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変形、線が入ることも? 「爪を見ると健康状態が分かる」のは本当か

顔色にその人の健康状態が現れることがありますが、よく、「爪を見ると健康状態が分かる」とも聞きます。爪で健康状態が分かるのは事実でしょうか。

爪で健康状態が分かる?
爪で健康状態が分かる?

 顔色にその人の体調が表れることがありますが、爪も同様に「爪を見ると、そのときの体調が分かる」とよく言われます。爪で健康状態が分かるというのは事実でしょうか。形成外科医の室孝明さんに聞きました。

貧血や心臓の病気で現れやすいが…

Q.「健康状態が爪を見ると分かる」とよく聞きますが、事実でしょうか。

室さん「厳密にいうと事実ではありません。例えば、貧血や心臓の病気を患っているときに、爪に変化が現れやすくなることはありますが、『貧血や心臓病のときに必ず、爪に変化が起きる』とはいえないからです。つまり、爪の状態から、貧血や心臓病が分かる場合もありますが、一般的ではないのです」

Q.貧血や心臓の病気で現れやすくなる変化とは、どのようなものですか。

室さん「貧血の際、『スプーンネイル(さじ状爪)』という爪の変形が現れやすくなることがあります。爪の真ん中がへこみ、スプーン状になるのです。また、心臓の病気を患っているときには、全ての指先が膨らみ、爪が指を丸く覆うため、太鼓のバチのような爪の変形が起きることがあります。ただし、必ず変形が起きるとは限りません」

Q.爪の変形のほかに、体調不良の際、爪に変化が起きることはないのでしょうか。例えば、爪に縦線や横線が入っているのを見かけることがあります。

室さん「横線は何らかの物理的な刺激やダメージを受けたときのほか、栄養が偏ったときなどに起こり得ます。手の爪は1日に0.1ミリずつ伸びるといわれていますが、代謝が低下して爪への血流が少なくなったり、栄養が滞ったりすると伸びるスピードが遅くなり、爪に横線が入るようになります。爪に入る横線を発見したら、栄養が偏っていることを疑ってみてもよいかもしれません。一方、爪に入る縦線は加齢や乾燥で目立つようになるため、体調とは関係ありません」

Q.爪の薄皮が剥がれる“二枚爪”になったり、爪の表面がでこぼこになったりすることがあります。こちらはどうでしょうか。

室さん「体調の悪化を表すものではない可能性が高いです。二枚爪は指先をよく使う人に起こりやすく、また、爪の乾燥も原因の一つです。体調の悪化を表すものではありません。爪の表面がでこぼこしている場合では、その変化が一枚の爪に限っているときは何らかの外的な要因が影響しており、体調の悪化を表すものではありません。全ての爪がでこぼこになっているときは原因が分からないことも多いのですが、こちらも同様に体調とは関係ありません」

Q.爪の色が通常とは異なる色になることもありますが、こちらはどうでしょう。

室さん「爪の色の異常は爪自体の問題です。爪が全体に白色や黄色、茶色などの濁った色に変色し、厚くなってボロボロと崩れやすくなっているときは、白癬(はくせん)菌が原因の『爪白癬』(いわゆる『爪水虫』)の可能性があります。

また、ジェルネイルなどの人工物を爪に付けている場合、人工物と爪の間に隙間ができてしまうと、そこに緑膿(りょくのう)菌が繁殖して、爪が緑っぽい色に変色する『グリーンネイル』と呼ばれる病気になることがあります。いずれも菌が原因となる爪の病気であり、体調の悪化を表すものではありません」

Q.「爪を見ると、そのときの体調が分かる」と誤解している人が、爪そのものの病気で爪の状態が変化することを体調の悪化と勘違いしている場合もあるのでしょうか。

室さん「あると思います。とはいえ、先述したように、爪の変化が体調の悪化と全く関係がないとは言い切れません。例えば、貧血が原因で爪に変化が起きている場合、貧血が改善すると爪の変化も改善するからです。ただし、『爪の変化は健康状態の変化』とうのみにしてはいけないことに留意してください」

Q.割合的に少ないとはいえ、爪の変化が体調の変化を教えてくれることもあるようです。爪を美しく保っておけば、爪の変化を見つけやすくなり、ひいては体調の変化も見つけやすくなるかもしれません。爪を美しく保つための方法を教えてください。

室さん「爪は適切なケアを続けることで、美しく保つことができます。爪の根元付近をオイルで保湿して、ごく優しくマッサージすることや、爪切りを使わずにヤスリで長さを整え、爪への衝撃を避けることなどは美しい爪を保つためにおすすめのケアです。

また、爪に刺激がかかる動作を避けることや清潔に保つことは重要です。特に、足の指の爪は爪と皮膚の間にあかがたまって、雑菌が繁殖しやすく、嫌な臭いの原因にもなるので、爪ブラシなどで爪の根元の部分も洗うようにしましょう。特に、足の親指の爪は丸みのある四角形にし、短くし過ぎたり、角を切り過ぎたりしないように注意してください」

(オトナンサー編集部)

室孝明(むろ・たかあき)

医師(形成外科医)

ビスポーククリニック院長。事故で鼻を失った子どもの鼻を形成外科医が再建するドキュメンタリー番組を見たことを契機に形成外科医を目指す。2002年、埼玉医科大学卒業後、鼻の再建外科を学ぶため、東邦大学形成外科に入局。関連病院を歴任し、顔面再建外科のほか、乳房再建外科、マイクロサージャリー、手の外科を学ぶ。2011年、ヴェリテクリニック入職。同クリニック分院長として東京と福岡で診療を行う。2017年、ビスポーククリニック開院。目元、鼻、アンチエイジングの治療を3本の柱として、充実した医療設備の中、最適な医療技術を提供している。医院公式サイト(https://bespoke-clinic.jp/)。

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