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ゾンビだらけ? 「人生100年計画」が招くウォーキング・デッドな将来

「人生100年計画」という言葉を耳にすることが増えてきました。長寿化そのものは良いことですが、ファイナンシャルプランナーの筆者は、資産形成と老後のライフスタイルの観点から、これに疑義を投げかけています。

「人生100年計画」は現実的なのか

 筆者はファイナンシャルプランナー(FP)として多くの方のご相談に乗りますが、各種のプランを練る際、最終的なゴールは「平均寿命」をベースとして考えています。さまざまな統計がありますが、およそ男性80歳、女性85歳といったところでしょうか。そんな中「人生100年計画」というフレーズを聞く機会が最近になって増えてきました。

「ゆとりある老後」に必要な資産は?

 正直なところ、FPとしては「冗談じゃない」というのが本音で、前述の平均寿命を元に計画しても「問題なし」となる方はまれ。ほとんどの方は「現在の貯蓄を倍以上にして、何とか平均寿命まで持つかどうか」という程度で、逆に「何をどうやっても破綻が確実」という方も少なくありません。

 まずは簡単に試算してみましょう。「現在のルール」が続くと仮定すれば、年金は65歳から受け取れます。年収800万円前後の方をモデルにすると、65歳からの厚生年金と国民年金の支給額面が約18万円、そこから保険料や税金を差し引いて実際の手取りが15万円とします。これが「老後の収入」ということになります。

 一方、支出に目を向けると、生命保険文化センターの調査(「平成28年度 生活保障に関する調査」)によれば、日常生活に必要な最低の生活費が22万円、「ゆとりある老後の生活費」は35万円。これらは「現在」老後生活を送っている方の調査であり、ある程度はあてになります。つまり、収入と支出を比較すると、「最低限の生活」の22万円でも収入(15万円)との差は毎月7万円のマイナス。ゆとりある生活であれば20万円のマイナスとなります。

 前者の場合、毎月7万円×12カ月で84万円。65歳で引退するとすれば、妻の寿命85歳まで約20年なので、単純な掛け算でも1680万円となります。さらに、医療費や葬儀費などのことも考慮すれば、引退時に最低2000万円程度は持っていなくてはなりません。さらに、ゆとりある生活ならば、5000万円以上は必要です(20万円×12カ月×20年+α)。FPの世界ではよく「豊かな老後=65歳で資産5000万円」とされますがこれがその根拠です。

 そこで、本題の「100歳まで生きる世の中」を前提とすると、必要な貯蓄は「ほぼ倍」になります。65歳から亡くなるまでの期間が倍になるからです。最低限の生活でも4000万円、豊かな老後には1億円が必要ということになり、ほとんどの人は「アウト」。必然的に年を取っても働くということになるでしょうが、高齢者の大部分が働きたいとなれば、そこには競争原理が働き、同世代間の争いはもちろん、単純労働は外国人やロボットと、高度な仕事は若者やAI(人工知能)との競争を勝ち抜かないと仕事を得ることはできず、体力的に劣る老人たちはどう考えても「お先真っ暗」です。そもそも、現在の年金制度が何十年先も続いていると考えることに無理があります。

 人生100年。そんな目標を掲げて「長生きしてください」と言われても、実際のFP相談では、ほとんどの方が「ほどほどのところで迷惑をかけずに死にたい」と話し、長寿を望む方はごくわずか。どちらかというと、終末期の過剰医療の解消や安楽死など、ある程度のところで「早く楽に死ねる」仕組みを望んでいる印象です。仕事もなく、最低限の生活を送るゾンビのような老人が“生きている”だけ。そんな社会を誰が望むでしょうか。

(株式会社あおばコンサルティング代表取締役 加藤圭祐)

加藤圭祐(かとう・けいすけ)

株式会社あおばコンサルティング代表取締役

外資系大手のプルデンシャル生命保険で11年間コンサルティング業務に従事。個人顧客700人、法人顧客30社を開拓。2015年4月に株式会社あおばコンサルティングを設立。インターネット上で保険情報サイト「みかづきナビ(http://www.mikazuki-navi.jp)」と、ライフプランニングやお金に関わるコラム「みかづきナビメディア(http://www.mikazuki-navi.jp/blog)」を運営。日々お客様のライフプランニングや執筆・講演活動などを精力的に行う。