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メールでOK? 電話すべき? 「内定辞退」はどんな方法が適切か

就活や転職、企業人事のさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

内定辞退の適切な方法は?
内定辞退の適切な方法は?

 2022年春卒業予定の学生たちの就職活動が本格化しています。公式には3月1日に会社説明会が始まり、6月1日が選考開始となってはいますが、既に内々定(実質的な内定)を得た就活生もいます。内定はうれしいものですが、複数の社から内定をもらった場合、入社する会社以外にはいつかは「内定辞退」をしなければなりません。

 そこで就活生たちが悩むのが「メールで断っていいのか」「電話すべきか」「直接会って言った方がいいかな」という「内定辞退」の方法です。適切なのはどんな方法なのでしょうか。

不安から受験企業が増加

 今年の就活戦線について、「コロナ禍による景気の悪化で採用数を絞る企業が多くなり、就職希望者にとっては厳しい『買い手市場』(企業が強い市場)になるのでは」という予測が大勢を占めていました。しかし、実際は予測通りに採用予定数が減った企業もあるものの、さまざまな調査を見ていると、就職希望者が不安がるほどには買い手市場化はしていないようです。先日もパナソニックが昨年同様の採用を予定しているというニュースがありました。

 ところが、就職希望者は不安から、例年よりも多くの企業を受けています。例えば、新卒採用においては、新型コロナ前は「年間10社程度」というのが平均的な受験社数だったのが、今年は20~30社が珍しくありません。

 中途採用でも、筆者の会社がサポートしている企業では、例年と同じように募集をしていても昨年と比べて2倍、3倍の応募があったという所も多々あります。しかし、いくらたくさん受けても、入社することができるのは結局1社です。思ったより内定が多く出てしまい、どう辞退すべきか悩む人も出始めています。

「ぜひうちに来て」と歓迎してくれた会社を辞退するのは心苦しいというのは普通のことでしょう。そのため、「一体、どうすれば穏便に、失礼のないように辞退できるのか」と思い悩むわけです。ただ、採用や就職・転職において、企業と個人は対等です。企業が個人を不合格にするように、個人が企業を辞退するのは普通のことです。

 しかも、企業側が個人を不合格にするとき、多くの場合が「お祈りメール」(不合格通知メールの文末を「○○さんのご活躍をお祈りいたします」とすることが多いことでそう呼ばれる)なわけですから、個人の側も簡潔なメールで辞退しても文句を言われる筋合いはありません。

「丁寧さ」は自己満足?

 ただ、これは筆者の個人的見解ですが、何でも「やられたらやり返す」のではなく、自分が適切だと思う方法で辞退の連絡をするという考え方もあります。例えば、就職活動のプロセスで出会った人事担当者や先輩社員にいろいろ世話をしてもらったり、教えてもらったりしたと少しでも恩を感じたなら、それに見合った丁重さで辞退連絡をするという考え方です。その程度はそれぞれだと思いますが、時間をもらって会いに行く方法もありますし、電話でもよいでしょう。メールよりは丁寧です。

 しかし、「メールより電話」「電話より面会」がよいかというと、そうとも言い切れないのがややこしいところです。人事担当者もリクルーターの社員も仕事で採用をしており、かつ、とても忙しい人たちです。その会社を辞退することに「全く迷いがない」のであれば、下手に相手に時間を使わせるよりも、逆にメールできっぱりとお断りをして済ませてしまう方がよい場合もあります。「恩義を感じていて、辞退することが申し訳ないから直接会う」というのはある意味、自己満足かもしれません。

「会っても仕方ない」理由

 しかも、会って何を話すかが問題です。まず、明確な理由があった場合です。それを相手にとうとうと語るというのは、どれだけ丁寧な語り口であっても結局、「御社はこういうところがダメ」「別の会社の方が素晴らしい」というメッセージをぶつけているわけで、それを相手が喜ぶでしょうか。もちろん、先述したような関係性の深い人であれば、嫌われても伝えるべきこともあるでしょうが、そこまでの関係でなければ、断る「理由」を必ずしも伝える必要はないと筆者は考えます。

 辞退の際に会っても仕方がない理由がもう一つあります。それはそもそも、「明確で絶対的なダメな理由」などない場合が多いということです。内定をもらうまで受け切った会社なのですから、「行ってもよい」と思ったはずであり、「絶対にダメだ」ということは少ないでしょう。

 それなのに、その会社に行かない理由は「他の会社に行きたいから」ということが真実のはずです。つまり、理由といっても「曖昧で相対的な理由」しかなく、「明確で絶対的な理由」はないということです。説明しようにも説明できる内容がないのです。

 そして、実はこれが、採用において企業が不合格者に「お祈りメール」のような理由の曖昧なメールを出すゆえんでもあります。よく、就職・転職をする人たちの間で「企業はなぜ、不合格理由を明確に言ってくれないのか」という声が上がるのですが、それは「明確な理由などない」からなのです。「あなたよりも採りたい人がいた」というだけのことが多いのです。

 そういう面から考えても、会社と個人が対等ならば、断る理由を言う必要はないのです。さて、いろいろ申し上げましたが、これらの観点を分かった上で、最終的には自分の美学での判断です。きちんと考えて、自分らしく辞退連絡をしてください。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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