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「前向きな離婚」とは何か 家事をしない俺さま夫と離婚、でもまだ好きな女性のケースは?

芸能人夫婦の離婚発表で注目された「前向きな離婚」という選択。離婚した夫婦が抱える事情はさまざまですが、当人たちの気持ちと周囲の捉え方に、ズレが生じるケースもあるようです。

「前向きな離婚」とは?
「前向きな離婚」とは?

 俳優の市村正親さんと女優の篠原涼子さん、そして、お笑いタレントの石橋貴明さんと女優の鈴木保奈美さん。“おしどり夫婦”といわれていた2組の夫婦が今年7月、相次いで離婚を発表しました。2組とも「前向きな離婚」であるという報道でした。

「前向きな離婚」とわざわざ言うのは、なぜなのか。何かを決断し、次のステージに進むという行為はどんなことであれ、前向きなのではないのでしょうか。とはいえ、子どもの気持ちや、「シングルマザーになると経済的に大変そう」など、離婚にはいまだ少なからずマイナスイメージがあるので、「前向きな」という言葉を追加しないと収まりがつかないのかもしれません。

 幾組もの“結婚地獄”にいる人たちと話してきた私は、離婚しようが仮面夫婦の道を選ぼうが、「本人が決断したなら全てOK!」という風潮になれば、もっと楽になる人が出てくると感じています。今回ご紹介する2組の元ご夫婦はいずれも不倫の事実などはなく、「お互いを尊重し、子どもたちの父母として良好な関係を続けていく」という報告をしてくださった人たちです。

周囲に理解されない、2人の前向きな気持ち

 理恵さん(48歳、仮名)は41歳のとき、14歳年下の剛志さん(34歳、同)と結婚しました。当時、剛志さんは理恵さんの部下。仕事ができ、エリート街道を進む理恵さんに憧れて猛烈なアプローチをし続け、その熱意に応える形で、理恵さんは結婚を決めました。当時、「私が結婚するとは思わなかったけど、彼は本当に私を分かってくれる。だから、周りから何と言われても気にしない」と、うれしそうに話してくれました。

 しかし、別れは7年後に訪れます。41歳になるまで自由気ままに自分のペースでやってきた理恵さんは、誰かと一緒に住むということに慣れることはありませんでした。それならばと、剛志さんは週末婚を提案しましたが、理恵さんは「結婚した夫婦は一緒に住むべきだし、それができない相手は夫とはいえない」という自身の考えから抜け出せなかったのです。

 加えて、理恵さんは、まだ若い剛志さんの夜の相手をするのがつらくなっていて、そのことを私に強く訴えていました。何度も、結婚生活を続けるか否かについて話し合ううちに、剛志さんは理恵さんに「憧れの上司=憧れの女性」という理想を押し付けて、苦しい思いをさせていたことに気付いたと言ってくれたそうです。そして、2人は「お互いを自由にして、自分も窮屈でなくなる」という理由で離婚を選びます。

 お互いの両親はもちろん、結婚式に来てくれたゲストにもあいさつに回りました。自分たちなりの誠意を尽くし、事情を説明しましたが、悲しいかな、理解してくれる人は少なく、「奔放な年下男に振り回された年上女」と陰口をたたかれることもあったようです。しかし、お互いを大切に思っている2人は「そのうち、みんな興味をなくすよね」と笑っています。もしかしたら、将来、2人はまた夫婦になっているかもしれません。

「前向きな離婚だ」と周りは言うけれど…

 紗英さん(38歳、仮名)は10年連れ添った夫と離婚しました。元夫は仕事はするものの、数年~数カ月単位で転職を繰り返し、いつも低収入でした。紗英さんは小さい子ども2人を育てながら、ファイナンシャルプランナーとして働き、家計を支えました。

 元夫は自分が低収入だということを悔しいと思う反動なのか、家では“大黒柱面”をして、家事を一切手伝いません。しかし、紗英さんは彼のことが好き。もともと、紗英さんが彼にぞっこんで、「結婚してほしい」と頼み込んで結婚したという間柄です。

 子どもたちに対してはとても優しい夫でしたが、紗英さんに対しては、友達がいる前でもあからさまにばかにするような態度を取っていました。そんな“俺さま”の雰囲気の彼に対して、紗英さんの家族も友人たちも、よい印象を持っていませんでした。

 彼が子どもの学資保険を解約して、自分の買い物に使い込んでいたことをきっかけに、紗英さんは離婚を決意。もちろん、使い込んだお金は返済を約束させます。友人たちは「前向きな離婚だ、よかった」と喜んでくれました。ところが…。

 お金にルーズ、稼ぐ力がない、“俺さま”態度がひどすぎるという理由を羅列して離婚を決意した紗英さんでしたが、彼のことがまだ好きなのです。今でも「子どものため」とかこつけて、元夫をしょっちゅう家に招いては一緒にご飯を食べたり、出掛けたりしています。最近では「借金返済のめどがついたら復縁したい」と周りに話すようにもなりました。

 しかし、元夫といえば、借金を返していることを盾に養育費も払わず、食費がなくなったら、紗英さん宅を訪れる、そんな生活を送っています。さあ、この離婚形態、皆さんはどう思われますか。「前向きな離婚」とは誰が決めるものなのか。自分たちがそう信じていても、周囲がそう信じてくれないこともある。逆に、周囲は「前向きな離婚だ」と評していても、当人たちはそう思っていないケースもある――。

 離婚に真実もうそもありません。そのとき、自分が「前向きだ」と信じたかったら、そう信じればよいのです。前だ後ろだと思い込むことなく、自分の気持ちに正直に過ごすことが快適なのだと思います。どんな決断をしたとしても、新しいステージに移るわけですから、「前向きな離婚」と言い切れば万事よしです。

 もし、「後ろ向き」だと感じるなら、「次の結婚で挽回する」と拳を握ればよいでしょう。その拳こそが前向きである証拠になります。もちろん、「1人で自由にタフに生きていくわ」の拳でも正解です。

(「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美)

三松真由美(みまつ・まゆみ)

恋人・夫婦仲相談所 所長(すずね所長)・執筆家

夫婦仲・恋仲に悩む女性会員1万3000名を集め、「結婚・再婚」を真剣に考えるコミュニティーを展開。セックスレス・ED・女性の性機能に詳しく、性を通して男女関係をよくするメソッドを考案。20代若者サークルも運営し、未婚世代への結婚アドバイスも好評を呼ぶ。恋愛・夫婦仲コメンテーターとしても活躍中。著書は「夫婦の『幸せ循環』を呼ぶ秘訣」(講談社)「モンスターワイフ」(同)「40歳からの女性ホルモンを操る53の習慣」(扶桑社)「堂々再婚」(wave出版)など多数。コミック「『君とはもうできない』と言われまして」(KADOKAWA)の監修も手掛ける。恋人・夫婦仲相談所(http://fufunaka.com/)、公式LINEアカウント(https://lin.ee/oTQa13s)、公式note(https://note.com/suzune_16)。

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