんさ)神経の炎症が引き起こすもので、頭痛以外に吐き気を伴ったり、光や音に敏感になったりといった症状がみられます。原因としては、ホルモン・女性ホルモンの変動(生理の前後など)、寝不足、ストレスなどが挙げられます。また急激な気圧変化や気温変化が原因の場合もあり、そういったケースでは「気象頭痛」と呼ばれることもあります。
(2)緊張型頭痛
2つ目は痛みが後頭部からこめかみまで広がる「緊張型頭痛」です。肩凝りや首凝りなど筋肉の緊張からくる頭痛で、慢性的に続くこともあります。近年では長時間のパソコン作業や眼精疲労が原因になるケースもあるようです。
(3)群発頭痛
3つ目が目の奥にえぐられるような激痛が起きる「群発頭痛」です。アルコールで誘発されるとされており、男性に比較的多くみられる傾向があるのですが、確かな原因は特定されていません。1年のうち数カ月、ほぼ毎日同じ時間に頭痛が起き、その期間が終わるとピタッとやむという特徴があります。
Q.片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛のうち、市販の頭痛薬が効く頭痛はありますか。
真部さん「片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛のうち、市販薬が効くのは緊張型頭痛のほか、軽い片頭痛です。普及している市販薬の成分としては、『イブプロフェン』『ロキソプロフェン』『アセトアミノフェン』の3つが挙げられます。
イブプロフェンとロキソプロフェンは『非ステロイド性抗炎症薬』という分類の薬で、処方薬から市販薬に移行したことから『スイッチOTC』とも呼ばれます。炎症や痛みを抑える作用、解熱作用がありますが、胃に多少の負担がかかる点に注意が必要です。
アセトアミノフェンは、中枢神経に作用し痛みを和らげます。解熱作用もあり、胃にもやさしい設計です。いずれも頭痛の原因物質の一つである『プロスタグランジン』の生成を抑えることで、痛みを和らげる効果があります。
一方、市販薬の効かない片頭痛、群発頭痛に対しては、主に3系統の処方薬があります。1つ目が『イミグラン』『マクサルト』などの『トリプタン系』です。脳の血管が拡張することで痛みが起こる片頭痛に対して、血管を収縮させることで痛みを和らげます。トリプタン系のほか、エルゴタミンもこの血管収縮作用があります。トリプタン系は群発頭痛にも使われます。
2つ目は『デパケン』『ミグシス』などの『抗てんかん薬』や『β遮断薬』です。これは頻繁に起こる片頭痛の予防薬として使われます。現在は予防薬として注射剤もあります。群発頭痛の予防には『ベラパミル』などが使われます。
そして、3つ目が『エペリゾン』『テルネリン』『エチゾラム』といった『筋弛緩(しかん)薬』や『抗不安薬』です。緊張型頭痛、肩凝り、首凝りを伴う頭痛を和らげる作用があります」
Q.日頃から頭痛に悩まされる人が市販の頭痛薬をよく使うことがありますが、問題はないのでしょうか。それとも、健康上のリスクを引き起こす可能性があるのでしょうか。
真部さん「市販の頭痛薬の多用や常用、長期の使用は避けていただきたいです。理由としては、次の3つが挙げられます」
(1)薬物乱用頭痛
市販の頭痛薬を常用すると、かえって頭痛が悪化する「薬物乱用頭痛」になりやすいです。市販の頭痛薬にはカフェインや鎮静剤など、さまざまな成分を含むものがあり、乱用は症状悪化の原因になり得ます。
また、頭痛薬を長期間服用していると痛みを感じる閾値(いきち)が下がり、少しの痛みでも薬を飲まないといられなくなり、薬を増量してしまう危険もあります。そして、増量した状態から薬を飲むのをやめると、さらなる頭痛の悪化や吐き気、不眠、イライラといった離脱症状が起こります。こうなると頭痛外来、脳神経内科を受診しなくてはなりません。
1カ月に10~15日以上の服用が数カ月続くと乱用と呼べる状態なので、注意が必要です。頭痛を予測して予防的に飲むような服用法も、痛みが誤認され乱用の原因となるため避けてください。
(2)胃腸障害を引き起こす、腎機能・肝機能への悪影響
非ステロイド性抗炎症薬は、胃痛や胃潰瘍といった胃腸障害や腎機能低下を、アセトアミノフェンは肝機能障害をそれぞれ引き起こす可能性があるので、連用は避けてください。
(3)頭痛のタイプを見誤ってしまう可能性
他の疾患による頭痛であっても、市販薬で一時的に痛みが和らぐため、根本原因の発見と治療を遅らせてしまいます。
そもそも市販の頭痛薬では治せない頭痛として、「カフェイン離脱性頭痛」という疾患もあります。コーヒーやエナジードリンクを頻繁に飲む人は、飲むのをやめた途端に離脱性の頭痛が起こる可能性があります。市販薬が効かないのに、コーヒーやエナジードリンクを取ると頭痛が和らぐという場合は、カフェイン中毒に陥っている恐れがあるため、市販薬の服用、コーヒーやエナジードリンクの飲用を控えて専門医に相談してください。





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