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各企業で内定式 コロナ禍の今、転職検討増 「新入社員」とどう信頼関係築く?

就活や転職、企業人事のさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

内定時期からできる「絆の深め方」とは?
内定時期からできる「絆の深め方」とは?

 10月1日は2022年卒業予定者への内定が正式解禁され、各地の企業で内定式が開かれる日ですが、長引くコロナ禍の影響によって、就職活動も新入社員研修もオンライン化を余儀なくされています。オンライン化は低ハードル化でもあり、個人にとって負荷が減り、よいこともたくさんありますが、一方でコミュニケーションのしづらさなどから、企業と個人の関係性、絆を強めるためには障害となっています。

 そのせいか、2020年4月に入社した社員を対象にした「元『キャリタス就活2020学生モニター』入社1年目社員のキャリア満足度調査」(ディスコ社)によれば、2021年2月時点で、44.2%の人が「転職活動中」、もしくは「検討中」と回答しました。実際に活動中の人は3.5%という結果なので杞憂(きゆう)かもしれませんが、それでも4割超の人が転職を考えるくらい、ミスマッチを感じているということです。

入社前からのケアが重要

 わずか1年でこのような状況になってしまうことを考えると、オンボーディング(新入社員の定着促進のための諸施策の総称)を入社後はもちろん、入社前の内定者時代にも行っておくべきだと思われます。

 以前なら、入社前は明るく、「学生時代にしかできないことをしておいてください。あとは入社してから会社がいろいろ用意しています」と言っておけばよかったでしょう。しかし、入社後もオンライン研修&テレワークで、新入社員との接点が全体的に減少している今、むしろ、まだ仕事をしていなくて、自由の利く入社前こそが新入社員との絆を深めるチャンスかもしれません。

 まずやるべきことは、今やっている内定者向けのイベントや研修の内容を「厚く」することでしょう。内定式や内定者懇親会などの内定者イベントを行う会社は多いと思いますが、その中身に今よりも絆を深めるための要素を入れるのです。

 例えば、内定者同士の相互理解を深めるために軽い自己紹介ではなく、自分のライフヒストリーを作成して紹介するなど、濃い自己紹介をしたり、配属のための各部署の説明も単なるレクチャー形式で一方的に行うのではなく、各部署の社員との接点をつくって、人間関係がつくれるようにしたりといったことです。

特に「人間関係の構築」を重視

 ここで重要なことは先述したように「人間関係の構築」です。というのも、新入社員は入社後にまず、「自分は会社に受け入れられている」という「受容感」を持つことで、組織に対する貢献意欲を持ち、その後、組織内ネットワークを広げていくことで、仕事に必要な情報を入手できるようになっていくからです。

 そして、その後、「この会社の一員として仕事をしていくことができる」という「有能感」を持つことで、ようやく、会社に定着していくわけです。最初の受容感がなければ、その後の有能感も持つことができません。ですから、専門的な仕事の情報以前に、内定者同士や先輩社員たちとの間で人間関係をつくっておくことが重要なのです。

内定者を採用活動に巻き込む

 これらに加えておすすめなのは内定者を採用活動に巻き込むことです。特に近年では「リファラル採用」(社員や内定者からの紹介による採用)が流行中ですが、まさにその活動に参加してもらうことが、内定者の帰属意識を高めることが分かっています。

 リファラル採用支援サービスを展開するMyRefer社の「リファラル採用に関する海外学術研究」によると、内定者や社員が自分の知人を自社に紹介するという行為は「組織市民行動」と呼ばれる、会社のためになる自発的な役割外行動であり、この組織市民行動を従業員が取るようになると会社のパフォーマンスが向上するとされています。

 知人を自社に紹介すれば、会社に対する責任感が高まる(逆に責任感が高まらないと紹介できない)ということでしょう。事例として、学習塾の成学社では、内定者期間で同期・会社・後輩とのつながりを深める“つなぐプロジェクト”を行い、2022年卒業予定内定者2人が代表となって、約50人の内定者研修を推進し、同期、会社(先輩)への理解を深めた上でリファラル採用に参加し、2023年卒業予定者採用にも寄与しているようです。

 筆者が以前、所属したリクルートでも毎年、内定者を巻き込んで採用活動を行っていました。自分が入るより後輩を紹介する方が、会社に対する責任感が必要なためか、採用に協力した内定者は積極的に自社の情報を入手して、結果として、会社のことをよく知り、愛着も湧いていったように思います。

 そして、会社と内定者の間に一定の信頼関係が築けたら、最後はRJP(Realistic Job Preview)を行います。RJPとはその言葉通り、よいことも悪いことも含めて、リアルな仕事や職場の情報を入社前に伝えることです。入社前の理想と入社後の現実とのギャップにショックを受ける「リアリティーショック」が早期退職の原因の一つだからです。

 これを避けるためにRJPは必須です。ただし、信頼関係があってこそ、悪いことも「それを自分が改善していこう」と思えるので実施のタイミングが重要です。新入社員への配属ガイダンスなどでRJPを行うのは、信頼関係がある程度できたタイミングがよいでしょう。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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