結婚後も「愛しているなら、できるはず」を連発する夫や妻が失うもの
「愛しているなら、○○できるはず」。男女関係において、こうした言葉を相手に言った・言われたことがある人もいると思いますが、「気を付けないと愛を失う言葉」と筆者は指摘します。

夫から、「僕を愛しているなら、◯◯できるはずだ」と言われた女性の一連のツイートが話題になりました。こうした言葉を言われたことがある人、または言ったことがある人は少なくないでしょう。なぜ、このような交換条件的な発言が出てしまうのか、言われた側はどう感じるか、考えてみましょう。
幼稚な男女関係が露呈
「愛しているなら、迎えに来てくれてもいいでしょう」
「愛しているなら、週末は一緒にいたいと思うよね」
「愛しているなら、キスして」
お互いに夢中で理性的な判断ができないほどの愛に溺れてしまっているとき、こんなドラマチックなせりふを吐いてしまったことがある人はいるはずです。しかし、このせりふ、気を付けないと愛を失う言葉にもなります。言われた側がそれを受け入れて、望み通りの結果になったとしても、それは長くは続きません。このせりふが通用するのはせいぜい、付き合いたての頃だけです。
「僕(私)を愛しているなら、◯◯できるはず」と言われた相手は「私(僕)を愛しているなら、『○○できるはず』とは言わないはず」と言い返すことができます。そして、それは結果的に「それをお互いができないということは、お互いが共に『愛していない』という結論になる」ということではありませんか。
なぜ、こうした言葉を吐いてしまうのか。それは根本的な問題解決から目を背け、コミュニケーションを取る姿勢から逃げているからです。愛されているか自信がなく、確かめたい場合もあります。
「愛しているなら、◯◯できるはず」と相手に脅しをかけ、服従させようとする。あるいは愛を確認して安心したい――。それはまるで、「おもちゃを買ってくれないなら、ここから動かない!」と泣き叫ぶ子どものようです。幼稚な男女関係が露呈する言葉です。
「愛」を振りかざし、子どもっぽい取引を持ち掛け、自分の欲求を通そうとする。そんな相手と長く、円満なパートナーシップが構築できるでしょうか。最初は「やれやれ、かわいいところもあるな」とほほ笑ましく思っていても、結婚後にこの言葉を連発されたらどうしますか。「自分の理想通りに動いてくれないのは愛がない証拠」という傲慢(ごうまん)な理論が永久に続くわけがありません。
「愛しているなら、◯◯して」を受け入れた夫は…
まさに「愛しているなら、◯◯できるはず」と似たような言い方を妻からされて、その要求をほとんどのみ続けていた男性がいました。
彼の妻は友人たちが集まるホームパーティーの席などで酔っぱらうと、簡単にそのせりふを吐いていました。「私のことが好きだから、◯◯を取ってきてくれるでしょ」「愛しているなら、みんなの前でちゃんと謝ってよ!」などです。男性は「しょうがないな」という顔でその要求を受け入れていたのです。
私は彼に「奥さん、ジョークを超えていない? なぜ、いつも言いなりになっているの?」と尋ねました。すると、彼は笑いながら、「もう(妻を)愛していないからだよ」とあっさり答えたのです。
「愛していないから、もうどうでもいいんだ。言うことを聞いておけば波風は立たない。他に彼女もいるから、(妻と)一緒にいる短い時間だけ、適当にあしらっておけばいいと思って。長く一緒にいるつもりがないから、根本的な解決なんかしなくていいって思っている」
話を聞くにつれ、私は納得しました。「愛しているなら、◯◯できるでしょ」と脅しをかけてくる相手に魅力を感じなくなるのはもちろんですが、その脅しを受け入れることができるのは「愛しているから」ではなく、「愛していないから」なのだと。「愛していないから、どうでもいい」。何と冷酷な言葉でしょう。
不誠実な夫だと思われるかもしれませんが、不誠実な夫をつくり上げてしまったのは妻の方かもしれません。まさに、私が名付けた「モンスターワイフ」の片りんを持つ妻だったと推測されます。
ちなみに、このお二人はいまだに夫婦関係を続けています。妻は知ってか知らずか、「好きなら、○○して」を言い続けています。もはや、口癖になっているのでしょうか。いえ、もしかすると、妻は夫の不貞を知りながら、わざと「愛しているなら、◯◯して」と復讐(ふくしゅう)のように言い続けているのかもしれません。本当は浮気相手より私のことが好きだよね、と。しかし、それで夫の心が妻の元に帰ってくるかと言われれば、「NO」でしょう。
夫婦の数だけ、夫婦の形があります。何がよくて何が悪いという定義はありません。「愛しているなら、◯◯して」の言葉を言われると愛が深まるという夫婦もいるでしょう。お互いに言われて、うれしい言葉、ムッとする言葉を熟知しているのが花丸夫婦です。「そういう頼み方は気分が悪い」「愛を行動で測るのはよくない」「その言い方、嫌いじゃない」という本音が言えるか言えないかが肝です。時間をかけて、お互いの本音を話し合い、2人にとってよりよい物言いが自然にできるようになればいいですね。
「そんな言葉、言ったことない」というご夫婦は試しに今夜、1回だけ言ってみてください。「私(僕)のことを愛しているなら、お風呂洗ってくれない?」。パートナーのリアクションやいかに。
(「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美)
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