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地元で堅実経営? 「ローカル飲食チェーン」が東京に進出しない理由とは

今、「ローカル飲食チェーン」が注目されていますが、東京に進出できる力があるのに、地元で堅実に経営を続けるケースもあります。なぜ、東京進出をしないのでしょうか。

関西ではおなじみの「551HORAI」(2013年12月、時事)
関西ではおなじみの「551HORAI」(2013年12月、時事)

 地方で名前が売れたお笑い芸人は全国区の芸人になるため、東京進出を目指すことが多いですが、飲食チェーンでも“全国区を目指して東京へ”という傾向は少なからずあると思います。一方、例えば、豚まんでおなじみの「551HORAI」のように、関西では認知度も人気も高く、飛躍のために他の地域へ進出してもおかしくない飲食チェーンが地元で堅実に経営を続けるケースもあります。

 こうしたご当地限定の「ローカル飲食チェーン」が東京進出をしない理由は何でしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

東京進出は「ハイリスク・ハイリターン」

Q.そもそも、なぜ最近、ご当地限定のローカル飲食チェーンが注目されているのですか。

成田さん「地元の食材などを使った、東京にはない独自性のあるメニューがあること、料理の分量や、貴重な材料を使っている割には安価で提供されるコストパフォーマンスのよさが、多くの人に知られるようになったからです。その背景として、SNSの普及と、それらのチェーンがマスメディアに登場する機会が増えたことが挙げられます。

観光などで訪れた地方の飲食店やその店の料理を撮影して、SNSに投稿する人が増え、テレビや雑誌などのマスメディアも番組や記事のネタ探しとして、SNSで検索するのが当たり前となり、地方の飲食店や料理が紹介されることが増えています。こうした番組や記事を見た人がその内容をSNSに投稿し、さらに拡散するという好循環が生まれ、ローカル飲食チェーンやローカルフードのことが多くの人に知られることとなり、最近、注目されているのです」

Q.以前は、ご当地限定のローカル飲食チェーンが東京に進出することも多かったのですか。多かった場合、例えば、どのような飲食チェーンが該当しますか。

成田さん「以前は東京に進出することも多かったです。マーケットが大きな東京に進出することは、会社が飛躍的に成長する岐路になるからです。1970~80年代の東京は現在よりも飲食店数が少なかったため、進出しやすかったといえるでしょう。しかし、現在の東京は飲食店数が飽和状態に近いので競争も激しく、リスクもかなり大きいです。

東京に進出し、全国区へと飛躍した飲食チェーンといえば、喫茶店文化が根付いている名古屋から東京に進出した『カレーハウスCoCo壱番屋』『珈琲(コーヒー)所コメダ珈琲店』が有名です。全国や海外に展開する『カレーハウスCoCo壱番屋』は、創業者が名古屋の喫茶店で出していた手作りカレーがルーツで、『コメダ珈琲店』も、創業者が始めた名古屋の喫茶店がルーツで、名前の由来は創業者の実家が名古屋の老舗米穀店であったことから、店名に『コメダ』と命名しています」

Q.中には、成功を収めても東京に進出することなく、地元で堅実に経営するご当地限定のローカル飲食チェーンもあります。なぜ、東京進出をしないのでしょうか。

成田さん「まず、東京はマーケットが大きく魅力的ですが、一方で、他社との競争も激しく、“ハイリスク・ハイリターン”だからです。さらに、ローカル発祥の飲食店は地元に根付いている食文化や慣習、地産地消などを名物にしている店も多く、東京や全国区でそれらが通用するか分からないからです。

ほかにも、原材料の確保が難しかったり、物流コストがかかったりする現実的な問題や、その地域に貢献したいという創業者の思いなど、各ローカル飲食チェーンで、東京進出をしないさまざまな要因があります」

Q.東京に進出しないからこそ、多くの人がすぐには食べられないということでブランド価値が高まるという、ローカル飲食チェーンの戦略があるのでしょうか。

成田さん「旅行などで訪れた際、その旅先のローカル飲食チェーンのお店を訪れたり、地元の名物料理を食べたりすることはあると思います。そして、来店客を増やすために、その地域限定でしか食べられない環境をつくり、ブランド価値を高めるという戦略はあります。

こうした戦略は地方の大きな観光資源をつくるために欠かせませんが、この戦略のために、ローカル飲食チェーンが東京進出をしないとは思いません。むしろ、先述したような、競争の激化や創業者の思いなどさまざまな要因で、東京進出をあえてしないのではないでしょうか」

Q.東京でよく見かける飲食チェーンにはない、ローカル飲食チェーン独自の魅力とは何でしょうか。

成田さん「ローカル飲食チェーンはその土地の食材や風習、地元の人々とのつながり、地元愛などがあって成り立っています。ローカル飲食チェーンでは、その土地の人の温かさや地元愛に触れられることも大きな魅力です」

(オトナンサー編集部)

成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

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