地元人気鮮明、東大・京大志願者減 共通テスト、コロナに揺れた大学入試
入試や授業内容、学生の就職支援など、大学のさまざまな話題について、教育関連の情報発信に携わってきた筆者が解説します。

2021年春の大学入学者を決める今年の入試が終わりました。間もなく、新学期が始まります。大学入試改革の初年度であり、独自試験の見送りを決める大学が続出するなど、コロナ禍で揺れた今年の入試はどうだったのでしょうか。振り返ってみましょう。
「地元大学」人気高く
初実施となった大学入学共通テストは、東京都など11都府県に緊急事態宣言が再発令されるコロナ禍の中、厳重な感染症対策の下で実施されました。初実施となった共通テストの志願者数は53万5245人で、昨年の大学入試センター試験の志願者数と比べて4%減。2万2454人の減少幅は、センター試験時代を含めて過去最大です。特に浪人生が2割近く減ったのが目立ちます。今年からの入試改革を敬遠して、昨年のうちに進学する傾向が強まり、浪人する受験生が減った影響とみられます。
新傾向となった共通テストですが、問題文が長文になったのが特徴です。数学I・Aの問題冊子は昨年より8ページ、数学II・Bは4ページ増など問題文が長くなり、読解力重視の傾向が強まりました。ところが、難化によって共通テストの平均点が下がるとの予想を裏切り、平均点は意外にも高得点となりました。
入試で採用されることの多い主要科目で平均点が下がったのは、国語、日本史B、地理B、化学基礎、生物基礎、英語リスニングの6科目だけでした。大学入試センターから公表されない5教科7科目合計の平均点も文系、理系ともアップしたとみられます。
この結果、受験生は国公立大へ強気に出願しました。最終的な志願者数は42万5415人で、昨年と比べて3.2%減少したものの、共通テストの志願者4%減よりも減少幅は小幅にとどまりました。その中で、国公立大、私立大とも「地元大学」の人気が高くなったのが特徴です。コロナ禍の影響で、感染が拡大している大都市の大学を避ける傾向が強まったためとみられます。
国立大で見ると、東京大学、京都大学など全国区型の難関大の志願者が減り、地元勢中心の東北大学、名古屋大学、九州大学の志願者が増えました。また、大都市圏の圏内での大学選択では安全志向が見られ、難関大を避けて、準難関の千葉大学、神戸大学などの志願者が増えました。
2次中止の横浜国大、44.7%減
一方、コロナ禍の影響で入試方式を変える国公立大も続出しました。早々と大学独自の2次試験を中止し、共通テストの成績だけで合否を決めるとした横浜国立大学は志願者が昨年に比べ3392人、44.7%も減り、4189人にとどまりました。今年最大の減少となった国公立大です。
共通テストの成績だけだと、2次試験の負担がないので受験生が増えそうな感じもしますが、2次試験での逆転は絶対にありませんから、ボーダーラインをしっかり読んで、出願をするかどうか慎重に考えた受験生が多かったと思われます。2次試験対策をしなくていい分、「多くの受験生に狙われやすく、志願者が増えそうだ」と敬遠された可能性もあります。
さらに、2次試験対策を行うことで、その大学に入りたいという気持ちが強くなりますが、対策を取らないことで強い志望を保てず、他大学に志望を切り替えた受験生も多かったとみられます。感染対策としては申し分のない方式ですが、受験生の入りたい気持ちが弱まったことは間違いないでしょう。
今年になってから入試方式を変えた大学では、試験時間を短縮して、午後から入試を実施した東京外国語大学、2次試験を中止して、共通テスト利用方式に切り替えた宇都宮大学、山口東京理科大学はいずれも志願者減となりました。
コロナ禍で振り回された大学も多い中、私立大も12%、戦後最大の志願者減となりました。受験生の安全志向、年内進学志向で総合型選抜や学校推薦型選抜で合格を勝ち取る傾向も強まり、一般選抜が中心の入試から「年内中心」に動きだしたのかもしれません。
来年入試を受ける受験生はこの3月までの高校2年の1年間、部活動や学校行事もあまりできず、「空白の1年」を過ごしました。オープンキャンパスの開催中止が相次ぎ、学校説明会もほとんど参加したことがなく、今年の受験生以上に情報が少なくなっています。
これを乗り越えて来年、入試に挑むには、受験勉強をしながら情報収集を行うことが求められます。総合型選抜や学校推薦型選抜を目指すのなら、それを見据えた活動も必要です。受験生にとって、この新学期は例年以上に忙しくなりそうです。
(大学通信常務 安田賢治)
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