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悩む声多数 「尿漏れ」の原因・治療・予防法 改善方法はある? 医師が解説

くしゃみやせきをした瞬間など、腹部に圧力がかかる場面で「尿漏れ」をする人がいます。原因や治療法について、医師に聞きました。

「尿漏れ」の予防法は?
「尿漏れ」の予防法は?

 朝晩涼しくなる季節、「尿漏れ」が気になる人も増えてくるようです。くしゃみやせきをした瞬間など、腹部に圧力がかかる場面で尿漏れを覚える人が多く、ネット上では「尿漏れが嫌で、水分取るのを控えています」「パッドが欠かせない」「薄い色のズボンがはけない」「40代に入ってひどくなった」「恥ずかしくて病院に行きにくい」など、さまざまな声が上がっています。尿漏れの原因や治療法について、医師の尾西芳子さんに聞きました。

腹圧性、切迫性、機能性など

Q.そもそも、尿漏れとは何でしょうか。

尾西さん「尿漏れ(尿失禁)は自分の意思とは関係なく、尿が漏れ出てしまう症状です。尿失禁は原因や症状によって、いくつかの種類に分類されます。代表的なものは以下の通りで、性別によって、原因や症状が異なる場合があります。

腹圧性尿失禁:くしゃみやせきなど、おなかに力が入ったときに尿が漏れてしまう
切迫性尿失禁:急に尿意を催し、その瞬間に漏れてしまう
溢流(いつりゅう)性尿失禁:自分で尿を出したいときには出ないのに、意図せず、少しずつ漏れてしまう
機能性尿失禁:排尿機能には異常がないけれども、歩行障害や認知症で、きちんとトイレで排尿できない

なお、寒くなると、ぼうこうの筋肉が収縮することや、あまり汗をかかないために体内の余分な水分量が増えることなどから、尿量が増えたり、尿漏れが起きやすくなったりします」

Q.性別による違いとは。

尾西さん「腹圧性尿失禁は圧倒的に女性に多く、2000万人以上(女性の4割)が悩んでいるといわれています。加齢や出産で、骨盤の底の筋肉が緩んで発症します。切迫性尿失禁は、女性の場合は加齢や出産によって骨盤底の筋肉が緩んで、ぼうこうや子宮が下がる骨盤臓器脱などが原因になりますが、男性の場合は前立線肥大症が原因となります。

切迫性尿失禁は男女ともに、脳血管障害などによって脳からの指令がうまく出なくなったときに起こる場合があります。溢流性尿失禁は男性に多く、前立線肥大による影響が大きいと考えられます」

Q.尿漏れを起こしやすい人の特徴を教えてください。

尾西さん「加齢による原因が大きいですが、若い人でもダイエットで骨盤底の筋肉が弱くなったり、逆に、太りすぎで骨盤底に負担がかかったりすると、尿漏れを起こしやすくなります。また、マッサージ師など腹圧のかかる仕事をしている人に発症しやすいのが特徴です」

Q.尿漏れの治療法とは。

尾西さん「どのタイプの尿失禁かによって、治療法は異なります。まずは泌尿器科に相談するとよいでしょう。女性の場合は、かかりつけの産婦人科医に相談するのもおすすめです。腹圧性尿失禁の場合、骨盤の底の筋肉を強くするために骨盤底筋運動を行います。軽い失禁であれば1カ月ほどでよくなります。改善がみられない場合は、漢方薬や手術などの治療へ進んでいきます。

切迫性尿失禁の場合は内服薬と骨盤底筋運動のほか、少し尿意を我慢する訓練などを行います。子宮が下がっているなど、骨盤臓器脱の症状のあるときは産婦人科を受診してください。尿漏れは、恥ずかしがって、受診をためらってしまう人が少なくありません。脳や婦人科系の病気が隠れている場合もあるので、早期の治療開始が肝心です」

Q.尿漏れを改善するために、日常生活において意識すべきことはありますか。

尾西さん「骨盤の底の筋肉を傷めないことが大切です。排便時に強くいきまないこと、重たい物をたくさん持たないことなどを意識してみましょう」

Q.尿漏れを予防する方法はありますか。

尾西さん「日頃から、骨盤底の筋肉を鍛える訓練を行いましょう。あおむけになり、両膝を立てます。足を軽く広げて、排尿や排便を我慢するような感じで10秒キープし、緩めるという体操を10回繰り返してください。1日1回でも効果は実証されていますが、2~3回できるとより効果的です。早ければ、2~3週間で効果が出るので頑張ってください」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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