放置してOK? 赤ちゃんの「でべそ」、どう対処すべきか 受診の目安など、医師に聞く
一般的に「でべそ」と呼ばれる、おなかから、へそがポコッと突き出ている状態。自然治癒するとも聞きますが、放置していて大丈夫なのでしょうか。

おなかから、へそがポコッと突き出ている状態は一般的に「でべそ」と呼ばれます。でべそは赤ちゃんによく見られるため、心配する親も多いようですが、ネット上では「自然に治るって聞いたけど本当?」「放置しても大丈夫なのかな」「中学生の娘がでべそを気にしています」「成長してからでも治せるの?」といった疑問の声も上がっています。赤ちゃんの「でべそ」に関するさまざまな疑問について、すぎたファミリークリニック(兵庫県三田市)院長で小児科専門医の杉田亮さんに聞きました。
「嵌頓」戻らなければ手術も
Q.そもそも、「でべそ」とは何でしょうか。
杉田さん「でべその正式名称は『臍(さい)ヘルニア』といいます。へその緒が脱落した後の隙間『臍輪(さいりん)』から、腸管等が飛び出した状態のことで、痛みはありません。
新生児期には多かれ少なかれ、臍輪が存在しますが、1年で80%、2年で90%が自然治癒します。治癒しなかった場合は、1~2歳ごろに手術が必要となることがあります。また、まれではありますが、腸管が臍輪に挟まって外れない状態『嵌頓(かんとん)』が起こって戻らない場合は、緊急手術が必要になります。臍ヘルニアの診断は主に、触診を行って確認します」
Q.でべそになる人(赤ちゃん)の割合はどのくらいですか。また、でべそになりやすい要因(性別など)はあるのでしょうか。
杉田さん「割合としては、新生児のおよそ10人に1人とされています。10人中9人は臍輪が存在したとしても、腸管等が突出するほど大きくなく、臍ヘルニアにはなりません。男女差はありませんが、早産の場合や低出生体重の場合の方が多いといわれています。なお、予防するための方法は特にないと思われます」
Q.多くの場合は自然治癒するとのことですが、他の治療法はあるのでしょうか。
杉田さん「生後3~4カ月目あたりにかけてどんどん大きくなり、ゴルフボール大になることも少なくありませんが、先述の通り、ほとんどのケースで自然治癒します。また、古くから、『圧迫療法』という治療法もあります。飛び出した部分に綿球などを当て、上から防水フィルムを貼って圧迫します。行う期間は1~3カ月間です。フィルムの交換頻度は数日~数週間に1度で、施設によって異なります。近年はこの圧迫療法の効果が見直されていますが、実際に行うかどうかは医師の方針によってまちまちです」
Q.赤ちゃんのでべそについて、病院を受診するタイミングの目安はありますか。
杉田さん「1歳半健診でも遅くはありませんが、1歳になってからの定期予防接種の際、かかりつけ医に相談するのもよいでしょう」
Q.中には成長してもでべそが治らず、思春期を迎えた子どもが、へその見た目や形を気にしているケースもあるようです。子どもが成長してからでも、でべそを治すことはできるのでしょうか。
杉田さん「臍ヘルニアを放置したとしても、先述の腸管が臍輪に挟まって外れない『嵌頓』の状態にさえならなければ問題はないでしょう。ただし、美容の問題もあるので、放置するケースはないと思います。
思春期を迎えた時期に『でべそ』のように見えるのは実は臍ヘルニアではなく、ヘルニア自体は閉鎖したものの、余った皮膚が盛り上がっている状態のことだと思われます。つまり、成長してから『でべそ』と呼ばれているものは皮膚が余って、見栄えが悪い状態を指していることがほとんどです。この場合は美容上の観点から、形成手術が必要かどうか検討することになるでしょう」
(オトナンサー編集部)
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