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「高学歴なのに仕事ができない人」はなぜ生まれるのか 公平な採用のために

就活や転職、企業人事のさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

なぜ、高学歴なのに仕事ができない?
なぜ、高学歴なのに仕事ができない?

 高い学歴を持ち、期待されて入社してきた人が実際の仕事は全然ダメというケースをたまに聞きますが、筆者には少し不思議に思えます。確かに、筆者が社会人になった30年ほど前であれば、「学業なんかできても、仕事ができるとは限らない」という部分はあったかもしれません。

 しかし、多くの仕事がどんどん知性化されている現代では「学業=科学」と「仕事」とが近くなっています。仮説を立て、検証し、行動を修正するという点で、科学と仕事は似ています。実際、今、業務成績の良い人はどんな人かを共同調査しているのですが、学業ができる人に仕事ができる人がやはり多いようです。それなのになぜ、「高学歴なのに仕事ができない人」が生まれるのでしょうか。

傾向としては仕事ができる

 筆者の本業、人事コンサルティングでは、まず、「その会社の高業績者とはどんな人か」を調べるところから仕事が始まります。そして、その結果を採用基準や育成目標、評価要素等を考えるベースにします。

 会社や仕事により、高業績者の特徴は変わります。しかし、緩やかな傾向として、「高学歴の人が高業績者」というのはほとんどの会社で「事実」です(もちろん、個々人の学歴以外の特徴の方が重要で、学歴はあくまで緩やかな関連がある程度です)。研究や企画のような仕事だけでなく、営業やサービスの仕事でもそうです。

 当然、学歴が高いからといって、ひいきして昇進させる会社はありません。そんな会社はつぶれます。単に結果として、高業績者の中に高学歴の人が多いというだけのことです。

「学歴」重視の採用は逆効果

 そのため、表に出ることは決してありませんが、多くの会社が内々に学歴を採用基準に置いているのです(あくまで緩やかな基準として)。そして、そのため、高学歴人材の採用競争は激化します。これがもしかすると「できない高学歴者」が出現する理由かもしれません。

 あまり、採用ブランドの強くない会社の採用戦略の基本は「競合の少ないマーケットで勝負する」という、いわゆるブルーオーシャン戦略です。ところが、高学歴者を採ろうとすれば、周りは強い競合だらけです。同じ採用力で厳しい市場に臨めば、競争に負けてしまうので、採れる人のレベルが下がるのは当然です。

 つまり、採用力を強化せずに学歴を重視した採用を行うと「できない高学歴者」を採ることになるのは必然なのです。例えば、塾や家庭教師、予備校にたっぷりとお金をかけて、受験工学をすべて注ぎ込まれ、テクニックのみで高学歴を得た人は仕事においてもかなりのサポートをしなければ、成果を出せないかもしれません。

 また、そのような人でも、会社側は「高学歴だから仕事ができるだろう」と期待して採用しています。そこで仕事ができないと分かれば、期待との落差はより大きくなります。「期待外れ」の度合いが大きいほど印象に残りやすくなるのです。その点も「高学歴なのに仕事ができない人がいる」という印象を強くしているのかもしれません。

採用力向上か、人物・能力重視か

 これに対して、企業が取れる方法は2つです。採用力(採用ブランド×採用活動力)を向上させるか、それが難しければ、高学歴という「緩やかには業績と関連はあるが、強い相関があるわけでもない」属性による採用ターゲティングをやめてしまって、むしろ、学歴を気にせずに(あるいはあえて、高学歴ではない人を狙って)人物や能力をきちんと見極めて採用をするかです。そして、やりやすい方法はもちろん後者、学歴を気にせずに採用するなのです。

 こういう点においては「学歴などなくても仕事ができる人はいる」は今でも本当です。学歴を気にすることなく、地道に人を探し、じっくりと人物や能力を見極めて採用を行えば、表面的な学歴で簡単に初期選抜を行うような企業には分からない「埋もれた人材」をひそかに見つけることができます。

 ただし、学歴が低い「から」仕事ができるわけではない点には要注意です。先に述べたように、緩やかな傾向としては学歴と業績は相関があるわけですから、「埋もれた人材」を見つけるには労力はかかります。多くの人の中から、「磨けば光る逸材」を見つけ出す必要があるのです。

学歴など、ただの結果

 さて、では、「ダメな高学歴者」を見抜いたり、「学歴は低いがイケてる人」を見つけ出したりするためには、どんな方法があるのでしょうか。それは、面接の基本に立ち戻ればよいだけです。面接の基本とは「結果ではなく、プロセスを重視する」ということです。

 学歴はただの結果です。もちろん、高い方がよいのかもしれません。しかし、問題はどうして、そういう学歴になったのかです。先述したように、たっぷりとお金をかけて、テクニックのみで高学歴を得た人は仕事でも、独り立ちはなかなか難しいかもしれません。

 一方、たとえ高学歴でなくとも、例えば、途中までプロアスリートを目指していて、勉強ではなく、スポーツに全身全霊を注いでいた人は低い学歴になっても普通のことでしょう。高い学歴など目指していなかったのですから。しかし、ひとたび、目標を知的レベルの向上に置けば、恐るべきスピードで能力改善がもたらされる可能性は十分あります。

 このように、学歴はその人を知るための単なる一つの結果として「普通に」扱うのがよいと思います。過剰に評価するのもダメ、過剰に否定するのもダメ。偏見を除いて、「どうしてそうなったのか」に集中して話を聞けば、企業側は学歴のイメージに左右されない公平な目を持った採用ができるようになり、社会としても、優秀な人材が学歴のせいで埋もれることのない世の中になると思います。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

コメント

1件のコメント

  1. 東大生の4人に1人はアスペルガーらしい。