「トリチウム」をゆるキャラ風にして批判、公開中止…どんな経緯で? 専門家の見解も
東京電力福島第1原発の処理水に含まれる「トリチウム」を、ゆるキャラ風に表現したチラシが猛批判を浴びて公開中止に。広報の専門家に見解を聞きました。
東京電力福島第1原発の処理水を海に放出する方針を政府が4月13日、正式に決めました。処理水には「トリチウム」を中心に放射性物質が含まれ、地元の漁業者などから風評被害を心配する声が上がっています。
政府は、国内外の原子力施設からもトリチウムを含んだ水が海洋放出されていることなどを挙げて理解を求めており、そのPRの一環として、復興庁が同日午後、トリチウムを“ゆるキャラ風”のイラストで表現したチラシと動画をホームページ上で公表しましたが、「漁業者や地元住民の神経を逆なでする」などと猛批判を浴び、14日夜に公開を休止しました。
ゆるキャラ風のイラストでトリチウムを表現した経緯を復興庁に取材するとともに、広報の専門家の見解を聞きました。
復興庁「全体として親しみやすく」
チラシと動画は「ALPS処理水について知ってほしい3つのこと」と題したものです。まず、復興庁の担当者に聞きました。
Q.チラシと動画を作った狙いや経緯を教えてください。
担当者「トリチウムというテーマは専門性が高く、一般の人には分かりづらいものです。子どもさんを含む国民全体に関心を持っていただくことと、科学的根拠に基づいた正しい情報を知っていただきたいということで、全体的にイラストを多用して、分かりやすくという狙いでチラシと動画を作りました。
経緯としては昨年10月、政府の対策チームの会合で、処理水について風評被害対策をさらに進めることになり、処分方針決定後、速やかに風評被害を払拭(ふっしょく)する取り組みが始められるよう、復興庁で準備を進めていました」
Q.トリチウムのイラストが“ゆるキャラ風”といわれています。なぜ、このようなイラストにしたのでしょうか。「親しみやすくしたかった」という報道もありました。
担当者「チラシや動画を多くの人に見てもらうため、親しみを持ってもらおうとイラストを多用しました。トリチウムのキャラクターもそのイラストの一つです。『トリチウムに親しみを持ってもらう』意図ではなく、チラシ全体に親しみを持ってもらいたいという意図でした」
Q.ネットなどで「地元住民の気持ちを考えていない」といった批判がありました。
担当者「ご批判を真摯(しんし)に受け止めております」
Q.ホームページで公開を始めた日時とやめた日時、やめた理由は。
担当者「公開開始が4月13日午後5時半ごろで、公開を休止したのが14日午後8時ごろです。批判の声も踏まえて、より良い内容となるよう修正するため、いったん公開を休止しました。トリチウムのキャラクターを修正することは考えていますが、どういう形かは未定です」
Q.チラシでは「世界中の原子力施設からトリチウムが海や大気に放出されています」とあり、福島第1原発の処理水も問題ないというふうに受け取れますが、東京電力が昨年12月24日に公表した資料によると、セシウム137やヨウ素129なども微量ながら検出されています。
担当者「(福島第1原発の汚染水を浄化する)ALPS(アルプス、多核種除去設備)の処理性能試験の結果、トリチウム以外にセシウム137やヨウ素129なども検出されたのは事実です。ただし、全体的に見ると環境基準は満たしています。確かにゼロではありませんが基準の範囲内です。今回の処分方針では、さらに100倍以上に薄めます。それもお伝えしたい部分です」
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