オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

駒大生、女子高生にみだらな行為で逮捕 交際中なら、逮捕は行き過ぎでは?

駒沢大学4年の21歳の男子学生が、17歳の女子高生にみだらな行為をした疑いで逮捕されました。この事件を巡るさまざまな疑問点について、弁護士に聞きました。

恋愛関係なのに逮捕なら…
恋愛関係なのに逮捕なら…

 女子高生にみだらな行為をしたとして、駒沢大学4年の男子学生(21)が5月19日、神奈川県青少年保護育成条例違反などの容疑で逮捕されたことが話題になっています。

 報道によると、昨年12月と今年1月、当時高校2年で17歳の女子高生にホテルでみだらな行為をした疑いが持たれていますが、男子学生は「18歳だと思っていた。相手からも18歳と聞いていた」と容疑を一部否認し、「交際していた」とも話しているとのことです。2人はマッチングアプリで知り合い、金銭の授受はなかったとみられています。男子学生は今年1月の箱根駅伝に出場し、駒沢大学のアンカーとして、総合優勝に貢献しました。

 ネット上では「21歳と17歳なら普通の恋愛では? 逮捕は厳し過ぎる」「18歳と聞いていたなら、逆に被害者では?」といった同情的な声のほか、多くのメディアが実名報道していることについて、「実名報道で彼の人生を終わらせていいの?」と疑問の声も上がっています。今回の事件について、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

逮捕は行き過ぎでは?

Q.「女子高生は知り合った際は18歳だと伝えたが、その後、17歳と明かしていた」との報道もありますが、仮に「18歳だと思っていた」のが事実の場合、逮捕要件は成立するのでしょうか。

佐藤さん「神奈川県青少年保護育成条例は『何人も、青少年(満18歳に達するまでの者。婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く)に対し、みだらな性行為(健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交)またはわいせつな行為(いたずらに性欲を刺激し、または興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為)をしてはならない』とし(31条1項、3項、7条)、違反した場合、『2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する』と定めています(53条1項)。

そして、違反行為をした者は『当該青少年の年齢を知らないことを理由として(中略)処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない』という規定を置いています(53条7項)。従って、本当に『18歳だと思っていた』としても、18歳だと信じたことに過失があれば処罰できるため、その他の条件がそろえば逮捕できます。なお、相手が示した年齢を何も確認せずにそのまま信じた場合は『過失なし』とはいえません。処罰を免れるためには、少なくとも、学生証などを確認する必要があります」

Q.仮に「(女子高生からも)18歳だと聞いていた」のが事実としたら、男子学生の側がだまされていたということで罪を免れたり、軽くなったりすることはあり得るのでしょうか。

佐藤さん「相手の女子高生が18歳以上の他人の学生証を自分のものであるかのように示し、普通の人であれば、18歳以上であると信じるような場合であれば、『過失なし』として処罰を免れることはあります。しかし、先述した通り、『相手の女子高生から18歳だと聞いて、そのまま信じた』という場合は過失が認められるため、罪に問うことが可能です。ただし、罪に問われたとしても、相手の言葉を信じたことで行為に及んでしまったという経緯によって、刑が軽くなる可能性はあるでしょう」

Q.女子高生が18歳だと言っていたのが事実だとしたら、彼女の側に法的責任はないのでしょうか。マッチングアプリを使って知り合ったとされており、「出会い系サイト規制法」違反の可能性はないのでしょうか。

佐藤さん「一般的に、うそをつくことを罰する法律はなく、年齢を偽った場合であっても法的責任は生じないでしょう。『出会い系サイト規制法』(正式名称『インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律』)は、出会い系サイトを使った児童買春などの犯罪から児童(18歳未満の者)を守り、児童の健全な育成に資することを目的としています。そのため、保護される側の18歳未満の利用者が年齢を偽ったとしても、出会い系サイト規制法によって法的責任を問われることはありません」

Q.逮捕容疑が事実だったとしても、ネット上では「21歳と17歳なら普通の恋愛では? 逮捕は厳し過ぎる」といった同情的な声があります。金銭の授受もなかったといわれており、本当に恋愛関係にあったとしても、やはり、条例を適用して逮捕すべきなのでしょうか。

佐藤さん「真剣な交際関係にあった場合にまで条例を適用し、逮捕するのは行き過ぎではないかと思います。実際、福岡県の青少年保護育成条例違反が問題となった事例で、最高裁は条例の趣旨を踏まえ、条例が禁じている行為は『(青少年の)育成を阻害するおそれのあるものとして、社会通念上非難を受けるべき性質のもの』であると解釈し、婚約中の青少年やこれに準ずる真摯(しんし)な交際関係にある青少年との間で行われる性行為など、社会通念上、およそ処罰の対象として考え難い行為は含まれない旨、判断しています。

先述した神奈川県の条例は『みだらな性行為』、または『わいせつな行為』を禁じ、それぞれどのような行為を意味するのか条例の中で示しており、東京都など他の都道府県の条例と比べ、規制範囲が広く読めます。しかし、青少年の健全育成を図るという条例の目的は他の自治体と変わるところはなく、最高裁判例が示した通り、『青少年の育成を阻害するおそれのあるものとして、社会通念上非難を受けるべき性質のもの』に限って規制する運用をすべきでしょう」

1 2

佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

コメント