「遠くの山を見ると目がよくなる」「緑を見ると目によい」は本当? 眼科医に聞く
「遠くの山を見ると目がよくなる」「緑を見ることは目によい」と聞くことがありますが、事実でしょうか。眼科医に聞きました。

「遠くの山を見ると目がよくなる」「緑を見ることは目によい」と聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
生い茂る木々や草花、山や森の風景を眺めると気持ちがリラックスするという人もいると思いますが、緑色や遠くの山を見ることで、目や視力に何らかのよい効果が得られる可能性について、ネット上では「目に優しいのは何となく分かる」「目の疲れが取れるなら試してみたい」「どうして、緑色なの?」「視力がよくなるって聞いたけど本当?」など、さまざまな疑問の声が上がっています。
遠くの山や緑を見ると目がよくなるのは本当でしょうか。かわな眼科(千葉県松戸市)の川名啓介院長に聞きました。
「毛様体筋」の働きとは?
Q.ずばり、遠くの山を見ること、緑色を見ることで目の疲れが取れることがあるのは事実でしょうか。
川名さん「事実です。現代人はスマホやパソコンの使用頻度が高く、近くのものを見る時間が長くなっています。近くを見ているときは目の玉の中にある『毛様体筋(もうようたいきん)』という筋肉が緊張し、水晶体が厚くなっている状態です。遠くの山を見ると毛様体筋の緊張が取れ、水晶体の厚みが減り、目がリラックスした状態になります。
緑色については、赤系統の色に比べて精神的なリラックス効果が強いことが考えられ、自律神経系の過緊張を和らげることが期待できます。従って、近くばかりを見ず、適度に目を休めるために遠くの山の緑を見ることは、目の健康にとって非常によいことなのです」
Q.遠くの山を見ること、緑色を見ることで視力が上がる(回復する)ことは実際に考えられるのでしょうか。
川名さん「遠くの山や緑を見ることで、視力が回復したように“感じられる”ことは考えられます。
近くを長時間見ていると、目はその距離にピントを合わせようとして、ちょうど肩凝りのようにピントがその距離に固まってしまうことがあります。これを『調節緊張』といいます。そうしたときは先述したように、目の中にあるピント調節を担っている毛様体筋が緊張している状態です。近くにピントが合いやすくなっているため、遠くのものがやや見えにくく感じることがあります。
一方、遠くの山を見るとピントを遠くに合わせられます。そのときは毛様体筋が弛緩(しかん)した状態です。筋肉をリラックスさせることで、近くにピントが合う状態を解除できるため、遠くのものが見やすくなり、視力が回復したように感じられるというわけです。ただし、あくまで自然なリラックスした状態に戻っただけであり、実際に視力がよくなったわけではありません」
Q.なぜ、遠くの山を見ること、緑色を見ることが目によいと言われるようになったのだと思われますか。
川名さん「近くのものを長く見ていると、目の疲れを感じたり、肩が凝ったり、ひどいときには頭痛まで感じたりすることがあります。そのようなとき、近くを見る作業を中断し、遠くを見たり、緑色のものを見たりするとリラックスできることを感じた経験のある人が多いからだと思われます。緑色のものには心を落ち着かせる精神的な作用があるので、自律神経が副交感神経寄り(くつろいだ状態)になり、楽に感じるのではないでしょうか」
Q.コロナ禍の影響で、室内でパソコンやスマホ、テレビなどの画面を見る時間が増える傾向にある一方、外の風景をゆっくり眺める機会が以前より減ったという人も多いと思います。目をいたわったり、リフレッシュさせたりするために日常生活上で意識・行動するとよいことは。
川名さん「スマホやパソコンを見ていると情報が多く、かつ、楽しいため、ついつい長時間の使用になってしまいがちです。30分、あるいは1時間に1回程度、時間を決めて5~10分ほど、強制的に遠くのものを見るように心掛けるとよいでしょう。
スマホの閲覧やパソコン作業ではまばたきの数が減って、ドライアイになりやすいことが知られています。強制的に休むことで目の疲れも防げますし、ドライアイの予防にもなります。また、同じ姿勢で長く座っていると、足腰や首周りの血流も悪くなってしまうため、肩凝りや腰痛の原因にもなります。従って、遠くのものを見て、目を休めるだけでなく、少し歩くのもよい方法でしょう」
(オトナンサー編集部)
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