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「TOKYO MER」好調、賀来賢人がヒット作に巡り合う打率はなぜ高いのか

好調が続くTBS系連続ドラマ「TOKYO MER~走る緊急救命室~」に出演中の賀来賢人さん。「半沢直樹」「今日から俺は!!」など、近年、多くのヒット作へ起用される背景に筆者が迫ります。

賀来賢人さん(2020年1月、時事通信フォト)
賀来賢人さん(2020年1月、時事通信フォト)

 日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(TBS系)が好調です。この作品は東京都知事の肝いりで設立された救命救急チームの奮闘を描くもの。主人公の医師を演じるのは鈴木亮平さんですが、重要なキーパーソンを担っているのが賀来賢人さんです。

 その役は厚生労働省の官僚、かつ、医師でもある医系技官。当初はこのプロジェクトをつぶすために送り込まれたスパイ的なスタンスでしたが、チームと関わり合ううちにその存続を願うようになります。主人公とのバディー感も強まり、終盤での共闘ぶりが注目されるところです。

一つのイメージに固定されない俳優

 そんな賀来さんは昨年、日曜劇場で放送された「半沢直樹」(同)でも、堺雅人さん扮(ふん)する主人公と共闘する役どころを好演しました。また、ヒロインの兄を演じて出世作となったNHK連続テレビ小説「花子とアン」(2014年度前期)や、現時点での代表作というべき「今日から俺は!!」(日本テレビ系)など、ヒット作に巡り合う確率、いわば、作品をヒットさせる打率が実に高い印象です。

 その理由についてはまず、二面性を演じるのがうまいということが挙げられます。例えば、「TOKYO MER」の場合、圧倒的な善玉としての主人公とそれを邪魔する悪玉たちという構図のもと、「正義は勝つ」的な世界が展開されます。

 ただ、その構図だけでは単純すぎるため、善と悪との間で揺れる存在が必要になるわけです。賀来さんが演じるのはまさにそういう役であり、見事にハマっています。

 思えば、「花子とアン」での役も、家族思いの少年が憲兵になり、ヒロインとも対立してしまうというもの。かと思えば、「今日から俺は!!」でのヤンキー高校生の役は「どんな手を使っても勝てばいい」という卑怯さと、それでも憎まれない愛嬌(あいきょう)を併せ持つユニークなキャラでした。

 さらに特筆したいのは、演じる年齢の幅です。「今日から俺は!!」の映画化が決定した際、「今年30歳。高校生。やるしかない」と語っていましたが、映画公開の1年後には「TOKYO MER」で、実年齢の32歳より年上でもおかしくないような、大人の役をこなしています。

 ちなみに、昨年は「今日から俺は!!」を含む5本の映画に出演。そのうち1本は「おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!」の「いれかえマン」役でした。

 というように、一つのイメージに固定されないことが彼の俳優活動の特徴だったりもします。そして、それはプライベートにも当てはまりそうです。

ブレずに生きてきた人生

 例えば、彼の叔母は女優の賀来千香子さん。デビュー当時はそこが注目されたりもしました。しかし、本人は七光り的な持ち上げられ方を「コンプレックスでもあった」とした上で「だから、自分の力で頑張ろうとも思えた」(「ファミリーヒストリー」NHK総合)と振り返っています。

 また、妻は女優の栄倉奈々さん。2児の父でもあります。ただ、これについても彼のイメージを形成するイメージの一部にすぎないでしょう。

 いわゆるイケメン系ではあっても、ワイルドさやコミカルさも醸し出せる賀来さん。だからこそ、何か一つのイメージに収まることなく、さまざまな役を演じられるわけです。

 実はこれ、彼がデビュー当初から目指していたことでもあります。雑誌「JUNON」(2010年9月号)の一問一答では「役によって顔が変えられる役者になりたいです」と語っていました。

 また、10年後の自分について、「結婚もしてたらいいですね。家庭もあったら仕事にも没頭できそう」という未来予想図も披露。こうした理想が現実になっているのは、彼がなりたい自分を思い描いて、そこに向かって、コツコツ努力するという生き方をブレずにしてきたことの証しでしょう。

 その翌年の11月号では、女性のタイプについて、「前髪がなくておでこを出してる人が好き。性格的にも、全部出してるような明るい感じがするし」という発言もしています。なんとなく、栄倉さんを連想させる感じで、そのあたりもブレがなかったようです。

 とはいえ、恋愛上手な人ではなかったらしく、本人は小中高と12年間、男子校だったことを理由に挙げています。「ごごナマ」(NHK総合)によれば、中学生になって女子に興味が湧き始めても「しゃべり方が分からない。女子とはお母さんとしかしゃべったことなかったので」というほどの「うぶな感じでした」とのこと。そこも案外、演技には生かされているのかもしれません。

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宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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