集中力低下の原因に…食後の眠気を和らげる「ランチ」メニューとは?
ランチの後、午後の仕事中に強い眠気に襲われた経験はありませんか。午後の眠気を和らげるランチメニューを管理栄養士に聞きました。
新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、出勤の機会が増えてきた人も多いと思いますが、昼休みにランチを食べた後、午後の仕事が始まって、すぐに強い眠気が襲ってくる…といった経験があるビジネスパーソンも多いことでしょう。
昼休み後の眠気によって集中力が落ちると、午後からの仕事のパフォーマンスが低下してしまうこともあるため、ネット上では「ランチ後は眠くてたまらないからなんとかしたい」「おなかいっぱい食べても眠くならない方法ある?」など、眠くなりにくいランチの食べ方に関心を持つ人が多いようです。
午後の眠気を和らげるランチメニューの選び方について、管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
そばやタンメン、具だくさんパスタがおすすめ
Q.そもそも、なぜ、食後(ランチ後)に眠くなってしまうのでしょうか。
岸さん「食事と眠気には大きなつながりがあり、覚醒と睡眠に関わる脳内物質『オレキシン』による影響と『血糖値を上げやすい食事』による影響が考えられています。まず、オレキシンが脳内に多く存在すると覚醒を維持し、減少すると眠くなります。空腹時に血糖値が低くなるとオレキシンの分泌が活発化し、反対に、食事をして血糖値が上昇すると分泌が止まり、眠気を感じることが分かっています。
一方、血糖値を上げやすい食事をすると、急激な血糖値上昇に併せ、インスリンの作用で血糖値が急降下します。その際、軽い低血糖状態に陥り、眠気や脱力感などを引き起こします。オレキシンと血糖値は相関関係にあり、血糖値の上昇が激しいほど、オレキシンの分泌に影響し、眠くなりやすいです。食後の眠気はこの両者が原因で起きると思われます」
Q.栄養の観点からみて、お昼に食べると午後に眠気を感じやすくなる料理・食べ物・食材はありますか。
岸さん「先述の通り、血糖値が急激に上がりやすい食べ物を摂取すると眠気を感じやすくなります。具体的には、糖質が高く、さらに吸収が早い食べ物です。それを数値化した『GI値(グリセミック・インデックス)』という指標があります。高GI食品は精製された砂糖や小麦粉、米、ジャガイモ、また、それらを加工した食品などです。お昼によく食べるものとしては、うどん、パスタ、ラーメン、天丼、カツ丼、カレーライス、サンドイッチ、おにぎりなど、炭水化物が中心となる食べ物です」
Q.逆に、お昼に食べても眠気を感じにくい料理・食べ物・食材はありますか。
岸さん「高GIに対して、低GIのものは眠くなりにくいです。食材では、肉や魚、大豆、卵は低GI食品で、タンパク質や脂質は血糖値には影響しません。野菜は基本的に低GIですが、ニンジンやジャガイモはGI値が高いので、食べ過ぎには注意が必要です。
料理の中では、麺類なら、そば、あるいは野菜が豊富に取れるタンメン、同様に野菜やタンパク質の具が多いパスタがおすすめです。コンビニの軽食で、おにぎりやサンドイッチを選ぶ際は海藻サラダや豆腐を追加しましょう。丼ものは味付けに砂糖が使われているものが多く、どれもGI値は高くなりますが、牛丼、豚丼、親子丼あたりをセレクトし、野菜や豆腐などを1品追加するとよいでしょう。
ご飯は玄米が最も低GIです。パンなら、ライ麦パンや全粒粉パンを選択すると、食パンよりもぐっとGI値が低くなります。定食は野菜中心のものか、肉・魚のグリルで副菜に野菜がたっぷり取れるものを選ぶとよいでしょう。あるいは、好きなメニューを選ぶ代わりに野菜や海藻、大豆製品をプラスし、ご飯や麺などの炭水化物を少し減らすという食べ方も効果的です。近年よく聞かれる『糖質オフメニュー』も眠くなりにくいメニューと考えてよいでしょう」
Q.眠気を感じにくくなる食べ方の工夫はありますか。
岸さん「食事の際、食物繊維の多いものから食べると、血糖値の上昇を緩やかにできます。酢をかけたり、大豆製品や乳製品を合わせて取ったりするのも効果的で、おかずやスープに酢をかけるのもおすすめです。血糖値の変動を緩やかにする『特定保健用食品(トクホ)』の飲み物を合わせたり、粉末タイプの食物繊維をお好みの飲み物に入れて、食事と一緒に取ったりするのも一つの案です。くれぐれも補助と考えて、食事のバランスや食材の選び方を重視しましょう。
また、オレキシンの低下を防ぐ食べ方にも注目です。オレキシンは、食べる意欲やおいしさを感じることで味覚への刺激となり、活発化することが分かっています。メニューの選び方に注意を払った後は大いに食事を楽しみ、おいしく食べることが食後の眠気対策にも役立ちます」
(オトナンサー編集部)
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