「食べ放題」「飲み放題」の飲食物、勝手に持ち帰った客は法的責任問われる?
飲食店の「食べ放題」「飲み放題」サービスを利用した際、客が店の許可なく飲食物を勝手に持ち帰った場合、法的責任を問われるのでしょうか。
新型コロナウイルスの新規感染者数が大幅に減ったことで、東京都や大阪府などで出されていた飲食店への営業時間短縮の要請が10月25日、ほぼ全面的に解除されました。久しぶりに「食べ放題」「飲み放題」の店に行こうと思っている人もいるのではないでしょうか。これらのサービスを実施する店は人気がありますが、客の中には、食べ・飲み放題で提供される飲食物を勝手に容器に入れて、持ち帰る人もいるようです。
飲食店の食べ放題、飲み放題サービスの利用時、客が店の許可なく勝手に飲食物を持ち帰った場合、法的責任を問われるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
持ち帰りを想定せず
Q.飲食店の中には「中華食べ放題」「ケーキ食べ放題」「アルコール飲み放題」などを実施する店もあります。食べ放題、飲み放題サービスで提供される飲食物を、持ち込んだ容器に入れて、勝手に持ち帰った場合、法的責任を問われるのでしょうか。
佐藤さん「食べ放題、飲み放題サービスで提供される飲食物を勝手に持ち帰った場合、窃盗罪(刑法235条)に問われる可能性があります。窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。一般的に、食べ放題や飲み放題のサービスは、店内で決められた時間内に限り、定額で好きなだけ飲食できるというものです。そのため、店側は持ち帰りを想定しておらず、店の同意なく持ち帰ることは店の意思に反する行為であり、窃盗罪が成立すると考えられます」
Q.飲食店側が「飲食物の持ち帰りを禁止する」などと事前に客にルールを伝えていなかった場合であっても、客が勝手に持ち帰れば、窃盗罪に問われる可能性があるのでしょうか。
佐藤さん「事前に店がルールを伝えていたかどうかにかかわらず、客が勝手に飲食物を持ち帰れば、その時点で窃盗罪に問われる可能性があります。なぜなら、先述のように、食べ放題や飲み放題というサービスそのものが持ち帰りを想定していないものと考えられるからです。店側は通常、『一般的な大人なら、この時間内にこれくらい食べることができるだろう』『子どもの場合はこれくらいだろう』などと、時間内で客の食べる量を想定しながら、価格設定をしています。
そのため、持ち帰り禁止のルールを明示していなかったとしても、常識的に持ち帰りは許されないと考えられ、店に無断で飲食物を持ち出せば、窃盗罪に問われる可能性があるといえます。持ち帰り禁止のルールを事前に客に伝えていた場合、それにもかかわらず、飲食物を持ち帰れば、明らかに店の意思に反した持ち出しなので、より悪質性が高まるでしょう」
Q.食べ放題や飲み放題のサービスで提供される食べ物や飲み物を持ち帰って、食中毒が発生した場合、誰の責任になるのでしょうか。飲食店側が持ち帰りを許可していた場合と許可していなかった場合とで教えてください。
佐藤さん「農林水産省などが公表する、飲食店の食べ残し対策に関する資料(飲食店等における『食べ残し』対策に取り組むに当たっての留意事項)によると、食べ残しの持ち帰りは原則として、自己責任となります。そのため、飲食店側が事前に持ち帰りを許可していたかどうかにかかわらず、食中毒のリスクは持ち帰った本人が負うのが原則です。
食品ロスを減らすため、さまざまな食べ残し対策が検討されています。消費者としてはまず、食べ放題や飲み放題であっても、その場で飲食できる量だけを注文するようにしましょう。また、店側の許可を得て、食べ残しを持ち帰る際は衛生面に注意し、少しでも見た目やにおいに異変があれば、処分する必要があります。店側も持ち帰りを認める場合は、安全に飲食できるよう、衛生面の注意点を事前に説明することが大切でしょう」
Q.飲食店での食べ放題や飲み放題サービスの利用時、客が勝手に飲食物を持ち帰った事例について教えてください。
佐藤さん「食べ放題サービスを実施する兵庫県内の飲食店で2013年、ピザやケーキなど計5キログラム超の食べ物を店に無断で袋に詰めて持ち帰ろうとしたとして、兵庫県の職員が停職3カ月の懲戒処分を受けた事例があります。この飲食店では、食べ物を持ち帰る場合、1グラム当たり1円を支払うというルールがあり、店員に見つかった職員は代金を支払いました。そのため、逮捕には至らなかったということです。
刑事責任を負わなくても、このように勤務先で処分を受けることもあり得ます。食べ放題や飲み放題はルールを守り、楽しむことが大切です」
(オトナンサー編集部)
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