柳葉敏郎「田舎は一番安心できるところ」 末期がんの元高級官僚に共感
映画「いのちの停車場」に出演する柳葉敏郎さんに、台本の感想や、演じる元高級官僚・宮嶋一義の人間性などについて聞きました。
映画「いのちの停車場」に出演する俳優の柳葉敏郎さん。同作は、大学病院の救命救急医として働いてきた白石咲和子(吉永小百合さん)がある事情から、石川県の実家に戻り、在宅医療を行う「まほろば診療所」に勤めることになります。それまで経験してきた医療とは違う“命”との向き合い方に戸惑いを覚える咲和子でしたが…南杏子さんの同名小説の映画化です。柳葉さんは末期の膵臓(すいぞう)がんを患う元高級官僚・宮嶋一義役で出演します。
オトナンサー編集部では、柳葉さんにインタビューを実施。台本の感想や宮嶋の人間性などについて聞きました。
3シーンで生きざまを表現する
Q.台本を読まれていかがでしたか。
柳葉さん(以下敬称略)「人と人とがコミュニケーションを取って感じるもの、それが描かれているんだなと思いました。体感する情報といいますか、それをこの作品はしっかりと優しく、繊細に描いています。役者は人を演じるわけですから、心のこもった人を表現しなくちゃいけないんだなと思ったのが最初の感想です」
Q.宮嶋という人物はどんな人間だと思いましたか。
柳葉「成島出監督から、3シーンで宮嶋という男の生きざまを表現してくれと言われました。最初は元官僚で、家族を振り返らずに仕事に没頭して、世間と戦ってきた男。次はベッドで横になって、戦ってきたよろいを脱ぎ捨てて、地元に戻り、家族の愛情を改めて感じた宮嶋。最後は何も気取ることなく純粋な宮嶋の素直な気持ち、家族や世の中に対して意地を張ることもない感じで表現しました」
Q.宮嶋にはどのように寄り添いましたか。
柳葉「頑張ったんでしょうね。自分でしなければいけないという、使命を感じながら生きてきたんだと思います。もしかしたら、親に『こんなふうに生きなさい』と課せられたのかもしれません。
親が正しいと信じてきて、自分が家庭を持ったら疑問符が出てきたんだろうけど、自分のすべきことを全うしなければいけないっていう思いと使命感で生きています。自分がその戦場から離れたときに、家族の愛情をしっかりと感じていて、自分も田舎から出てきて、そんな思いで生きてきた気がします。田舎に戻ってくるので、自分が一番安心できるところだったんでしょうね。そこは自分の気持ちも重ねていいのかなと思いました」
Q.現場の雰囲気はいかがでしたか。
柳葉「コロナ禍ということもあり、万全の体制で撮影していました。重いシーンだけど、雰囲気も含めてほんわかしていました。ほんわかした中で、成島監督は『コロナがいい緊張感になっていた』とおっしゃっていて、ほとんど1回で撮れているんですよ。何度も撮るのもどうなのかなと監督は思っていたらしいですが、1回で大丈夫でした。極度の緊張感ではなく、みんなの一体感があって、ものすごくいい緊張感だったとおっしゃっていました」
Q.演じる際に意識していることはありますか。
柳葉「職業を意識しないということですかね。人柄というか性格というか、バックボーンをしっかり表現していきたいなと思っています。警官は誰が見ても警官に見えるし、お医者さんも見れば分かるので、お医者さんの演技をする必要はありません」
Q.リフレッシュ方法を教えてください。
柳葉「家族とゲーム『あつまれどうぶつの森』をすることですね。家族みんなそれぞれ、島を持っています。家族のコミュニケーションを取るのにも最適ですね。子どもと一緒に遊んでいても、一緒にやめれば遊びすぎることもありません。僕は南国の島を造りたくて、マウイ島みたいなのを造ろうとしていました。ちょうど1年たつくらいなんですが、桜のレシピを集めています。ほのぼのしますね」
Q.最後に、宮嶋を演じられて、心の変化があれば教えてください。
柳葉「大きな変化はありませんが、改めて感じたことがあります。舞台あいさつのときに出てきた言葉なんですが、『小さいながらもしっかりとした覚悟を持って、その先にある大きな希望に向かって歩んで行きましょう』と自分にも言い聞かせています。作品に参加して、改めて、このように過ごしていきたいと思いました」
映画「いのちの停車場」は全国公開中。
(オトナンサー編集部)
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